四パーセント
四パーセントの使い道
ブルームバーグの画面に、米国市場の数字が流れていた。
**17.2兆ドル。4%。**
「こんな数字を見ていると、もっと増やさなきゃって焦ります」
若い社員が言うと、会長は窓の外を見たまま答えた。
「増やすことが目的なら、いつまでも足りないよ」
彼は会社を大きくした人だった。けれど、社長室の椅子は古く、時計も質素だった。彼の資産がどれほどあるのか、社員の誰も知らない。
「では、お金は何のためにあるんですか」
「選べるようにするためだ」
会長は、机の引き出しから一枚の紙を出した。そこには、来年の計画が書かれていた。若手の研修費、育児中の社員の時短制度、町工場への発注。どれも、すぐに利益を生むものではない。
「利回りが四%なら、四%を受け取る。その数字に満足して、残りを育てる。人も会社も同じだ。急かして刈り取れば、次の実りはなくなる」
若い社員は、画面の数字をもう一度見た。
十七兆ドルの向こうに、暮らしがある。仕事があり、学ぶ人がいて、明日の選択がある。
会長は立ち上がり、窓辺の鉢植えに水をやった。
「金持ちというのは、たくさん持つ人じゃない。何に使うかを、自分で選べる人だよ」
その日の帰り、若い社員は駅前で足を止めた。雨に濡れた花壇の隅で、小さな草が芽を出していた。
彼は傘を少し傾け、そこを濡らさないように歩いた。




