Blooms the world
その日、その瞬間、誰もが空を見上げていた。
王都から避難した住民たちは勿論、オードランの国民だけじゃない。世界中の全ての人々が同じように空を見上げた。
誰も彼もが〝それ〟を目にした瞬間、足を止め動きを止め、圧倒されるように立ち尽くした。そうして世界が一時の静寂に包まれた後、最初に声を上げたのは世界中どの場所も変わらず子供たちだった。
「すごーい! 見て、ママ! お空! お空が咲いてる!」
子供たちが目を輝かせながら指さすもの。それは空一面に咲いた花畑だ。色とりどりの様々な花が空を覆い尽くし、隙間なく密集し咲き乱れているのだ。見上げる全てが花となった世界。世界そのものを包み込むかのような色彩に人々は驚き、圧倒され、だが徐々にその瞳を子供のようにか輝かせる。
こちら、大地に向かうように下向きに咲いた空の花畑を目にして、誰かが言った。
まるで雲を大地にして咲いているようだ、と。
その声に誰かが答える。
いいや、雲すらも咲いているのさ、と。
しだいに世界が喧騒と歓声に包まれていく中、また誰かがぽつりぽつりと自らの内の感情を吐露するように呟いた。
「綺麗……」
――――その日、世界は花咲いた。
+
「これは……!?」
まっさらになった思考の果て、ただただ浮遊城を押し上げていたモネは突然の異変に気づく。城が、明らかに軽くなっているのだ。今までのようなどうしようもない重さが消え去り、もはや既にこちらが完全に押し勝っている状態だ。あまりに手ごたえが軽くなったため、バランスを崩しかけたくらいだ。一緒に城を支えていたはずのアルフレッドの《歴史の重み(ヒストリア)》もすでに発動を止めて姿を消している。
「クロの方に何か動きがあったんですの?」
そう思ってからは速かった。手を付けていた浮遊城の大地部分が突然崩れるようにして消え去ったのだ。
浮遊城の崩壊は始まっていた。だがあまりにも接近しすぎていたため、モネはそれに気づくことができなかったのだ。
その事実にモネの考えが至った時にはもう視界は開け、細かな破片や瓦礫を残して浮遊城はその姿を完全に消していた。遠く、視線の先にはクロードがオルタナを抱いて落下している。しばらく、目の前の現実に思考が追い付かなかった。弟が勝ったのだとモネが気づくのは浮遊城崩壊から軽く一分はたった頃だった。
「や、やった……! やりましたわー!」
手をあげ、叫び、喜んだ。弟が勝った。この国を救って見せたのだ。そのことに身が震えるほどの喜びを得る。だが、手を振り上げたと同時、モネの意識は途端に薄くなっていく。
「あ、あれ……?」
限界、だった。机上の怪物やかつての英雄と戦い、すでに殆ど満身創痍だった体を更に酷使して浮遊城の落下を食い止めていたのだ。それは当然の結果だと言えるだろう。ただ、興奮のためか、自分の体に何が起こっているのかわかっていないモネは突然凄まじい眠気が来たようにしか思っていなかった。
だ、駄目ですわこんな所で寝てしまっては。落下してしまいますし、なによりクロとオルタナを回収しないと。わたくしがやらないと、二人は飛べないのですから……。
二人を迎えに行ってあげないと。そう必死になっても、既に限界の体は言うことを聞くこともなく意識は解離していく。殆ど夢見心地のような意識の中、モネはようやく二人の先にある空の様子に気づいた。
見渡す限り一面の花畑となった空を見上げながら、モネは気を失っていく。
「すご……きれ……い…………」
それがクロードの創造魔法による変革だということにさえ気づかないまま、モネは高度300メートルの上空で意識を失った。
+
