第99話 ウラジオストクの戦い
国連軍軍事参謀委員会では、今回の伐採作戦についての戦果の報告を受けていた。
「白の艦艇が2000万隻か」
「そんなものが地球周辺の空間に潜んでいたというのは、少々驚きだな」
「しかもこれが本隊ではなく、前線基地に過ぎないというのだから余計に驚く内容だ」
「しかし、敵は一度に2000万もの艦艇を失った。これはかなり大きな戦果だ」
「だが先の会議でも言った通り、敵は10億もの仲間を引き連れている」
「猶予すべき点はそこであるか……」
「今後も、この伐採作戦というものは継続していってほしいものだな」
「だがそれは、レッド・フリートに負担を強いるということになる」
「それも仕方あるまい。現状、彼らにしかできない仕事でもあるからな」
そのレッド・フリートは、黒島の家に集合していた。
その目的は、黒島の学校のテスト対策である。
「んひぃ……、なんで今回のテスト範囲はこんなにも広いんだよ……」
「黒島君、こんなので音を上げてちゃ入試の時大変だよ?」
「もう大変なんだよなぁ……」
「まったく、黒島は根性がないな」
「これ根性論で語るものですか?」
トランスのボケも華麗にツッコむものの、それでも黒島の試験勉強は続いていく。
そんな時、黒島はある問題て突っかかっていた。
「うーん……」
「あ、黒島君。そこの変換間違えてる」
横で見ていた後藤が黒島の横に寄ってきて、回答の間違えを指摘する。
ノータイムで近寄ってきた後藤に、思わず黒島は体が硬直してしまう。
「……?どうしたの黒島君」
「いや、後藤。体が……」
「体のどこかが痛むの?」
「いや、そういうわけではないんだけど……」
若干チグハグしている二人。
その様子を傍から見ていたレイズとトランスは顔を見合わせた。
『あの二人、付き合っているのか?』
トランスが文字チャットでレイズに話しかける。
『私の知る限り、まだのはずですよ』
『まったく、目の前でイチャイチャするのは勘弁願いたいものだな』
『本当ですね』
黒島は慣れていない女の子との会話で緊張している。一方の後藤はただ純粋に黒島のことを思ってやっているから質が悪かったりする。
そんな感じで試験勉強を行っていると、黒島のスマホが鳴り響く。
「なんだ?」
手に取ってみると、緊急速報メール。
場所はウラジオストクであった。
「行きましょう!」
「もちろん!」
そういって黒島たちは紅の旗艦へとワープする。
トランスは「Fleet of Red」のイベントモードを発動させ、連絡を取ったジーナには、ウラジオストクの防衛用に蒼の艦艇群を短時間で配備させていた。
ウラジオストク上空では、白の艦艇群が地上に降下しながら攻撃を行っていた。
ロシアにおける東方の玄関口とも呼べるそこは、ロシアの中でも栄えている街だ。
また軍港としても栄えている。そのため、ロシア軍の対空砲や対空ミサイルが火を噴いた。
全力で投射しているものの、命中数はたったの2だ。
そんな街に、白の艦艇群は容赦なく攻撃を敢行する。
蒼の艦艇群が防衛に入ったときには、街は少し焼けていた。
しかし蒼の艦艇群がやってきたからには、もうそれ以上の攻撃はさせない。
地上では蒼の艦艇群が完全防備の状態で待機していた。
「準備は出来ましたかね」
そういって紅の旗艦は上空から眺める。
「それじゃあ今日も張り切って行きましょ」
そう、レイズが言うと、黒島は紅の旗艦を地上に向けて降下させる。
そのまま白の艦艇群に向けて主砲砲撃を敢行した。
しかし、いつもと様子が異なる。
「なんか、いつもより数が多くないですか?」
そう、空間に占める白の艦艇群の数が、今まで以上に多いのだ。
「もしかすると、本格的に危機感を持ち始めたのかもしれません」
「それって昨日の前線基地破壊が関係しているとか?」
「可能性は否定できません。しかし前線基地一つ消失した所で、問題は特に発生しない程の戦力ですが……」
「とにかく攻撃をしましょう!」
そういって黒島は突っ込む。
上空から衛星兵器のようにビームを撃ち込み、逃げようとする白の艦艇群にはミサイルを提供する。
こうして、蒼の艦艇群と紅の旗艦の協力的な行動により、白の艦艇群は次々に撃沈する。
そしてそこに橙の艦艇群も合流する。
「今回は白の艦艇群の完全な破壊だ。サンプルは十分に集まっている。さぁ、破壊の限りを尽くせ」
まるで悪役のようなセリフを吐くトランス。
しかしその半面、橙の艦艇群はよく動き、白の艦艇群を追い詰めていく。日々ゲームとしてアクセスして遊んでくれているプレイヤーがいるからこそ成り立つというものなのだろう。
数は多かったものの、その分効率的な破壊を行うことが可能となり、そして白の艦艇群を完全に追い詰めることができた。
残りの白の艦艇群も、もう数隻という所で、不思議な出来事が発生する。
再びレイズたちに頭痛が走る。
「ぐっ、またですか……」
「今度も何か言っているんですか?」
レイズは無言で頷き、そして音質を調整する。
すると、黒島たちの耳にもはっきりと聞こえるようになる。
『畜生……、こんな所で死ぬのか……!』
『あいつが……、あいつが言うからそれに乗ってやってきたのに……!』
そんな何かに対する憎悪のようなものを感じ取れる。
「破壊してください」
それに耐えられなかったのか、レイズはうつむいたまま黒島に言う。
「……分かりました」
そういって黒島は白の艦艇群に最後のとどめを刺す。
こうして、ウラジオストク上空での戦いは幕を閉じたのだった。
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