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電脳の生死  作者: 有為
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十二話

更新ペースは落ちてますが、物語は加速してます

「この近くにあるんだね」

「候補地の一つが現地点よりわずか千七百四十メートル先にある」

 88が裕に、目的地に近付いたことを知らせた頃には、すでに辺りが暗くなっていた。

 この時、件のボスとの距離は、およそ三十キロ。これでもかなり無理をして稼いだ距離である。

「正確には、どっちの方に?」

「北から28.57684度東に向いた方角に、目的地の中心地が存在する。申し訳ないがこれ以上正確な値は出せそうにない」

「すまない。言い方が悪かった。ようは北東だね」

「おおざっぱにいえばそうなる」

「多少進行方向とはずれるね。でも島の端の位置を考えれば、そろそろ曲がらないと危険かな?」

「島の端に至るまでには、残り十五キロある」

「まあ、少し内側で曲がっとかないと、追い詰められたらまずいしね。よし。北東に針路をとろう」


 そうして、裕たち一行は進路を北東に変え、最初の目的地へと向かった。


「目的地は洞窟のダンジョン。当初は進入条件に二匹のボスのどちらかの討伐が含まれていたが、AIに占領されたときにメインサーバーが無理やり進入条件を無効化したから、今のあなた方でも入ることができるはず。しかしダンジョン内はフィールドよりもやや高めのレベル設定が可能だから、全員で行くのは危険だろう。一部の高レベルプレイヤーだけで進入するのがベストだと予測される」

「そうだね。このままでは確実にボスに追いつかれる。二手に分かれよう。ところで、NPCを発見したら、どうやって破壊すればいいんだ?」

「通常の戦闘と同様。NPCに耐久力の概念はないから、破壊属性を持った強攻撃を一撃でも当てれば撃破できるだろう。ただ、もし件のNPCが本当にここにいた場合、あなた方の接近はすでに気づかれているだろう。その場合、NPCが最後のあがきとして、それなりの戦闘能力を持っている可能性が高い。NPCの攻撃にダメージ判定は存在しないが、上手く逃げられると厄介だ。確実に仕留めなければならない」

「僕のほかには、NPCを破壊できるように設定されているのは?」

「レベルが三十五を超えているプレイヤー全員が可能だ。あなたは例外的にやや低めでも能力を付加されている」

「そうか……、よし、柳君たちに頑張ってもらうことにしよう。僕はこちらの指揮を取った方がいいだろうからね。他に決めておかなければいけないことはあるかな?」



 柳の元を裕が訪れたとき、なんとなく柳は嫌な予感がした。なぜなら、裕が明らかに何かよからぬことを企んでいる顔をしていたからだ。

「……なんですか」

 何か言われる前に、柳から聞いた。

「実は、柳君、君に少々頑張ってもらいたいことがあってね」

「……辞退していいですか」

「駄目だね。頑張ってくれ。強制だ」

「で?」

「ここから百メートルほど前方にある洞窟、そこに進入して、洞窟のどこかにいるNPC……、いや、いないかもしれないのだが、もしいたならそれを破壊してもらいたい。おそらくNPCの移動可能範囲は十メートル四方の範囲内だけだから、全ての部屋をマッピングしてそれで見つからなければ、いないと思っていいだろう」

「どうやってNPCを破壊するんですか」

「普通に強攻撃を当てさえすればいい。ただし、一度NPCのイベント発生最長距離、同一の部屋内で十メートル以内に近づいた場合、イベントを利用してNPCが脱出する可能性がある。逃がさないように、必ず出口はマークしてくれ。NPCの攻撃はダメージ判定が出ない。心配はいらない。それから、行動一時停止イベントも無効化することができるらしいから大丈夫だ」

「……わかりました」

「と、さすがに君一人というわけにもいかないからね。他にここにいるメンバーから適当に二人ほど抜粋して連れて行ってくれ。出来れば中レベル帯のプレイヤーを引き取ってくれるとありがたいな。多分僕たちの方でボスを引きつけることになるから、僕らの移動速度をこれ以上落とすわけにはいかない」

