第130話 白の旗艦
白の旗艦が突撃してくるのを阻止するため、前線にいた橙の艦艇群が白の旗艦に群がる。
おそらくここで足止めをしたほうが効率的であると判断したのだろう。
橙の艦艇群が一斉に白の旗艦に対して攻撃を開始した。
しかしそんな攻撃は通らないと見越したのか、白の旗艦は最高速度で直進を続ける。
実際にはバリアを展開しながらの前進であるため、着弾してもなんの影響もない。
橙の旗艦はその結果を受け、方針を転換する。
無理やり白の旗艦の軌道をずらすために体当たり攻撃を仕掛けたのだ。
しかしこれも、白の旗艦のバリアによって阻まれる。
だが、バリアは電磁波の一種だ。橙の艦艇群もバリアを展開することで、バリア同士干渉させてバリア内部に侵入するという方法を取る。
そのまま橙の艦艇群は、白の旗艦のバリア内部に侵入し、そのまま白の旗艦に直接攻撃をする。
しかし白の旗艦の外部装甲は特殊な素材でできているのか、橙の艦艇群の攻撃を食らってもびくともしない。
白の旗艦は橙の艦艇群の攻撃をもろともせず、そのまま突進を続ける。
「二重銃身回転式狙撃銃発射急げ!」
トランスの怒鳴り声によって、黒島はハッとする。
「レイズさん!」
「分かってますよ!機関出力解放!」
「機関出力430%!エネルギーを狙撃銃に直結!」
狙撃銃の砲口がわずかに光る。
「発射!」
そして発射される。
それは突撃する白の旗艦に命中するものの、バリアによって防がれた。さっきよりも威力を増しているにもかかわらずである。
「クソッ!まるで効いてない!」
「なら威力を増大させるまで!紅の艦艇群、主砲発射準備!」
そういって紅の艦艇群にも一緒になって、白の旗艦のバリアを破ろうとする。
紅の艦艇群の指揮系統は全てレイズが握っている。そのため、最大火力を得られるような計算を行い、それを紅の艦艇群にフィードバックする。
「もう一度、狙撃銃発射!」
狙撃銃の発射と共に、今度は紅の艦艇群の主砲攻撃も一緒である。
最大火力を得るために、白の旗艦の一点に集中するように調整された砲撃は、まっすぐ白の旗艦へと飛翔する。
そして命中した。
白の旗艦は、バリアのある空間で大爆発を起こす。
「やったか?」
「それ禁止!」
黒島の発言に、レイズが注意する。
実際その通りで、バリアによって防がれた白の旗艦が、同じように突進をしてきていた。
「全然ダメじゃん!」
後藤が叫ぶ。
白の旗艦は何事もないように、突撃を続ける。
黒島は回避のために紅の旗艦を動かそうとした。
「いや、待ってください!」
レイズが黒島に制止をかける。
光学装置を用いて観測をすると、白の旗艦のバリアが限界に近づいていることに気が付く。
「先ほどの攻撃は有効です!このまま攻撃を続行しましょう!」
そういって狙撃銃にエネルギーを供給する。
紅の艦艇群も主砲の準備をして備えた。
「狙撃銃、発射!」
そして再び発射される。
それはしばしの飛翔の後、白の旗艦に着弾する。
その瞬間、白の旗艦に展開されていたバリアがはじけ飛んだ。
「バ、バリアがっ!」
フリットは驚いたように言う。
「よっしゃ!こっからは俺の出番だ!」
そういって出てきたのはロビンである。
翠の艦艇群はバリアの展開ができない白の旗艦に接近し、そして接弦する。
「逆噴射開始!」
そういうと、白の旗艦の進行方向とは真逆の方に全力でエンジンを全開にする。
その出力は、白の旗艦の出力と等しくなるほどだった。
「力比べなら僕のほうが優勢だ……!」
「それはどうかな?翠の艦艇群、なめるんじゃあないぜ!」
そういって翠の旗艦も加わって、全力で白の旗艦を押す。
そして少しずつ、だが確実にその速度は低下していった。
やがて、その速度がマッハ1を下回るころである。
「今だ。橙の艦艇群で奴を破壊しろ」
トランスがそういう指示を橙の旗艦に送る。
その指令を受け取った橙の旗艦は、橙の艦艇群を動かし、白の旗艦の周りに配置した。
何百隻と言う橙の艦艇群が一斉に、逆位相システムの電波を白の旗艦に照射する。
「う、ぐあああ!頭がっ!頭が割れるっ!」
旗艦級のプロテクトがかかっているものの、数百隻もの橙の艦艇群からの照射には耐えられないようだった。
「あっ、が、が」
もはや言葉にならない声を上げているフリット。
そして沈黙が続いた。
その間も、翠の艦艇群による減速が続けられる。
やがて、白の旗艦の機能が停止していく。
「終わった……?」
黒島がつぶやく。
その言葉を確認するように、トランスが白の旗艦の様子を確認する。
「白の旗艦の各種アビオニクス停止を確認、白の旗艦の生体艦長の生体反応消失。白の旗艦、沈黙を確認。以上をもって白の旗艦を撃破したとする」
その瞬間、レッド・フリートの間には、歓喜と安堵の空気が流れる。
「良かった……!白の旗艦撃破ですよ!」
「そう……ですね……。はぁ……」
テンションの高いレイズと、疲れ切っている黒島。
その時だった。
『目覚めの時だ』
「え?」
レイズに聞こえる謎の男性の声。
その瞬間、レイズの意識は暗転する。
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