休日
消えたかと思ったら、残ってましたー
やべーびっくりしたー
「なんと、わしらにも食事を作れと?」
宿屋のアリさんは、大柄なおじいちゃん。
奥さんは、ちっちゃくて、にこにこ笑顔のままシワが固定した、かわいいおばあちゃん。
ただいま、交渉中。
「作り方も、材料も渡しますので、あとはそのまま作ってもらえれば、宿屋の朝食と夕食は出来ますよね?」
私の提案に、2人とも顔を見合わせる。
「そんなことして、ええんじゃろか?」
「その作り方は、お前さんの専売特許じゃろ。他のモンも作れたら、困るのは、お前さんだろが」
なんと、私の心配してくれてる。
「いやいやいや、今のままだと、私、死んじゃいます。朝も昼も夜も食事を作り続けて、それが毎日!宿屋も増えて、お客さんも増えて、もうブラック一直線!労働基準法も真っ青!ジーザス!」
途中からは、分からない顔をされたけど、とにかく私が死にそうなことは伝わった。
「そこまで言うなら、教わるか」
こうして、少しずつ、村の宿屋で食事を出してもらうようになった。
その分、食堂の収入は減るけど、既にこの村全体の年間収入を超えるお金が貯まっているから、もう十分。
材料も余裕があるし、調味料は一通り全部買った。
今の私に必要なのは、休日である。
「えっ食堂を休む?」
モルさんが、びっくりじゃなくて、ちょっと怒ってる。
「なんだって、そんなことするんだい。ようやく毎日、これだけの人が来るようになったのに!」
また棒で頭を小突かれる。
扱い変わらないなー。
「ラザのところだって、新しく土産物屋を始めたんだよ」
ハルサが横から口をはさむ。
村の皆が、売れそうな物を作っては、来たお客さん相手に商売を始めたのは知ってる。
木を削って作った山の神やら、人形やら、おもちゃやら、魚の保存食やら、、、
案外、物珍しさで、かなり売り上げているらしい。
最近では、元々来ていた行商人の他にも、行商の人が来るようになって、買える品物が増えただけでなく、以前と比べたら値段も安く買えるようになった。
みんなの生活が底上げされてるのは、分かってる。
でも、休みたい!
もう、疲れたの。
「でも、もう私が限界なんです。これ以上休めなかったら、私、死んじゃう」
私の必死の訴えに、少し2人が怯む。
「それか、私が休む間、2人でお店やってくれませんか?」
この提案は、予想外の結果をもたらした。
「じゃあ、その間の売り上げは、私達2人で山分けするよ?いいかい?」
キラッとモルの目が光る。
「もちろんっ!ジャンジャン稼いじゃって下さい」
この結果に、私は恐れ慄く。
ヒヤヒヤもんです。




