そこの私、悪化してる・・・?
「もぉ!!!バカじゃん!!!!」
ベッドに横たわった私は、顔をうずめた枕に思いをぶつけた。
何度も何度も自分で自分を責めたてた。
なぜばれた?
なんで私の過去の話をあいつなんかにした?
しかも・・・告白されて明らかに動揺した私・・・
「告白とか有り得ない!!!!!」
本当に信じられなかった。
何回も告白されて慣れているはずなのに、なぜただ1年以上そういう目で見られていなかったからって動揺するんだ・・・
私の・・・・バカ・・・
それに、最後の言葉。
『また今度祐に彼女ができたら、そうはいかないんじゃないかな』
わかってる。わかってるわよ・・・そんなこと。
私たちは子供じゃなくなってる。
お互い自分の道を進む。
もちろん、彼女ができたからって私たちが双子であり、姉弟であることは変わらない。
けれど・・・あの時みたいな、大事な人から置いて行かれるような気持ちになるのは・・・
コンコン。
扉がたたかれる音。
ビクッとし、私は慌てて上体を起こす。
「は、はーい!」
枕をもとの位置に戻し、扉を開ける。
祐君が立っていた。
「ゆ、祐君っ!ど、どうしたの・・?」
「いや、その。今部屋から聞こえたんだけど・・・告白されたってなんだ?」
「!?」
え、うそ!?
私そんな大声で叫んでた!?
枕で聞こえないようにしようとしたのに・・・
隣の部屋の祐君に聞こえちゃうくらい大きく!?最後のやつは聞かれてないよね!?
「え、えっと、その・・・」
「ずいぶん怒っているようだったが・・・まさか、また変な男に絡まれているのか?」
祐君は真剣に見つめてきた。
ふと、私は目をそらした。
「べ、別に・・・大丈夫だよ・・・・!」
「葵のことが心配なんだよ。また、昔みたいなことが起きたら・・・同じクラスの奴なのか?もし葵が迷惑してるなら俺が・・・」
祐君の目が暗くなり、拳を握りしめた。
まずい。
「ゆ、祐君・・・!」
私は慌てて彼の拳に触れる。
彼はハッとして拳の力を弱める。
「・・・すまん。それで、実際のところどうなんだ・・・?」
「こ、告白されたのは、確かに事実・・・!」
けれど、私は真実をこたえられそうになかった。
柏木智也は祐君の友達なわけだし、もしも真実を伝えたら二人の仲がどうなるかわからない。
「けど、大丈夫!私で何とかできるから・・・!」
言った瞬間に、私の心が痛んだ。
「心配してくれてありがとうね・・・!も、もう遅い時間だから私寝るね!」
「葵が言うのなら・・・おやすみ。何かあったらちゃんと言ってくれよ」
「うん!わかった!じゃあね!」
私はそのまま扉を閉めてしまった。
心が痛んだ理由は明白だった。
嘘だからだ。
祐君に嘘をつくと、必ず心が痛む。
本当は大丈夫なんかじゃないし、私一人で何とかできそうもなかった。
・・・祐君に相談してしまえば、楽になれたのかもしれない。
友紀は『たまには祐君に頼ったら?』と言ってきた。
でも、今回のことは祐君に話してはいけないのだ。
しかし、誰かを頼りたい。。
この状況で私が頼れる人物は間違いなく彼女だけだった。
私は友紀に電話して、正体がばれてしまって、告白されたことを伝えた。
『そっか・・・智也結構鋭いところあるからね~』
「それを先に言ってほしかったかも・・・」
『それで?告白の返事はどうしたの?』
「もちろんNOよ!あたりまえじゃない!」
『え~結構いい感じだと思ったんだけどな~二人とも案外仲良くなれそうな感じ!』
「な、仲良くぅ!?私がぁ!?あいつとッ!?」
想像もつかない。
というか、今後あまりかかわりたくないし・・・
『まったく!葵は厳しいな~あいつの支持者だって結構いるんだぞ!ま、決めるのは葵だからいいけどさ。でも・・・もう少し様子見てみたら?いいやつなのは確かなんだし!』
「いいやつ・・・少し、ね」
実際、突然告白したり、盗聴のような真似をすることを除けば、基本的にいい性格そうな奴だった。
裏表がなさそう。
その点友紀とも似てるところがある。
「でも、付き合うとかそんな・・・っ!!!」
『別にいきなり飛躍しなくていいんだよ・・・普通にたまに一緒にいて、話したりして・・・友達みたいな感じでいいんじゃん?』
・・・確かに彼にも言われた。
友達から、と・・・
けれど、それでさえ私は拒絶してしまった。
一度告白されたという事実を抱えながら、友達になるなんて無理だ。
その人に会ったら、嫌でも告白のことを思い出さずにはいられない。
・・・私が不器用なだけなのかな・・・?
