第66話 絶体絶命
集合してくる白の艦艇群は、立方体のような形を取る。
続々とワープして現れ出てくるそれは、まるで湧き出る水のようだ。
「数8000を突破!」
「っ!攻撃だ!」
黒島は主砲を展開し、砲口を白の艦艇群へと向ける。
そしてためらうことなく主砲を発射した。
発射した主砲はまっすぐ飛翔し、白の艦艇群を襲う。
それで墜ちた白の艦艇群はいるものの、それでも圧倒的な数の有利さには敵わない。
「白の艦艇、12000を突破」
「これは想像以上に数が多い!」
「紅の艦艇を呼び出します!」
そういって、レイズが紅の艦艇群を呼び出そうとする。
その時だった。
レイズが激しく苦しみだしたのだ。
「どうしたんですか!?」
「あ、頭が痛い……!」
「どういうこと?」
「白の艦艇群の攻撃です……!私に紅の艦艇群を呼び出させないようにしているのかも……!」
「そしたら紅の旗艦一隻で戦うことになりますよ!」
「とにかく、今はそれでやるしかないです……!」
そんなことを言っている間に、白の艦艇群の準備は整ってしまった。
「白の艦艇群、数が約15600……!」
「祐樹さん、とにかく白の艦艇群を墜としてください!」
「とにかくって、こんな数相手にどうやって戦えっていうんです!?」
「いいからやってください!対応は私が考えます!」
その直後、紅の旗艦にビーム砲撃がされる。
「くそっ!」
黒島はそれに対応するため、紅の旗艦を急旋回させる。
体に慣性がかかるが、それを無視しないとこちらがやられてしまう程の攻撃力だ。
「とにかく反撃を!」
そう考えた黒島は、ありったけのミサイルを白の艦艇群に向けて発射した。
しかし、白の艦艇群による数の暴力によって、ミサイルはことごとく撃墜される。
また、圧倒的な弾幕を潜り抜けたミサイルも白の艦艇に装備されている機銃によって、簡単に墜とされてしまう。
結果、ミサイルが命中したのは、たったの2発のみであった。
これには黒島も、思わずしかめっ面をしてしまう。
「攻撃、攻撃、とにかく攻撃を!」
黒島は白の艦艇群に負けないように、主砲を乱発する。
しかしそれも、いくつかに散開して波状攻撃を仕掛けてくる白の艦艇群の前にはあまりにも無力であった。
黒島は攻撃が当たらないように回避に集中しつつ、攻撃を加える。しかし、「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざがあるように、人間同時に二つのことを行えるほど器用ではない。
少しずつではあるものの、紅の旗艦にダメージが入っていく。幸いなのは、後藤によるバリアの展開があったことくらいだろう。
しかしこのままではジリ貧である。黒島はレイズに答えを問う。
「レイズさん!何か解決策はないんですか!?」
しかし、レイズは考え込んでいるようで、それに反応しない。
「レイズさん!」
二度目の呼びかけ。
その時、レイズが動く。
「機関出力解放!亜空間精密生成開始!」
その瞬間、紅の旗艦全体からうなるような音が鳴り響く。
すると、それまで戦闘を行っていた空間そのものが歪み、縮小される。
そして最終的には、そこに何もなかったかのように、静寂な空間が生成された。
一方で、紅の旗艦と白の艦艇群は、レイズの手によって生成された亜空間の中に閉じ込められていた。いや、レイズの考えによれば、白の艦艇群を亜空間の中に閉じ込めることに成功したというべきか。
「ここは……?」
「ここは亜空間です。このようにして、流浪の民なら亜空間を生成する事が可能なのです。そして、私はそれを精密に行ったに過ぎません」
「そんなことより、白の艦艇群は!?」
「亜空間生成によって、一時的に距離は離れました。しかし、すぐにでも私たちのことを発見するでしょう」
「とにかく、今後の方針を考えないと!」
「それについては問題ありません」
「どういうことですか?」
「ここは特殊な空間になっています。亜空間という宇宙の形を、無理やり特定の形にしているからです。2次元空間をドーナツの形にして2.5次元空間にしているように、3次元の宇宙をドーナツ状に捻じ曲げて3.5次元の空間にしています」
「……?つまりどういうことですか?」
「簡単に行ってしまえば、どの方向に主砲を撃っても、真後ろに戻ってくるってことです」
「へぇ……」
「そんなことより、白の艦艇群来るよ!」
「さぁ祐樹さん、全方向に主砲をばらまいちゃってください!」
「えぇ……」
黒島としてはにわかに信じ難かったが、そういわれてしまえば乗っかるほか方法がない。
黒島は腹をくくって、主砲を全方向に向けた。
「主砲一斉射!」
主砲が一斉射される。
直後、レイズが指示を出す。
「祐樹さん、今の位置から少し避けてください。梓ちゃん、バリアの出力を主砲にやられない程度にまで上げて」
「了解」
黒島たちはその指示に従う。
すると、向こうの方から白の艦艇群がやってくることに気が付く。
しかも特に数が減っているというわけでもない。
「マズいですよ!突っ込んでくる!」
「大丈夫、落ち着いて」
そうレイズは諭す。
そして白の艦艇群が紅の旗艦に接触しようとした、その時だった。
どこからともなく、黒島が放ったビーム砲撃が命中する。
「へ?」
「ね、言ったでしょ?」
ありとあらゆる方向から、紅の旗艦のビーム砲撃が飛び交う。
白の旗艦はそれの回避に間に合わずに、次々と墜ちていく。
たった一回の斉射で白の艦艇群は相当数の数が墜ちた。
この時確認しただけで、9割以上の白の艦艇群が墜ちたのだ。
「すごい……」
「これが私の必殺技です」
そうレイズはにっこりと笑った。
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