第18話 モスクワ上空
それから黒島たちは、夜な夜な通話をしては人類との邂逅について話し合っていた。
「人類にレッド・フリートの姿を見させるのなら、まずは新興国からやっていくのがいいんじゃないですか?」
「慣れさせるという観点では、その方法が最も有効だろう」
「しかし時間がかかるんじゃないですか?」
「確かに時間がかかるのは問題だな」
「時間をかけずに人類と邂逅させるとなると、少し手間がかかりますね」
「何か有効な手立てはないかな」
全員がうなって考え込んでしまう。
これといった打開策が考えつかないからだ。
そのまま時間だけが無情に過ぎていく。
その時、黒島のスマホがなる。
何か通知が来たようだ。
黒島はその内容を確認してみる。
どうやらツイッチューブの通知のようだ。
この時、黒島はあることを思いつく。
「ツイッチューブを使うのはどうですか?」
「これですか?」
「はい。SNSで情報発信するというやつですよ。レッド・フリートのアカウントを作って、それで広報をするのはどうでしょう」
「確かにいい考えかもしれないが、それでいいのか?」
「まぁ、何かあってもアカウント消せばいいだけの話ですし、問題はないでしょう」
「危ない思考ですね……」
方向性は決まった。
黒島は早速行動に移す。
まずは、フリーのメールアドレスの取得から始まった。
大手IT企業のアカウントがあれば、簡単にメールアドレスは取得できる。
それを使って、黒島はツイッチューブのアカウントを作成した。
名前はもちろん、レッド・フリートである。
問題はその投稿内容だ。
「一体どんな内容で投稿すればいいんだか……」
「まずは挨拶をすればいいのではないか?」
「なら大将のレイズが代表して挨拶すればいいんじゃないか?」
「国際色豊かにするために、各国の言語も追加しておきましょう」
「話が飛躍してるんですけど!」
結局、日本語で話して英語字幕をつけるということで落ち着いた。
次は撮影である。
「じゃあアドリブでお願いします」
「そんな無茶なお願いあります!?」
そんなことを言いつつも、レイズはスマホの機能を駆使して、撮影を行う。
結果、できたものは次のようになる。
『皆さん、初めまして。私が世間を賑わせている謎の紅き艦こと、レイズ・ローフォンです。さて、私が人類の前に登場した理由ですが、私はあの知的生命体、通称流浪の民に対して反逆をしたというのが大きな理由です。今現在、反逆した理由を述べることはできませんが、私は流浪の民に攻撃されている人類を救うべく、ともに戦うことを宣言します。人類の皆さん、よろしくお願いします』
これを見た黒島たち。
出てきた感想は至極単純なものだった。
「ちょっと硬いですね」
「仕方ないじゃないですかぁ!こんなの初めてなんですし!」
「まぁ、最初にしては上出来だろう」
「早速これを投稿しよう」
スマホを使って、少し編集作業をして、黒島はその動画をツイッチューブに投稿した。
「さーて、最初の反応はどうかな?」
とは言っても、すぐに結果が出るわけではない。
黒島は丸一日置いておくことにした。
そして次の日の夜。
投稿した動画のチェックをする。
「バズってたらありがたいんですけどねぇ」
「私がバズらないみたいな言い方しないでくださいよ」
「とにかく、見てみるほかないだろう」
そういって、黒島は動画の再生数を確認する。
動画の再生数は、56回であった。
「56回……」
「まぁ、無名のアカウントからしてみれば、だいぶいった方じゃないですか?」
そういって、動画に寄せられたコメントを見てみる。
『うそくさ』
『炎上商法ですね分かります』
『かわいいな、APP90か?』
『都合が良すぎる』
この言われようである。
「誰も信用してない……」
「まぁ、仕方ないことですよ。これから少しずつ信用を上げていけばいいんですから」
そんなことを話している時だった。
「っ!白の艦艇に動きがありました!」
「今度はどこに?」
「今度はモスクワに質量爆弾を投下するようです」
「よし、行きますか」
そういって、黒島と後藤は、例のごとく紅の旗艦にワープする。
「機関始動。空間転移準備」
「目標、モスクワ上空」
「周辺に異常なし。レーダーオールグリーン」
「空間転移回廊展開、準備よし」
「ワープ!」
ワープした先には、巨大な白の艦艇が1隻いた。
「ヨーシャーク級地上制圧艦!まだ残っていたんですか!」
「とにかく、この艦を攻撃すればいいんですね?」
「はい」
「艦首主砲、一斉射!」
艦首に装備されている主砲から、24本のビームが照射される。
そのビームは、見事にヨーシャーク級を打ち抜く。
そして大爆発を起こした。
「よし!撃沈!」
「まだです!」
黒島は撃沈を確信したが、レイズはそれに反対するように叫ぶ。
爆炎を上げる艦から、何か大きなものが地上に向けて飛んで行った。
「敵は質量爆弾を投下しました!あれをどうにかしないと、モスクワに被害が!」
「とにかく追いかけましょう!」
そういって、黒島は艦を地上に向けて降下させる。
質量爆弾は、その質量によって速度を上げ続けていた。
その速度を超えるスピードで紅の旗艦は降下をする。
そして紅の旗艦は、質量爆弾の真横につける。
「これからどうするんですか!?」
「これを主砲で爆発させます!」
「そしたら破片がモスクワ中に降り注ぐことになりますよ!」
「そしたらミサイルで破片を爆破させましょう!」
「その手がありましたね!」
そういって紅の旗艦は、質量爆弾から距離を取り、主砲を向ける。
そして質量爆弾に向けて発射した。
主砲から発射されたビームは、質量爆弾の中心に見事命中し、大爆発を引き起こした。
そして質量爆弾からは、大小様々な破片が飛び散る。
「ミサイル、全弾発射!」
100を超えるミサイルが一斉に発射される。
そしてそのミサイルは、レイズの手に誘導され、被害が出るであろう大き目の破片を狙いすましていく。
そのままどんどん破片に命中させ、粉々にしていった。
こうして、影響の出ないレベルにまで破壊していく。
結果、質量爆弾は粉微塵となり、破片がバラバラと散っていった。
「これで任務は完了。さぁ、帰りましょうか」
「おっとその前に一つ言っておくことがある」
どこからともなく、トランスが現れる。
「なんですかトランスさん。戦闘終了直後なのに」
「いや何、先ほどの戦闘の様子を撮影させてもらった。これをSNSに上げれば、信用する人間も増えるんじゃないか?」
「そんなことしてたんですか……」
「こういう戦闘時は暇なんでな」
「そうですか」
そういって、黒島たちは家にワープする。
黒島はトランスが撮ってきた映像を使って、戦闘の様子をツイッチューブにアップする。
しかし、これが思わぬ反響を呼ぶことを、今は知らない。
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