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03

…養父様が言うには、はるか昔、人は魔術だけではなく、精霊と契約をかわし術を行う精霊術も使っていたらしい。そして、精霊術を扱える者は、精霊に愛され生まれた人でしか扱えず、その特徴として生まれつき銀の髪をしていた。しかし、銀の髪の者しか扱えない精霊術を人は畏怖し差別しはじめた。そのせいか、精霊達は次第に人間から離れ銀の髪を持つ者を減り、次第に廃れ存在さえ忘れさられたらしい。しかし、ごく稀に銀の髪を持つ者が今も生まれるらしく、その者は見つけ次第国によって銀髪の事を隠し守られるらしい。


「つまり…私は、その珍しい精霊術を扱える者で、今は国に保護された形…ということでしょうか?」


唖然としつつも養父様に問いかけると、養父様は頷き答えてくれた。


「ああ、銀髪の者がいると匿名で知らせたものがいてね。探していた時にアリィがティアを見つけたんだ。その後すぐ、陛下よりティアを養子にして守るよう命を受けてね。」


「そうなのですか…」


「もちろん。命は受けたが無理やりということではないよ。他にも養子となる家の候補はあったが、私が立候補した形だからね。」


そういうと私の頭を撫でてくれた。


「はい、本当に、ありがとうございます。」


私は、養父様の言葉にホッとし涙が出そうになるのを我慢した。


(…無理やりに私を押し付けられたわけではない……よかった…また、疎まれるのかと思ってしまった…養父様はそんな方ではないと分かっているけど…)



「それで、髪のことなんだが…ティアの身の為にもこれからも隠して過ごしてもらわなければならないんだ。すまない。」


申し訳なさそうに言う養父様に、私は慌てて頭を左右にふった。


「いえ!守ってもらうんですから、当然です。」


「そうかい。よかった…それで、隠すにあたってなんだが、これを常に身につけてもらいたいんだ。」


そう言って机の上に置かれたのは、シンプルな銀のブレスレットで、一つ小さな真っ白な石がはめ込まれたものだった。


「これは?」


「これは魔道具でね、身につけていれば髪の色を変えることができる物だよ。しかも、血を一滴垂らせばその人物以外には外すことが出来ない物だ。」


「魔道具にはそんな物もあるのですか!?」


驚いた。魔道具は多くでているが、それは攻撃用の物や火を起こしたり水を出したり日常生活に必要なものであり、髪の色を変えたりなど自身を詐れるものなど聞いたことがなかった。それに、血による認証なども聞いたことがない。

私が驚いた理由を察したのか養父様は教えてくれた。


「これは現在の宮廷魔術師のトップの方が作ったものでね、出回ってはいないんだよ。」


「宮廷魔術師のトップの人が…凄いですね…」


「あぁ、ちなみにその方はね、ティアと同じで銀の髪を持つ方だよ。生まれてすぐ王家に保護され育ったらしい。」


「へっ!?」

何てことないように言われた事実に固まってしまった。


いやいやいや、そんな簡単に言ってはダメだろう。例え同じ髪を持つ者でも国に隠される存在をそんな…


「あ、あの、そんな簡単にバラしても宜しいのですか?ま、まずいのでは…?」


狼狽えながらもそう言うと、


「あぁ、大丈夫だよ。許可は取っている。それに、彼にはティアも近いうちに会うことになるだろうしね。」


「そうなのですか、良かったです。…へ?…どうしてですか?」


「ティアには精霊術を習得してもらわなければならないからね。現在銀髪を持つ者はティアとその彼だけなんだ。だから、彼はティアの先生となることが決まったんだ。」


ホッとした瞬間また、衝撃的事実を述べられた。養父様は私を何度驚かせれば気が済むのだろうか…

確かに、精霊術なんて今の世の中にない力を得たい国の気持ちもわかる。隠匿し守るのも、いざという時国に利益があるからだろう…しかし、宮廷魔術師と言えば、国が有する戦力の中でも2番目に大きい存在で、その中のトップともなれば私に取っては雲の上の存在である。そんな人が私の先生…頭が痛くなってきた…そこで、ふと疑問に思ったことを聞いて見た。



「魔術師…と言うことは、その方は精霊術だけではなく魔術も扱えるのですか?それに、隠さなければならないのにそんな表舞台にたっても大丈夫なのですか?」


てっきりどちらかしか使えないものだと思っていた。それに隠さなければならないのに魔術師のトップって…大丈夫なのだろうか…


「どちらか一方しか扱えないということはないんだよ。どちらかと言えば、精霊術を扱えるものは魔力保留量が高いから優れてた魔術師にもなれるんだよ。あと、隠さなければならないのは【精霊術師】だとういことであり、その人物自体を隠すわけではないよ。」


「そうなのですか…わかりました。」


「質問はもういいかな?魔術師様と会うのはティアがこの生活になれてからということになってるから、その時また詳しく彼のことを教えるよう。さぁ、このブレスレットに血を垂らしてもらえるかい?少し痛いだろうか、我慢してくれ。」


そう言うと、養父様はナイフを取り出し私の薬指に少しナイフを当てた。

私は、少しでた血をブレスレットにおとした。そうした瞬間、一瞬ブレスレットが光り、白かった石が私と同じ瞳の色である菫色の石となった。

そのブレスレットを身につけた瞬間に私の髪の色は銀から茶色へと変わった。


「わぁ!すごいです!本当に変わりました!!」


驚いてそう言えば、養父様は微笑み私の薬指を手当てしながら言った。


「これで完了だ。ティア…君の髪のことは本当に信頼出来るもの以外には決して言ってはダメだよ。言うにしても、私に必ず報告しなさい。いいね?」


「はい。分かりました。」


私は力強く頷いた。


「君の髪のことを知ってるのは、私と妻、アリィに、陛下と王太子に魔術師様…後は公爵家当主の者…しかし、妻とアリィは精霊術のことは知らされていない。そのことを頭に入れておいてくれ。」


「はい。」

実の両親も知ってるはずだが…養父様が言わないということは、口止めされたのか…それとも、魔術師様によって記憶を消去されたとか?そんな術は聞いたことはないが、精霊術なら可能かもしれないし……


「では、これで失礼するよ。長々とすまないね。色々な事を聞いて疲れただろう。今日はもうゆっくりお休み。」


そういって頭を撫でて養父様は出て行った。



(…本当に、ゲームの内容とは違うことが多いわ…まだ、私が思い出していない可能性もあるけれど、それにしても、、、)

一人残った部屋で考え込む。

いくらなんでもここまで重大なことを忘れてるとは思えない。やはり、大まかなところは似てはいても現実とゲームでは違うのだろう…


(それでも、わずかでもアリィ様に危険が及ぶ可能性があるなら用心しないと…)


(そうよ…アリィ様は公爵令嬢だもの。例えゲームの結末と違う道にいかれたとしても、危険はつきまとうはずよ…!!)


幸いにも私自身のことはある程度わかった。それに、精霊術を習得すればアリィ様を御守りすることもできる。


「よし!明日からがんばるわよ!」




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