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異次元無双の紅き艦  作者: 紫 和春


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第98話 作戦開始

 思わず黒島は聞き返してしまった。


「伐採作戦……ですか?」

「えぇ、伐採です」

「あの、端的に説明してもらえると助かるんですが……」


 黒島はいつもより丁寧な言葉でレイズに尋ねる。


「では作戦の概要を交えて説明させてもらいます」


 そういってコックピット内にホログラムを展開する。


「まずは現状の通り、逆位相システムを使用したまま、亜空間に潜入します。その後、亜空間を支えている巨大艦艇に、遠隔操作型信管を搭載したトランスさん謹製のトムボール級爆弾を設置。すべての巨大艦艇に設置を終えたら亜空間内の爆弾を起爆させます。これは時限作動するため、その間に亜空間から脱出し、なるべく遠くへ逃げるというものです」

「これがなんで『伐採』につながるんですか?」

「巨大艦艇をへし折る。巨木に見立てて折るという所から『伐採』をイメージしました」

「なんか、安直というか……」

「なんですか?文句でもあります?」


 笑顔で怖いことを言うレイズ。


「いえ、なんでもアリマセン……」


 若干片言で返す黒島であった。


「では伐採作戦開始です」


 そういって、レイズは指示を出す。

 後藤が亜空間のあるポイントを探り、そこにワープで飛べるように調整する。

 そして黒島がそのポイントに飛ばせる。

 亜空間に到着した時、後藤が叫ぶ。


「すごい数!レーダーが埋まって見える程だよ!」


 黒島もレーダーを見てみると、そこにはとんでもない数の白の艦艇が所せましと並んでいるのが分かる。

 亜空間であるため、光学装置ではまったく見えていないが、それでもきちんと並んでいることがレーダーから分かる。


「これは注意深く進まないと衝突しそうだぞ」

「取り合えず、目的の巨大艦艇を見つけましょう」


 そういって紅の旗艦と黒の艦艇は単縦陣で進んでいく。

 しばらく進んでいくと、巨大な塊のようなものがレーダーに映ってくる。


「これが目的の巨大艦艇です」

「大きい……。何キロくらいあるんだろ……」


 黒の旗艦にも引けを取らない程の巨大な艦艇。

 これが亜空間を支えているのだ。


「とにかくトムボール級爆弾を設置しましょう」


 そういってトランスの方を見やる。

 ここからはトランスの出番だ。


「まずはこの構造を解析する」


 そういってトランスは連れてきた黒の艦艇を巨大艦艇に近づける。

 そのまま内部の構造を非破壊で読み取る。


「なるほど。ここに置けば効率よく破壊できるな」


 そういってトランスは巨大艦艇のある場所を指定する。


「それで、トムボール級を設置するんでしたよね?」

「あぁ。今生成する」


 そういって黒の艦艇は、空間のある場所に移動した。

 するとそこでレーダーに異様なものが映る。


「何これ?」


 それはまるで、その場で3Dプリンターで物体を生成しているようだった。


「驚いたか。以前ヨーシャーク級から確保していた巨大生成装置を使って、黒の艦艇でも使える空間生成器を建造していたんだよ」

「じゃあ、そのトムボール級って……」

「今生成している所だ」


 そんなことを話していると、完全に出来上がる。

 巨大な球状の爆弾だ。


「さて、これを設置する」


 そういって、黒の艦艇は外装からアームを伸ばしてきて、それを器用に巨大艦艇に接着させる。

 簡単な溶接まで出してきて、この巨大艦艇を確実に沈める意志を黒島は感じた。


「これで良し。後は残りの巨大艦艇に、このトムボール級を設置するだけだ」


 そういって、次の巨大艦艇の元に移動する。


「しかしトランスさんでそれだけできるなら、なんで紅の旗艦も一緒にいるんですか?」

「まぁ、理由は色々あるんだが、まず護衛という立場が必要だ。次にそのレーダー性能。ただの黒の艦艇ではそんなに高性能のレーダーは使えないからな。そして二人にこの光景を見せておきたかった」

「俺たちにですか?」

「そうだ。本来なら人類は、これだけの流浪の民との戦いを強いられるはずだったんだ。しかもこれはほんの一握り。それだけ強大な敵を相手していることを自覚してもらいたいのだ」


 その話を聞いて、黒島は想像した。

 世界各国に大量に押し寄せる白の艦艇群。国連軍宇宙艦隊の善戦もむなしく、破滅へと蹂躙される。

 もし黒島が昨年のあの時、ガラス玉を拾っていなかったとしたら、おそらくはそんな未来がやってきていたのかもしれない。

 そう思うと、黒島の背筋は少し寒くなった。

 そのままレーダーによる探索は続き、そして巨大艦艇にトムボール級爆弾の設置が続いていく。

 合計で5つの爆弾を設置した。


「さぁ、ここからが本番だ」

「確か時限信管がついているんでしたっけ?」

「そうだ。そしてここからは時間との戦いでもある。まずはトムボール級を起爆させる。起爆時間は2分だ」

「2分ですか……」

「2分間の間にこの亜空間から脱出し、そしてなるべく遠くまで逃げる。単純だろう?」

「準備はいいですか?」

「えぇ、大丈夫です」

「最悪、あの黒の艦艇は見捨ててもいい。橙の艦艇と同じ、いくらでも量産できる艦艇だからな」


 そういってトランスは不敵に笑う。

 そういって退避行動の準備に入る。


「そもそも亜空間の外から起爆するってできないんですか?」

「できない。通常空間と亜空間の間は電波は通らないからな」

「さいですか」


 そんなことを話しているうちに、準備が整う。


「さぁ、起爆だ!」


 そういってトランス起爆スイッチを押す。

 その瞬間、設置されたトムボール級のカウントダウンが始まる。

 と同時に、なぜか白の艦艇群が活性化した。


「は?」


 一瞬あっけに取られる黒島であったが、次の瞬間には回避行動を取る。


「なんで白の艦艇が動いているんですか!」

「もしかすると、トムボール級の起爆電波に反応したのかもしれない」

「冷静に分析してないでください!」


 しかし紅の旗艦のことは見えていないのか、白の艦艇群は右往左往していた。

 とにかく黒島は前方の進路を確保するため、主砲で攻撃を開始する。

 その間に、黒の艦艇は白の艦艇群にぶつかって航行不能になっていた。


「ぬぉぉぉ!」


 そしてワープする。

 どうにかして通常空間に戻ってこれた紅の旗艦。

 巻き添えで何隻かの白の艦艇が一緒にワープしてきたが、そんなのに構っている暇はない。

 適当にミサイルをぶっ放して航行不能程度にさせると、黒島は紅の旗艦を最高速度で航行させる。

 残り30秒。亜空間のある地点からまだ数十km程度しか離れていない。

 残り10秒。速度は光速の10%にまで達する。

 そして時間になった。

 その瞬間、亜空間のある空間座標がグニャリと捻じ曲がる。

 そしてその地点を中心に大爆破が生じた。

 空間の持つエネルギーというのは、想像以上に大きい。

 その衝撃波は地球にまで届き、地球に設置されている重力波計は計測値が振り切れるほどだった。

 そんな中、紅の旗艦はなんとか原型をとどめながら生還する。


「うぉぉぉ……。死ぬかと思った……」

「ほんとそれ……」


 黒島と後藤は心臓をバクバクとさせながら、後方の様子を見る。

 しかしそこには何もない。最初から無が支配していたように。


「とにかくこれで2000万もの白の艦艇が失われたことになるな」


 そうトランスは締めくくった。

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