「ねぇ・・・もしさ、友紀が男の子に友達になろう!って言って、『友達いらないから』って返されたらどう思う・・・?」
『んー・・・私が友達になりたい男の子なんでしょ?なら傷つくかな・・・』
「そっか・・・」
やはり、傷つくものなのか・・・
彼は平気そうだったが、内心本当は傷ついていたのかもしれない。
根がいい奴だとわかっているゆえに、今更罪悪感を感じる。
「・・・私、ちょっと言い過ぎたのかな・・・」
けれど、私にも言い分はある。
突然でなんていえばいいかわからなかったのだ。
「あいつにも、友達からって言われたけど・・・でも、今更どうしたらいいかわからないし・・・」
『なら、それでいいんじゃん?そこは葵次第!思うにさ、友達って、なろう!って言ってなるものじゃないでしょ?だから、そこは深く考えずに事の成り行きに任せるって感じ!』
「深く考えず・・・?」
『そうよ!深く考えれば考えるほど頭どうかしちゃう!!だからいいの!今は様子見ってことで!それに大丈夫!そんなに不安なら私も一緒にいてやるからさっ!!』
「友紀・・・」
そう。友紀はいつも私に道を教えてくれる。
こんな友達がいるなんて、私は幸せ者だよ・・・
「友紀、あなたがいてくれて本当によかった」
『な、何よ、急に・・・私たち、親友でしょ?』
私は一人幸せをかみしめた。
「・・・明日の昼、一緒にご飯食べない?」
電話の中の友紀の声質が一オクターブほどあがった気がした。
『初めてだね・・・!!私、それが一番うれしいよ!!』
「か、勘違いしないでね・・・!これはあくまであいつが来たとき対策なの・・・!友紀がいたらあいつが来ても自然でしょ・・・?」
『もぉ~素直じゃないな~前の葵だったら、私が近づくこと自体無理だったじゃないのぉー!!』
翌日の昼休み。
やはりあいつは来た。
振られたことによる気まずさで、私の前に現れないだろうとか、いつもより表情が暗いだろうとか、色々考えるのに意味はなかった。
あいつは昨日とまったく変わらずに笑顔で私に近づくのだ。
「やっほー葵ちゃん!お、友紀もいる!二人って思った以上に仲よかったんだな。初めて学校で一緒にいるところ見た!」
私の前の席に座っている友紀が手を振る。
「私は葵と同中だよ。それに、私は葵のこと親友だと思ってる」
「何その、私は親友と思ってないみたいな言い方・・・」
「へへへ、ありがとう!」
「へ~親友か!いいな!」
「だから智也がどんなアタックしたとかも筒抜けなんだよね~」
「おぉ、怖い怖い・・・じゃ、あれも知ってんの?さくらちゃん、俺と会ったとき祐とは幼馴染って言ったんだぜ?」
「知ってる。わりとすぐに相談受けてたしね。けどまあ・・・あんたが葵って・・・なんだか盲点だったなー」
その問いに関して、柏木はただニコニコと笑うだけだった。
「つか、葵。智也に言わないといけないことあるんじゃない?」
せっかく二人が楽しそうに雑談し、私が蚊帳の外だと思っていたのに、一番気まずい話を振ってくる友紀。
昨日の電話で言わなければいけないということは理解したと言えど、言うのはためらわれる・・・
「あー・・・えっとー・・・」
彼は興味津々で私の目を覗き込む。
こんな直視された状態で言えるわけないじゃないか。
「そのー・・・考えたんだけどー・・・昨日はちょっと言い過ぎたかなーと・・・別にーアンタのことなんてこれっぽっちも恋愛対象とは見てないけどー・・・友紀が言うんだからーまあ・・・少し話したりする分にはー・・・友紀に免じてー・・・・してやったりしなくもないかなー・・・・・・・・・・・・と・・・・・・・・・・・・」
「葵、完全棒読み、っていうか・・・一回も智也の顔見てないじゃん・・・つかどんだけ私のこと強調してんのよ・・・素直じゃないんだから」
目の前でボソッとつぶやく友紀の声をスルーして、私は横目で柏木の様子をうかがう。
彼は表情を仕舞い込んで、静止していた。
ただ瞬きするだけ。
えっ、ちょっと、何・・・?アンタこんな表情する奴だっけ・・・?
そして考えるそぶりを見せる。
「んーと、なあ友紀、これって好感触?」
「うん、葵にしてはかなり」
「そっか~」
またしばらく静寂した時間が流れた。
彼は黙って席を立つと、私の後方の窓に向かって歩き、開けた。
「―――よっっっっっしゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
耳をつんざくほどの大声で彼は外に向かって叫んだ。
一瞬にして教室中の注目が集まる。
「バッ・・・・・・」
―――バカァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
だから嫌なのよ!!!!アンタと関わったら目立っちゃうんだからさ!!!!!
本当に、本当に私こそ叫んでやりたい気持ちにかられた。
けれど、今はできない・・・
私は机に突っ伏した。
「・・・・・私・・・・・アンタのこと、大っ嫌いよ・・・・・」
私はうなだれた。
もうそろそろ完全に諦めそう。
というか、もう、心が折れました・・・友達とか・・・スキニシテクダサイ・・・
二人を横目にして友紀は携帯を取り出してメッセージを送った。
『ちゃんと葵言えたみたい!だから心配しなくていいよ~もしかして智也の声聞こえてた?笑』
すぐに返事は来た。
『ああ、聞こえた。葵が大丈夫そうならよかったよ。昨日はサンキューな』
『うん!それに、葵も少し変わってきてるみたい!だから、祐も頃合いを見計らって学校で葵に近づいていいんじゃない?』
『そこは葵に任せる。とにかく、葵のことはこれからも頼む』
「はいはい。もう・・・こういう時だけすぐ返信するんだから・・・もう少し普通の会話のときだって・・・」
「ん?友紀?」
携帯を見て、苦笑していた友紀。
すぐに普通の笑顔を私に向けた。
「あ、ああ・・・!ごめん!ちょっと友達がね」
友紀は携帯の電源を切ってポケットに入れた。
読んでいただきありがとうございます!これで、新キャラの柏木智也編は一旦終了です!葵ちゃんの慌てぶりだったり、色々可愛いなと思いながら書いていました!次回も、新キャラを登場させる予定です!日々たった2ポイントでも加算されているだけで喜んでしまうような私ですが、これからもどうぞよろしくお願いします!