表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/2

二人だけの宵の世界

前回の続きです。

前回から読んでくださった方々、本当にありがとうございます。


詩的な表現を僕は好む。


幾千の星にとって高嶺の花とは、月の事だと思う。


きっと誰も手が届くものだとは思っていない。


そんな相手に綺麗だって伝えたくても、機会なんて訪れない。


「ん....。」


彼女の声はとてもか細く、この静寂の中で聞き耳を立てても聴こえない程だ。


「...貴方は月...見て、どう?」


今にも消え入りそうな声で喋っている。


とてもゆったりとした喋り方で今にも眠ってしまいそうだ。


暗闇の中でも僕をしっかりと認識しているみたいだ。


「どうって...。」


彼女の質問の意図を瞬時に汲み取ることはできなかった。


いや、する必要はなかった。言えることは一つだけ。


ゆっくりと口を開く。


「....綺麗だと思う。」


他に何も思いつかなかった。


「そう...わたくしは...あの花火のように、消えたくなります。」


そう言うと彼女は誰のものかも分からない椅子へと腰を掛け、机の上を凝視していた。


彼女の仕草は一つ一つが上品だが、どこか猫のような慎重さがある。まるで触れるもの全てが割れてしまうかのようだ。


「月は...好き?」



また意図の分からない質問だ。一体彼女が何を考えているのかが、顔が見えないからか、まるで読み取れない。


「えーと、好き。」


反射で答えてしまった。彼女の質問にすぐに答えないと駄目だと、本能的に感じてしまう。


「そ....。」


右手の人差し指で机の端をなぞり始める。


目が少し慣れてきたのか、彼女の姿形がはっきりと見え始めた。


腰までの長さがあり目元が隠れるほど長い白い髪。


肘までの長さがある黒の手袋。


ピンクと白の花柄の和服。


その姿はまるで雪を被った兎の様だ。



「...なら!」


突然首が折れそうな速度で顔を上げた。


ゆっくりと僕の方を見た。


「私と...死んでくれます?」


彼女が発した言葉は、新年の始まりを迎えた世界ではあまりにも不謹慎な言葉だった。


「なんて...冗談...。」


あまりにも訳の分からない彼女の言動に、僕は言葉一つ発せずにいた。


僕を見つめる彼女の瞳は、黄色く輝きそして、とても大きく見えた。


月のようだった。



「...また...。」


僕は初めて月を見た。


恐い。


そう思った。



読んでくださりありがとうございます。

書く時間があまりないので、ペースはゆっくりです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