20 聖戦
諸事情により更新が遅くなって申し訳ありませんでした。
陰から見守っていたが、戦いは順調だった。
偽タクトは、いままで味方だったものの裏切りに戸惑い本気を出せないでいた。
彼はあくまで、神が乗り移ってはいるが、記憶を失っていて自分がタクトだと信じている人物なのだ。
すぐに出ていき加勢したい気持ちになったが、ぐっと堪える。
俺の強さを偽タクトにバレルのはダメだと何度もナビに釘をさされていたから。
「ライト! サンダーポイント!」
偽タクトの叫び声で、巨大な閃光が起こった。
俺もかつて使った魔法の融合だ。
その時、銃声が起こった。
マリア、シルフィーの二人が加勢したのだ。偽タクトを倒す側に。
そして、兄貴が無詠唱で魔法を唱え、さらに追い詰める。
とどめに、隠れ蓑術みたいな感じで、布を被ってあらかじめ掘っていた穴から飛び出したミーナ、サーシャが偽タクトに斬りかかる。
「ぐっ、ダイヤモンドダスト!」
偽タクトが広範囲氷魔法を唱えた。
ただし、威力は低い。やはり彼は迷っていた。
記憶がないとはいえ仲間を傷つけられないと。
正直、俺は信じられなかった。
俺でも一緒だっただろう。もしも皆に――マリアに、シルフィーに……サーシャに、兄貴に、そしてミーナに攻撃されたら、きっと俺はなにもできない。
今、この時、あいつは紛れもなく俺なんだ。
あいつは逃げようとしたが、さっきマリアに足を撃たれたため、動くことができずにいた。
これで終わり……なのか? 本当に。
そう思った刹那だった。
偽タクトの様子が変わった。
「全く……余に任せておけば、邪神を討ち滅ぼし、世界を平和に導けたものを……下らぬ」
奴の姿が変わっていく。
顔が美女とも美男子ともいえる中性的な顔立ちに。
髪の色が日本人特有の黒色から脱色されていき、きれいな金色に。
そして、俺の命と仲間の次に大事なオリハルコンのジャージが鎧へと変わっていき、背中から白い翼が現れた。
奴は、神へと変わった。
最初に動いたのはシルフィーだった。
次に、シファ、ナビが続く。
「ゴッドブレス!」
「ダークソード!」
「サンダーストーム!」
三人の魔法、さらにマリアの銃声が轟いた。
空気の塊が、闇の剣が、雷の嵐が、そして金属の弾が神に向かって飛んでいく。
だが、突如として魔法が消え、銃弾はシルフィーの風魔法の威力まで計算して放たれたらしく、神の横を通り過ぎて行った。
恐れていたことが起きた。
誰もがその場に倒れる。
キーシステムが言っていた。これが奴の能力。
「スキル、魔法、そしてそもそも魔物と戦うための神の加護。それらを全て奪ったにすぎない」
神が言う。
そう、人間が魔物に対抗する力――スキルだけではない、生まれながらにして人間は神の恩恵を貰って生きてきた。
俺達の世界における神とは違い、奴は世界の全てに介入していた。
銃声が響いた。マリアによるものだ。
確かに銃は、恩恵がなくても使うことができる。
それでも威力が足りないのだ。スキルがなかったら、その弾の威力は圧倒的なまでに脆弱だった。
だが、こうなったときのこともも想定済み。
スキルを奪った瞬間から、キーシステムが介入、俺達の力を戻してくれる算段になっていた。
それと同時に、俺の姿を人の姿に戻し、最終決戦をすると。
だが――神の行動が早かった。
奴は俺が持っていた武器を全て具現化し、スキルレベルを上げるために買った剣と槍をとって全てを捨てた。
音を立てて落ちていく武器。
そして、剣と槍を見て、それらも捨てた。ろくなものがないと。
「アイスニードル」
そう唱えると、奴の手には氷の槍が現れた。
残り5話。
終わってからも続くけど、シリアスムードは残り5話。