創造魔法発動の瞬間、クロードは自分の頭の中が空っぽになったように感じた。全ての思考を使用した巨大なイメージは確かに世界に変革を起こし、封剣はその身のルーンを全て奪われ蒸発すよるようにして消滅。それに合わせて浮遊城もルーンを失い、一気に崩壊を始めた。
何もかもが崩れ屋根も壁も床も全てが無くなっていく中、クロードは咄嗟にオルタナの元へ飛び出して彼女を抱きかかえた。殆どなんの考えもない行動だったが、それはその時クロードが取れる最善の行動だっただろう。直後にクロードたちがいた浮遊城の最上階も完全に消滅して、二人は宙へと投げ出された。
オルタナはまだ、目を覚ましていない。空は自分が変革した花畑に変わっているが、悠長にそれを観察している暇ではないことは確かだった。下を向けば、モネと思われる小さな人影が自分達と同じように落下しているのだ。全く、動く気配が見られない。
「気を失っているのか……!?」
なんてタイミングで限界がきてしまったのだと、クロードは歯噛みする。魔法の使えない自分は、こんな上空に投げ出されてはなす術がない。モネに助けてもらわなくては、このまま地面に叩きつけられて死ぬだけだろう。いや、そもそも気を失った状態ではモネも自分達と同じような結末に至ってしまう。
クロードたちとモネとの間には随分な高度差があった。浮遊城の最下層と頂上の差の高度差だ。正確な数字を割り出すことはクロードにはできないが、おそらくこちらが高度1000メートルを越しているのに対して、モネのほうは500メートルもいっていないだろう。確実に彼女のほうが早く地面に叩きつけられる。
どうすればいいか、考えるが対抗策など思いつくはずもない。地上の人間すらまともに観測できない高度でクロードにできることなど何もなかった。
そしてモネに襲いくる脅威は落下だけじゃない。浮遊城の破片や瓦礫、未だ完全に消え去っていないそれらがモネを追い越すようにして降り注いでいるのだ。地面に落ちる前には消滅するが、下手したらモネへ直撃しかねない。
「終わるのか? こんなところで……?」
ここまで来たのに、終わってしまうのか。
自分はあの希望へ届かなかったのか。
まだ目を覚まさない彼女を抱きしめてクロードは叫んだ。
「嘘だろ……? こんなのってないだろう!?」
瓦礫がモネへと迫るのが見えた。絶体絶命。これでもう終わってしまうのかと諦めかけた。
――――だが、救いの手は伸ばされた。クロードがオルタナを救うことを諦めなかったように、まだ諦めず、絶望しない者たちが地上にはいたのだ。
突如、地上から飛来した高速の閃きのような魔法が、モネに直撃しかけていた瓦礫を砕いたのだ。さらに立て続け、クロードが驚きを得る間もなく、その身体が淡く発光した。第三者から魔法がかけられているのだ。
「速度が落ちている……? 魔法によって減速しているのか!?」
まだ終わっていない。
そのことを示すかのように、眼下、オードラン城の一部分が淡い薄緑に発光しているのをクロードは見た。
+
浮遊城の崩壊をいち早く察知したのは兵士団長だった。彼が通信術符越しに叫ぶ声に気づくと、アルフレッドは発動させていた《歴史の重み(ヒストリア)》を解除した。もう必要ない、とそう踏んだのだ。見上げる先、浮遊城は確かにその姿を驚くべき速度で小さくしていき、徐々に周囲には昼の明るさが戻ってきている。
まるで夜明けだと、アルフレッドは思う。
浮遊城が完全に崩壊し、久方ぶりの太陽が顔を覗かせる。眩しさに目を細めながら、太陽を見上げようとするが、その空は花畑に姿を変えていた。
「……は?」
見渡す限りの綺麗な花畑が空に咲いている。花の隙間から太陽が零れ落ち、まるで光の雨のようになってこちらに降り注いでいる。その光景は素直に美しいと思ったが、意味が分からなかった。
「なんだよこりゃ。邪魔な城が消えたと思ったら、空に花が咲いてら」
