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小さな力が集まったら  作者: ちゃい
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神殿を明け渡す

 王都から来た神官団が神殿に到着している。

 兵士たちは礼拝所に入ったまま出てこない。


 北の神殿の神官が、信者の女性たちを守りながら立っている。

 助けてあげたい、と思ってシューと一緒に女性たちのところへ移動した。


「怪我はないですか?」

 声をかけると、心配した周りの神官も女性たちの方を向いた。


「転んだので、痛みがあります」

 兵士に突き飛ばされたおばあさんが答えた。

「早く治療してください、ここは危険だから帰った方がいいですよ」

 と言うと、おばあさんは他の女性たちに支えられながら、入口に向かって歩き出した。


 神官たちが歩きやすいように道をあけた。

 何があったのかわからない後から到着した神官のために、見ていた神官たちが説明している。

「兵士に信者が突き飛ばされた」

「女神様の信者の女性が魔女だと言われた」

「あの王の兵士がしたのか、そんなことだろうと思った」

 ざわざわと小声で伝達されていく。


「何があったのですか?」

 北の神殿の神官に尋ねると、いきなり入ってきた兵士が王のために神殿を明け渡せ、と叫んだそうだ。

「この神殿を王のための神殿にする、と言って祭壇を破壊するように命令されました」

 そう言いながらつらそうな表情になる、剣で脅されたそうだ。

「ひどい、神官にそんなことさせるなんて」

 シューが険しい顔で言う。


「信者の女性たちが心穏やかに暮らせるように、女神様に祈り続けたいのです」

 切られても仕方ないと思いながら北の神殿の神官がそう答えると、兵士に外へ連れ出されたそうだ。


 この会話も、聞こえない後ろの人のために小声で伝達されている。

 ほとんどの神官が到着したのか、神殿の外にも神官団の列が並んでいる。


 しばらくすると、礼拝所から兵たちが出てきた。

 中は荒らされたように見える。


「この神殿は、王のために明け渡された、王の神殿である」

 大剣を持った兵士が大声で叫んだ。

 その後ろに勝ち誇ったような数人の兵士が立っている。


 声が聞こえているはずなのに、神官団からは何の反応もない。

 多くの人がいるのに沈黙している。

 よく見ると、表情は怒っている。


 数人の兵士は、数千人の神官団の敵になったようだ。

 自分の中の何かが怒りで震えている。

 まじめな神官じゃない自分でも、兵士たちが許せない。


「わっ、火がでそう」

 小声でそう言うシューに腕を引っ張られた。

 あわてて二人で海岸近くまで走る。

 ちょうど神殿の裏側にきたところで、シューが腕を離した。


「もういいですよ」

 シューの声とともに、海上に巨大な火柱が上がった。


 



 




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