第26話 報告
黒島たちと公安が接触してから2日後。
警視庁公安部公安第五課のオフィスでは、インターポールに報告するための書類作りが進んでいた。
「んで、結局どういう風に書くんだ?」
「そうだな……。相手はただの高校生たち、と書くには少々物足りない感じだな」
「じゃあどうするんだ?」
「うーん。じゃあ、こうしよう」
そういって、報告書にこう書き記す。
『謎のアカウント、レッド・フリートは、二人の高校生と一人のエイリアンによって運営されていた。このエイリアンは、人類に対して友好的に接していると思われる紅き艦に関係していると思われるため、これをもって断定するものとする。個人情報に関しては、基本的人権と我が国における法律によって開示は行わないものとする』
「まぁ、あらすじとしてはこんなものだろう」
「少々簡潔すぎやしないか?」
「ここから詳細を詰めていくんだよ」
そういってその刑事は、カタカタとパソコンを打っていくのであった。
報告書が出来上がったのは翌日のことで、それをインターポールに送信する。
そして報告書は、軍事参謀委員会へと渡された。
「諸君、先日話題になった、例のツイッチューブのアカウントについて進展があった」
「誰がやっているのか判明したのか?」
「もちろんだ。このアカウントを運営していたのは、日本に住む高校生二人だったようだ」
「……高校生だと?」
「もちろんそれだけではない。その高校生のスマホに謎の紅き艦の関係者と思われるエイリアンが入り込んでいたようだ」
「紅き艦の関係者がいたのか」
「やはりあの艦は味方だったのか」
「なお、個人情報に関しては、諸事情によって開示できないとしている」
「なに。一般の高校生が関係しているなら、開示できないのも仕方あるまい」
「問題はどうやって紅き艦を合法的に味方につけるかだ」
「今は紅き艦が個人的な理由で手助けをしているに過ぎないからな」
「しかし考えはあるのか?」
「ないわけではない。だが少し難しい選択ではある」
「聞こうではないか」
「この事実を安保理と総会に報告し、取り上げてもらう。そして総会に召喚するのだ」
「そんなことが可能か?」
「建前上は可能だろう。だが、問題は総会が取り上げてくれるかだ」
「この非常事態だ。平和ボケした総会でもいい反応をくれることだろう」
「ではそのように」
こうして、軍事参謀委員会の助言は、国連安保理へと流れることになった。
内容としては、総会への召喚と人類側につくことを説得するようなものだ。
国連安保理では、この内容が支持され、総会に提出することになった。
一方総会では通常会が開催され、様々な議論が話し合われていた。
現在最も力を入れているのは、流浪の民に関してのことだろう。
それを話し合っている委員会では、次の議題がやってくる。
「えー。知的生命体から離反したエイリアン、通称紅き艦が、日本の高校生とともに活動していることが明らかになった。現在、人類に対しては友好的であるとされ、今後の活動が焦点になると考えられる」
この時、委員会に参加していた各国代表はザワザワしだす。
もしかすると、この紅き艦は人類の味方になるのではないかという考えが、委員会参加者たちに広まっていくのだった。
しかし、それに待ったをかける国家代表がいた。
日本の行動に異を唱える東側諸国である。
特に中露は日本と地理的に近いこともあり、日本軍に編成されるのではないかという危機感を持っていた。
しかし、それを委員長が制止する。
「静かに。まず、我々は知的生命体の侵略という未曾有の危機に瀕しているのは周知の通りだろう。そして、それに対抗することができる手段を持ち合わせることが可能になるということだ。ここはぜひ、国連総会に召喚したいところであり、日本に今後の解決策をお願いしたく、この決議を取ろうと思う」
そして投票が行われた。
もちろん、賛成多数で可決されることになる。
そしてこの議題は緊急性の高いものとして、すぐさま総会に提出されることになった。
総会にて、この議題が取り上げられることになる。
「国連総会としては、すぐさまこの決議に賛成したいところだ」
こう話すのは、国連総会議長である。
しかし、ここでも反対の意見をするものが現れた。例によって中露である。
しかし、その他多数の国家は支持を表明しており、結果として賛成多数でこの議題は可決されることになった。
「では、この勧告を日本に向けて発信しようと思う。いかがか?」
議場はパラパラと拍手がなる。
そしてそのニュースは日本ですぐさま報道されることになった。
『国連総会、日本に対して謎の勧告か?』
このような見出しとなっている。
「そりゃ、そうなりますよね」
このニュースを見たレイズがそう言う。
多くの日本人にとっては、国連の決議に関してはまったく知らされていない。
常に国連の動きを見張っている人間でもない限り、なんのこっちゃと言うことだろう。
記事には、これまで政府や公安しか知らなかった内容が書き連ねており、政府の対応の悪さを指摘している。
またツイッチューブには、陰謀論者がわんさか湧いて出てきており、ある種の幻影を見ているようであった。
「これでまた公安の人が来ると、いよいよですね」
「そうですね。まぁ、逮捕されることはないと思いますよ」
そういって、黒島は帰路についた。
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