言葉にしてみて、なんだかおかしくなって笑ってしまう。よくわからないが、綺麗だし、それでいいだろう。とにかく全ては救われたのだ。安心すると同時に腕に激しい痛みを覚えた。浮遊城の重さを支え続けたこの腕は多分もう、使い物にならないだろう。ただ、そのことを嘆く気分にはならなかった。むしろ心の内は清々しいとさえ言える。
「やりきった興奮から色々麻痺してんだろうけどなぁ」
呟く先、アルフレッドは異変を感じる。自分の周りの誰もが上を見上げたまま動かないのだ。空の花畑に見惚れているかとも思ったが、その割には表情が硬い。嫌な予感と共に、アルフレッドも同じように上を見上げる。花畑よりも手前、クロードとオルタナの姿は確認できないが。モネらしき人影は見えた。だが、動きがない。真っ直ぐにこの内庭に向かって落ちてきているだけで、空を飛ぶ気配すらない。
アルフレッドは全員が何も言わず動かなかった理由を悟った。
モネは気を失って落下している。それはモネの命の危機でもあり、同時に魔法の使えないクロードたちの危機でもあった。
判断は一瞬。アルフレッドはただ一言、息を吸い叫んだ。
「誰一人死なすなぁ!」
王の決死の命令に、その場にいた全員が何も言わずに自らの役割を果たす為、動いた。
攻撃魔法を使い、モネに降り注ぐ瓦礫を排除する者。望遠魔法を使い、クロードとオルタナを見つけ出す者。落下してくる彼らに減速魔法をかける者。それぞれの行動は様々に、しかし全体として統率のとれた動きを見せる。この国を救ってくれた少年たちを救わなくてはならないという思い。そして王の必死な叫びが、その場にいた者たちに大きな団結力を与えたのだ。言葉を交わさないままの最初の連携は成功した。だがそれでも、足りなかった。
「青騎士殿、減速魔法間に合いません!」
元々、その場にいた者に減速魔法の得手はいない。それでいて、自分ではない第三者に魔法をかけるのだ。その中ではよくやったと言えるのかもしれないが、しかしモネはその速度を大きく保ったまま、内庭に向けて落下してくる。
激突。衝突。はじけ飛ぶ脳漿と赤い血液がアルフレッドの頭の中に浮かんだ。その瞬間、王は反射的に走り出す。
「国王様!?」
何人かがアルフレッドの行動に気づいて制止をかける。だがそれを振り切り、アルフレッドはまた叫んだ。
「モネは俺様に任せろ! お前たちはクロードとオルタナを何とかしろ!」
「しかし!」
「俺様を誰だと思っていやがる! 王様だぞ!?」
二度、それ以上をアルフレッドに言わせる者はいなかった。皆、その覚悟を感じ取ったのだろう。
ありがたいぜ、まったく……!
心配と信頼に感謝しながら、アルフレッドは落下するモネの真下へと辿りつく。高度は既に50メートルを切っている。アルフレッドは急いでその腕に魔法をかけた。使う魔法は衝撃転換魔法。これによって落下の際、モネの体に及ぶはずの衝撃を、この腕に肩代わりさせる。
「どうせもう、使い物になりゃしねぇんだ!」
だったら、腕くらいはくれてやる。この国のため、限界が来るまで戦い続けた騎士を守ってやることもできなくて何が王だと、自らを鼓舞しながら、持ち上げるのがやっとな腕を上げ、落下するモネを受け止めた。
立ったまま受け止めてはおそらく腕が肩ごと引きちぎられる。だからアルフレッドはモネの体がその腕に触れた瞬間、自身の体を前向きに転ばせた。そうしてうつ伏せに地面に衝突する体勢で、モネの体を腕だけで受け止めた。
地面が揺れ、衝撃で巨大な窪みを作った。その勢いをもろに受けた両腕は潰れ、痛覚を直接踏みつぶされたような激痛が走った。だが、その甲斐もあって、モネには傷一つつけずに受け止めることが出来た。
