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異次元無双の紅き艦  作者: 紫 和春


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第127話 交渉

 6月12日。トランスは忙しそうに黒の旗艦と艦艇群を行き来していた。


「なんかトランスさんに要請みたいなのが入っちゃったみたいで、それの対応にてんてこ舞いですよ」


 そうレイズが愚痴を言う。


「何かあったんですかね」

「レイズまで駆り出されるなんて、珍しいこともあるんだね」


 そんなことを言う黒島と後藤。


「私はただ、国連総会のオブザーバーで、レッド・フリートの代表をしているだけなんですよ。それがなんで国連安保理の方にまで駆り出されなきゃいけないんですか……」


 そう、ブツブツと文句を言う。


「それがレイズの仕事だからだよ」


 そこに、トランスがやってくる。


「トランスさん、何か作業をしているようなんですけど、一体何をしているんですか?」

「簡単な話だ。国連安保理は国連軍宇宙艦隊の戦力を増強したいと考えているらしい。そこで、日本の国防宇宙軍で採用している艦艇複製建造法を国連軍の艦艇にもやってもらえないかという相談を受けたんだ」

「へぇ、そうなんですか」

「もちろん、艦艇を複製するだけだから単純なものだ。問題は政治的な観点で、どの国がどれだけ艦艇を建造するかを議論している状態だ」

「そんなの関係なしに、バンバン建造していった方がいいんじゃないですか?」

「それこそ政治的な問題だ。今、宇宙軍の中で影響力が強いのはどこだ?」

「アメリカじゃない?」

「戦力的に見たら日本だ」

「そうだ。そんな感じに、各国が思惑を交差させているものだから、なかなか艦艇を複製するに至らない。日本は偶然にも、俺たちレッド・フリートと接点を持っていたから艦艇を複製できたものの、他の国はそうはいかない。これをどうにかしようというのが、外交というものだ」

「なんだか難しい話になってきましたね……」


 黒島が首に手をやる。


「そんな難しく考えることはない。単純に、自分の国が得したいという考えを持った輩がたくさんいるというだけだ」


 そういってトランスは手元の資料に目を通す。


「ほら、レイズ。この後は国連安保理とアメリカ軍との交渉だ。存分に仕事ができるぞ」

「えぇ、もう面倒ですよぉ」

「そう言わずに行くぞ。お前はある意味レッド・フリートの代表なんだからな」

「それなら祐樹さんがいるじゃないですかぁ」

「あいつは人類代表だっただろ?人類代表はそれらしくいてもらわんとな」

「ブーブー」


 そんなことを言いつつも、レイズはトランスについていくのであった。


「大丈夫かな?レイズさん」

「それはどういう意味で?」

「まぁ、いろんな意味でだな……」


 そういって黒島と後藤は苦笑いする。

 一方のレイズは、そういった雑務をこなしつつも、あることに考えを張り巡らしていた。


(私の中に何者かがいる……。そんな感覚が最近頭をよぎる……)


 そう、つい先日の白の旗艦との接触時にも、頭の中に何かが流れ込んでくるような感覚を覚えていた。

 それは冷たい感じではあったものの、どこかなつかしさも感じるものだ。

 その考えに、レイズは疑問が生じた。


(なんでなつかしさを感じているの?)


 その疑問は最もだろう。

 見たことも聞いたこともない人間の声のようなものを、懐かしむというのが気味の悪い感覚である。

 しかしそこに、紅の旗艦の謎が解けるのかもしれない。

 レイズは今一度、先の声を思い出す。


『目を覚ませ』


 男性のような感じの声。しかし手がかりはこれだけである。


「何が分かるのよ……」

「どうかしたか?レイズ」


 レイズの行動に、トランスが聞く。


「いや、なんでもないです」

「そんなわけないだろう。俺は艦のメンテナンスもするが、それには生体艦長の管理も含まれる。何かあるなら遠慮なく言え」

「それなら……」


 そういってレイズは、先の声と紅の旗艦に存在する開かずの部屋について話す。


「コックピットのすぐそばにそんなものがあるなんて思いも寄りませんでした。これが何なのかが分かれば、紅の旗艦に存在する秘密を解明できると思うんですよ」

「ふむ。レイズよ、一つ質問するぞ」

「あ、はい」

「自分の体はどこにあると思うか?」

「体?」

「そうだ。生体艦長になるには生身の体が必要だ。レイズの生身の体はどこにあるかを聞いている」

「それは……」


 ここに来て、レイズは自分の体がどこにあるのか、それを答えることができないことに気が付いた。


「ちなみに俺の生身の体は艦中央部の制御室の一角に設けてある。他の艦艇もそうだろう」

「私の体は……どこに?」

「さぁ、俺に聞かれても分からんな。しかし、分かっているんじゃないか?」

「分かっているって……」


 その時、レイズはある考えに至る。


「開かずの部屋……もしかしてそこに?」

「さぁ?それは自分の目で確かめたほうがいいんじゃないか?」

「しかし、自分の目で確かめるって、一体どうやって?」

「俺にできることはない。だが、お前にならできることがある」

「それは一体……?」

「白の旗艦を撃破すれば分かることだ。今はそれだけを考えろ」


 そういってトランスは自分のやるべき作業に戻っていった。


「白の旗艦の撃破……」


 レイズは、一つの決断を下す。

 必ず、あの傍若無人の白の旗艦を撃沈させると。そして、フリットに自分についての秘密を吐かせることを決めたのだった。

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