表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
33/33

プロンプトでもコードでもない。バイブコーディングで最初に学ぶべきもの

最近、「バイブコーディング」という言葉をよく見るようになった。


生成AIに指示を出しながら、コードを書かせ、アプリやツールを作っていく。

ざっくり言えば、そんな開発スタイルである。



これまでプログラミングに縁がなかった人にとっては、かなり衝撃的な体験だと思う。


なにしろ、自分では一行もコードを書けないのに、AIに頼むと画面ができる。

ボタンが動く。

保存機能が付く。

ちょっとしたアプリらしきものが形になる。


これは、確かに楽しい。


分かる。

とてもよく分かる。


自分にはできないと思っていたことに、急に道が開けたように感じる。

まるで、今まで閉じていた扉が、いきなり目の前で開いたような感覚になる。


だから、バイブコーディングに浮かれる気持ちは分かる。


ただ、そこでひとつ危うい勘違いが起きる。


「コードを書けなくても、プログラマーになれるのではないか」


という勘違いである。



もちろん、生成AIによって、プログラミングのハードルが劇的に下がったのは事実だ。

これは否定しようがない。


以前なら、環境構築でつまずき、文法でつまずき、エラーでつまずき、何を調べればいいかも分からずに挫折していた人でも、今ならAIに相談しながら前に進める。


これは大きな変化だ。


けれど、ハードルが下がったことと、ハードルが消えたことは違う。


ここを間違えると、かなり苦しくなる。



たとえば、小説で考えてみる。


生成AIに頼めば、文章は書ける。

簡単な箇条書きから、それなりに整った文章を作ることもできる。


では、それだけで人気作家になれるだろうか。


たぶん、無理である。


趣味で楽しむなら、それでいい。

自分用の物語を書くなら、それも立派な使い方だ。


けれど、多くの読者に読まれる作品を作るには、文章を生成できるだけでは足りない。


何を書くのか。

誰に読ませるのか。

どこで引っ張るのか。

どこで感情を動かすのか。

どこを削るのか。

どこで読者を裏切り、どこで期待に応えるのか。


そういう、文章そのものの外側にある判断が必要になる。



バイブコーディングも、これに似ている。


AIがコードを書いてくれる。

それは事実だ。


けれど、コードを書いてくれることと、アプリを作れることは同じではない。


さらに言えば、アプリらしきものが動くことと、ちゃんと使えるものを作れることも同じではない。


ここに、落とし穴がある。


バイブコーディングで最初に学ぶべきなのは、プロンプトやコードではない。


AIと一緒にプログラムを作るためのプロセスである。


いきなりAIに、


「こんなアプリを作って」


と頼む。


すると、AIは何かしら作ってくれる。


出てきたコードを動かす。

エラーが出る。

AIに直してもらう。

また動かす。

またエラーが出る。

今度は別の場所が壊れる。

直しているうちに、最初に何を作りたかったのか分からなくなる。


これは、かなりよくある流れだと思う。


最初は楽しい。

AIすごい、と思う。


でも、途中から苦しくなる。


なぜか。


自分が何を作っているのか、きちんと決めないままコードを書かせているからである。



人間相手でも同じだ。


「いい感じのアプリを作って」


と言われても、作る側は困る。


何のためのアプリなのか。

誰が使うのか。

画面はいくつ必要なのか。

入力する情報は何か。

保存する情報は何か。

どんな時にエラーとするのか。

完成とは何をもって完成なのか。


それが決まっていなければ、作りようがない。


AIは優秀なので、曖昧な指示でも何かを作ってしまう。

だからこそ、かえって危ない。


人間なら「それ、仕様が足りません」と言うところを、AIはとりあえず形にしてしまう。

その結果、後から混乱する。



つまり、問題はAIの性能ではない。


コードを書かせる前の段取りがないことだ。


バイブコーディングで大事なのは、まず仕様を固めることである。


たとえば、最初にAIへこう頼む。


「仕様が固まるまで、コーディングはしないでください」


これだけでも、かなり変わる。


いきなりコードを書かせない。

まず壁打ちをする。


何を作るのか。

誰のために作るのか。

どんな機能が必要なのか。

最低限必要な機能は何か。

後回しにしていい機能は何か。

画面はどう分けるのか。

入力、出力、保存、削除、例外処理はどうするのか。


そういうことを先に整理する。


これは、魔法のプロンプトではない。

AIに「いきなり書かせない」ためのブレーキである。


そして、このブレーキがとても大事だ。



バイブコーディングという言葉からは、なんとなく勢いで作っていく印象を受ける。

実際、それが楽しい部分でもある。


けれど、本当に必要なのは、勢いだけではない。


勢いで進む前に、どこへ向かうのかを決めること。

AIに任せる前に、何を任せるのかを決めること。

コードを書く前に、作るものの形を言葉にすること。


そこを飛ばすと、AIが優秀であればあるほど迷子になる。


プロンプト集を集めることも、コードの断片を貼り付けることも、役に立つ場面はある。

けれど、それだけでは足りない。


本当に必要なのは、AIと一緒に開発を進めるための型である。


仕様を作る。

仕様をチェックする。

実装を小さく分ける。

ひとつずつ動かす。

壊れた場所を切り分ける。

直したら、また確認する。


地味である。


ものすごく地味である。


しかし、この地味な部分こそが、バイブコーディングを遊びで終わらせるか、実用に近づけるかの分かれ目になる。



AIがコードを書いてくれる時代になった。


それは、すごいことだ。


けれど、だからこそ人間側には別の力が求められる。


コードを暗記する力ではない。

プロンプトを丸暗記する力でもない。


作りたいものを言葉にする力。

必要なものと不要なものを分ける力。

順番を決める力。

AIに任せる前に、考えるべきことを考える力。


バイブコーディングで最初に学ぶべきものは、たぶんそこにある。


プロンプトでもコードでもない。


AIと一緒に何かを作るための、プロセスである。


※AIとの共創や、バイブコーディングの考え方について興味のある方は、プロフィールもぜひご確認ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