腕は骨が飛び出さなかったのがマシだと思える程、見るも無残なものとなってしまった。窪んだ地面とモネの間に挟まれていたそれを引き抜く。激しい痛みは続いていたが、たいしたことではない。そんなことどうでもいいとばかりにアルフレッドは急ぎモネの胸に耳を当て、心音を確認。
動いている。生きている。
そのことを知って、安堵する。モネは死なせなかった。自分の手で、守ったのだ。
だが危機が完全に去ったわけではない。まだクロードとオルタナがいる。モネの横で座り込みながら、アルフレッドは一番近くにいた騎士に状況を確認している。
「二人はどうなった!?」
「はっ! それが距離が遠く減速魔法の効きが弱くなってしまっています」
「地面の衝突まで間に合わないのか!?」
やはり、防護を旨とする一番隊が殆どの面子では無理があるのか。どうするべきだと思案するアルフレッドに、更に悪い状況が伝えられる。
「地面に間に合わないどころか、その前に城に衝突してしまいます!」
見れば、クロードたちの落下コースは内庭ではない。内庭から約10メートルほど向こうの地点。そこには当然、城という建築物の屋根が待ち構えている。オードラン城の高さは90メートルほど。クロードたちの落ちる位置は城の中でもっとも高い位置ではないものの、優に70メートルは超えるだろう。その分だけ、二人はモネよりも早く落下衝突してしまうのだ。
「せめてここに落ちてくれれば、70メートル分の減速はできるってのに……! 誰か、移動魔法で二人をこっちに持ってこれないのか!?」
「無理です! あの速度で方向転換は二人の体が持ちません! 減速魔法との干渉も考えたら尚更です!」
「というより高速落下する人間を正確に制御できる使い手なんてここにはいませんって!」
じゃあどうしろっていうんだと、問う答えは背後からやってきた。
「よくわからないけどね。とにかく内庭に落ちるのと条件一緒にすれば、その分の時間は稼げるってことかい?」
聞きなれた声。振り返った先にいたのは十番隊隊長リリアーヌ・ローランだった。
「リリィ、お前……!?」
「おいおい国王様。あんたはいつものようにへらへらしてなきゃ駄目だろう。部下が不安がっちまうじゃないかい」
リリィは軽口をたたいて見せるが、その様子は全くそんな調子には見えなかった。全身は包帯で冗談のようにぐるぐるにされ、青い顔で副隊長のロウに肩を貸されている姿はとてもじゃないが平気そうには見えなかった。
「お前、動かすのも危険な状態じゃなかったのかよ!」
リリィはけろりとした様子で、頷いた。
「そうだよ。絶対安静だって怒鳴られながらここまで来たんだ。あたしだけじゃないよ。十番隊、動ける奴は全員連れてきた」
リリィの後ろには怪我の治療を受けていたはずの十番隊の面々も揃っている。動ける奴、と言いつつもメイドに肩を貸されて何とか立っている状態のような隊員まで連れてきていた。いや、彼らの性格を考えれば付いてきたのだろう。船長の後ろを、必死になって。
「動けなくとも、動かないわけにはいかないだろう。何かできることはないかと出てきてみれば、丁度あたしらにぴったりの仕事があるじゃないか」
「……大丈夫なのか?」
「何、死にはしないよ。あたしがやるのは転移だけ。あとの操作は後ろの馬鹿どもに任せるさ」
言いながら、リリィはその場に座り込み、術符を用いて陣を描いていく。副隊長のロウが彼女よりも一歩前に出て言った。
「お願いします、船長」
「……〝すいません〟とか言わないあたり、わかってんじゃないかい。五秒後だよ」
言われ、ロウは後ろを振り返り叫ぶ。
「いいかてめぇら五秒後だ! 最後の仕事だぞ歯ぁ食いしばれぇえええええ!」
男たちの叫びが内庭をとどろかせた。リリィは何が嬉しいのか、魔法発動と同時に声をあげて笑った。