「ダンジョンの難易度は?」

「レベル三十五以上推奨クラスのダンジョンだろうというのが88の予想だ」

「その中に中レベクラスを連れて行けと?」

「大丈夫、柳君ならきっといけるさ」

「根拠のない励ましは逆効果ですよ」

「まあ、とにかく、そういうわけだから、よろしく頼むよ。ちなみにNPCは君しか破壊できないようになっているから、間違ってもしんでくれるなよ」

「言われずとも」

 そう言って、裕は颯爽と去って行った。

「なんていう無茶な作戦……」

 柳はダンジョンの難易度と自分のレベルを照らし合わせて、生存率を推し量った。

 中レベル帯のプレイヤーといえば、この世界では一般に二十から三十レベルのプレイヤーを指す。ギリギリ三十レベルの仲間を連れて行ったところで、三十五レベル以上推奨のダンジョンでは、大した火力にならない。となれば、筋力パラメーターのあまり関係のない、補助系統のプレイヤーを連れて、柳が一人前衛として戦うのが上策だろう。そうすれば、単純なクリアだけなら、九割方無事に行けるだろう。しかし逆にいえば、一割の確率で死者が出る。一発勝負のこの世界での九割とは、かなり低い数字といってよい。

「なぜマスターはこんな無謀な作戦を立てた……?」

 柳は突然の不条理な命令に疑問を抱きつつも、仕方ないからやるかと自分を奮い立たせて、重大な問題に気がついた。柳にとってはダンジョンの難易度よりもある意味重大な問題である。

 つい失念していたが、柳は自分で二人味方を集めなければいけないのだ。しかも死の危険と隣り合わせの危険な任務に。

 もちろん、マスターのお墨付きという点では、人員確保自体は可能だ。しかし、柳には致命的な問題なのだ。

 ――――つまり、人脈が無い――――

 トップクラスと十分言える柳のパラメーターだが、人付き合いのパラメーターはレベル0、いや、もっとひどいのではなかろうか……

 などとわけのわからない思考に陥り始めたところで、救いの手が差し伸べられた。

「柳ー、顔が暗いぞ」

 香苗(救世主)の登場により、メンバー一人目は半ば確定した。

 しかも幸運なことに、すでに香苗には裕から話が通されていた。そして香苗は自分から参加しに来てくれたのである。十中八九、裕の謀略だろうが。

 されに幸運は続いた。

「安心してください。私も参加しますから」

 なぜか柳が指名する前に勝手に参加が決まっていた?姙が現れたので、柳は自分からメンバー集めに苦労する必要は無くなった。

「では、行きましょうか」

 ほとんど何もしゃべらない柳に代わって、姙が二人を連れて歩きだす。

 柳は姙がリーダーでいいんじゃないかと思いつつ、巨人から逃げて長い長い道のりを歩き続けるプレイヤーたちの列から抜け出し、暗闇に包まれていく洞窟を目指して歩き始めた。



 柳たちが洞窟に向かったのを確認し、一度休憩をとろうとメンバーの行進を止め、適当な場所に休ませる。

 その隣には、88が、相変わらずの無表情で立ち続けている。

「無事にことが運ぶといいのだが……、と、僕たちも彼らの心配をしている余裕はなさそうだね。何としても、無事に大陸に戻りたいものだ。なあ、大和」

「そうだな」

「彼らだけに面倒事をやらせるわけにはいかない。僕たちも一気にことを運ぶよ」

「……どうするつもりだ?」

「僕らは……、さらに二手に分かれて、一気に残りの二か所を制圧する。片方は……頼んだよ」

「……解った」

「よし、ではまたどこかで落ち合おう。それまで無事で」

 再び動き出した裕たちの隊は、夜闇の中、その列を二分させた。

 海よりやってきた異邦者達は、広い島にその足跡を広げていく……。

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