第128話 第六弾
6月13日、夜7時39分。
この日、黒島たちはトランスに集められていた。
「本日集めたのはほかでもない。次の目標に対して攻撃を行うのだ」
「今回の目標はどこです?まぁ、なんとなく分かってますけど」
「今回の目標は太陽―地球系のL2だ。太陽とは反対側に150万km行ったところにある」
「そこもこれまでと同じように、亜空間があるんですか?」
「推察ではな。しかし、これまでと同様に素直に攻撃を受けてくれるのかは分からん」
「とにかく現地に行ってみないと分からないことですね」
「そういうことだ。とにかく四の五の言わずに行くぞ」
そういって黒島たちレッド・フリートはL2に向けて出発する。
L2近くにワープすると、後藤があることに気が付く。
「レーダーに大きな反応がある。ものすごく大きいのが前方に……!」
「もしかすると……」
その様子に、トランスがうなる。
「なんだ?あれが何か分かるのか?」
ロビンがいう。
その時である。
何かを察知したのか、ジーナが前に出て、巨大なバリアを展開した。
次の瞬間、レッド・フリートに複数の砲撃がされる。
幸いにして、ジーナのバリアによって、砲撃が直撃することはなかった。
「前方の巨大な何かから砲撃されました!」
レイズが報告する。
それを聞いたトランスが気が付く。
「いや、あれは巨大な何かではない。白の艦艇群そのものだ……」
それを聞いた後藤が、レーダーの分解能を上げて再度観測する。
すると、レーダーには無数の点が表示された。
「亜空間に留まらず、通常空間に出てきているのか……」
「そうだ」
何か納得するトランスに同調するように、声が聞こえてくる。
「この声は……フリット!」
「この間ぶりだな、レッド・フリートの諸君」
「この期に及んでなんの用事ですか?」
「穏やかじゃないなぁ。ここは一つやるべき事をやろうと思っててね」
「やるべきこと?」
「そう。今やレッド・フリートの活躍によって、白の艦艇群はその数を大きく減らしている。特に、先の地球包囲作戦で撃沈された白の艦艇群はかなり痛手だったよ」
「フリットがそうやって悔しがってるところ初めて見たぜ」
「悔しがっているのか?あれが?」
ロビンの感覚に、トランスがついていけていないようだ。
そんな事はさておいて、フリットが続けて言う。
「そこで、私は考えた。残り少ない白の艦艇群をどのようにして有効に活用していくのかを」
「それが、まとめてぶつけてしまおうって事ですか」
「その通りだ、レイズ。これ以上小出しにする必要はない。残りの艦艇を全てぶつけてしまえば問題はないのだよ」
「残りの白の艦艇群は推定で3億弱。まぁ倒せない数ではないが苦戦はするだろうな」
「そう、これは生存のための戦争だ。流浪の民と地球人類、どちらが消滅するかの戦争だ」
フリットの言葉に、狂気を感じ始める。
「なんかヤバくないですか?」
「フリットは元からヤバい奴です。今に始まったことではないですよ」
黒島がレイズにいうが、レイズは普通とばかりに言い返す。
「さぁ、生存戦争を始めよう」
そういってフリットが宣言する。
その瞬間、白の艦艇群がレッド・フリートに向けて突撃してくる様子がレーダーに映し出される。
「白の艦艇群、移動を開始したよ!」
「こちらもやりますよ!二重銃身回転式狙撃銃発射用意!」
そういって紅の旗艦の船体からせり出すように、狙撃銃が展開される。
「機関出力上昇390%!」
「機関出力を狙撃銃に直結!エネルギー弁切り替え!」
「目標を選択。照準を白の艦艇群にセット」
狙撃銃の準備を行う紅の旗艦。
照準を白の艦艇群に向ける。
「狙撃銃、発射!」
そして発射する。
極太のビームが白の艦艇群に向かって飛翔していく。
そして着弾する。
その攻撃は、白の艦艇群を次々と撃沈へと導いていく。
この一射で、万単位の白の艦艇群が沈んだ。
しかしそれでも白の艦艇群は、撃沈された以上の数の艦艇で襲ってくる。
「橙の旗艦出撃!白の艦艇群を葬り去ってこい!」
トランスが指示を飛ばす。
今回、「Fleet of Red」のプレイヤーは来ていない。場所が光速を使っても5秒以上かかる場所にいるからだ。こんな場所では、まともに操作を行う事が不可能である。
そのため、今回の橙の艦艇群は橙の旗艦の指示によって、無人で操作されているのだ。
前衛を紅の艦艇群と翠の艦艇群が担当し、中衛を橙の艦艇群、後衛に蒼の艦艇群、さらに後ろに黒の艦艇群が準備しているという、いつもの陣形で白の艦艇群を迎え撃つ。
「さぁ!共に生存戦争を見届けよう!」
そう高らかに、フリットが宣言する。
その名の通り、これが最後の戦いになるかもしれないからだ。
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