五秒後――ズン、という空間が震える音と共に《赤薔薇艦隊》の艦隊の内五隻の軍艦が空中へ姿を現した。瞬間、リリィの後ろに控えていた十番隊の隊員たちが一斉に魔法を発動させる。五隻の船は空中を滑るように動く。もはや【開拓航路】は発動さえさせていない。隊員たちによる無理矢理な制動によって帆のたたまれたままの軍艦は大砲のごとき勢いで内庭から城に向かって衝突した。壁を砕くような音が連続し、破片と煙をまき散らしながら、艦隊は進む。
五隻の船が縦に連なり、目指す方向はクロードたちの落下地点。目の前の邪魔な全て砕いて進み、五つの巨大な大砲の弾丸は内庭からクロードたちの落下地点までを全て更地にしてみせたのだ。
無理矢理な駆動と衝突によって全ての戦艦は艦首からひしゃげ全壊した。その様子を満足げに見届けてから、誇り高き海賊騎士は役目をはたして仰向けにぶっ倒れる。
「おら、あたしたちがまた道を作ってやったぞ! あとは勝手に続け!」
応える声は十人ほどの女の声。白と黒の衣装に身を包んだ、メイドたちだった。
『素晴らしい判断と行動に感謝いたします!』
全員が声を揃えて答えつつ、十人のメイドは列を作って落下地点へと走る。彼女たちはそれぞれが一枚の白い布を抱えていた。折りたたまれていたそれを広げると、前方を走るメイドに手渡していく。渡されたメイドはそれを自分が持っていた布とぴったち重ね、さらに前のメイドに手渡す。そうして十枚の布は少しのずれもなく重ねられ、一番前を走っていた二名がそれの両端をそれぞれ持って、落下地点でピンと皺なく広げて見せた。
「メイド式シーツクッション! 一枚一枚に緩衝魔法をかけた特注品! それも今朝一番の洗い立てです!」
広げたシーツで落下する二人を受け止めようという魂胆のようだ。だが、それで大丈夫なのかとアルフレッドは疑問する。
まだ結構な速度で落ちてきているぜ!?
減速魔法は随時かけられているはずだが、それでも減速しきれない高速になって二人は落下してきている。それをいかに緩衝魔法をかけたとはいえシーツごときで受け止めきれるのかどうか。
しかし、アルフレッドの不安は的外れだった。そもそもメイドたちはシーツで二人を受け止めきるつもりなんてなかったのだ。もしもクロードたちを受け止めるつもりなら、シーツは地面に対して水平に構えられるべきだろう。だが彼女たちはシーツを水平ではなく、少しだけ斜めに向けて構えたのだ。それは彼らを受け止めきるつもりは毛頭なく、衝撃を緩衝し速度をを落としつつも落下の方向を変える、という意味を持った構えだった。
そしてその通りのことが起こる。メイドのシーツクッションに直撃した二人はその衝撃を緩和されながら斜めに構えられたシーツの反動によって水平方向に吹き飛ばされたのだ。
二人が吹き飛ばされた方向は内庭に向けて。つまりこちらアルフレッド側に向けてだった。
その現象にアルフレッドが驚くよりも早く、動きを見せた人物がいた。執事長バトラーだ。彼はメイドによって飛ばされてきた二人を空中で受け止めると回転してその勢いを殺しながら着地。だが殺しきれていない勢いがまだある。横方向の衝撃を受けたまま着地したバトラーはその両足で地面を抉りながら数メートルを移動。土煙を上げ、相当の負荷を負いながらも、体勢は崩さずに自分の身を軸にしながら回転。そうして最後の勢いまでを完璧に殺しきってから抱えた二人をポスン、と地面へと降ろす。そうして彼は何事もなかったかのように済ました顔で裾についた土汚れを払ってからアルフレッドの横まで下がってきた。
まだ何が起こったのかわかっていないクロードがきょとんとした顔でかたまっているのを見て、噴き出しそうになるのを堪えながら、アルフレッドは全体を見渡して小さな声で呟いた。
「ほんっと……優秀だよ、お前らは」




