本日の夜食はブリカマ!アサヒスーパードライ!君に決めた!と思っていました
前日の夕方、スーパーで半額になっていたブリカマを見つけた。
賞味期限は翌日。
「これはイケる」
夜に焼けば煙や匂いで子どもたちが大騒ぎになる。ならば朝のうちに焼いてしまい、夜は温めるだけ。
子どもたちが寝静まったら、ブリカマをつまみにアサヒスーパードライをキメる。
完璧な作戦である。
翌朝。
子どもたちを保育園と学校へ送り出し、休日の私は動き出した。
まずはブリカマを水で洗って拭き取り、塩を振る。
十五分置いて浮き出た水気をさらに拭き取り、もう一度塩を振る。
そして、ナショナル製の年季が入った魚焼きグリルへイン!
このグリルが実に優秀なのだ。
最新家電には出せない、香ばしい焼き色と、身はふっくらとした絶妙な焼き上がりにしてくれる。
焼き上がりを待つ間も無駄にはしない。
子どもたちの夕飯を一気に仕上げる。
ハヤシライス、だし巻き、鶏肉のチンジャオロース、板ずりキュウリ、モヤシの甘酢漬け。
今夜は子どもたちには腹いっぱい食べてもらう。
そして、ぐっすり眠ってもらう。
迅速に。
私にはその後、ブリカマとアサヒスーパードライという至福の時間が待っているのだから。
グリルから、かぐわしい香りが漂い始める。
じゅ……じゅわ。
脂が落ちるたび、小さく幸せな音が響く。
年季が入りすぎて覗き窓はほとんど役に立たない。だから時折蓋を開けて焼き具合を確認する。
そして、焼き上がるブリカマ。
表面は脂でつやつやと輝き、塩の粒がキラリと光る。ほどよい焦げ目が食欲を刺激し、身はふっくらと盛り上がっている。
……これは反則だ。
「ちょっとだけ。ちょっとだけだから」
箸を入れる。
ふっくらとした身に、箸がすっと吸い込まれる。
じゅわっと透明な脂があふれ出し、香ばしい香りが鼻をくすぐる。
味見。味見だから。
……至福。
この一口が、すべての始まりだった。
ブリならではの濃厚な旨味と、とろけるような脂の甘みが口いっぱいに広がる。
塩だけの味付けだからこそ、その甘さが際立つ。
もうちょっと。
骨から身を外し、さらに箸を進める。
食べやすいように左手でブリカマをひっくり返す。
骨の隙間に残った身を見つけては、箸で丁寧にほじる。
この骨の周りが、また格別に美味い。
脂の甘みと、香ばしい焦げ目のほろ苦さ。
気づけば、また箸が伸びていた。
ちょっとだけ。
そう思っていたはずなのに、箸は止まらなかった。
左手はブリの脂でてかてかに輝き、指先からは香ばしい匂いが漂う。
胃袋も、なんとも心地よく満たされている。
「あー……満足ー」
そう呟いて皿へ目を落とす。
……。
…………。
骨と皮しか残っていない。
「……やっちゃった」
私の華麗なる夜の予定は、その瞬間、静かに消滅した。
ブリカマをつまみに飲むはずだったアサヒスーパードライは、冷蔵庫の中で、ただ出番を待ち続けている。
「…………まあ、美味しかったからいっか」
子どもたちには秘密の話である。
ブリカマが美味しすぎた。これは不可抗力である。




