3話
長めの散歩。
そう腹を括り、3つ隣の駅まで来た。
我ながら向上心の塊である。
大学までの定期圏内ではあるが、何分個人的に遊ぶような友人がいないため近辺の駅の情報については人一倍疎かった。
まあどちらにせよ、この駅に特段降りるほどの理由があるようには見えない。
夜食を持ち帰れそうなめぼしいお店でもないかと、電車で来た道を足で戻る。
電車と同じ景色をなぞるだけでは味気ないので、狭い道を抜けていった。ある程度曲がり角を超えていき、数ある住宅街の先に待ち受けていた、美しい建物に目が止まった。
柱や屋根、ドアは赤く、壁はクリーム色。
レースのカーテンが覗く小窓には繊細な模様のガラスペンや、アンティークの時計が飾られている。
玄関に続く階段を少し登り、恐る恐る窓から中を見るとそれほど広くはないものの、中央にシャンデリアとそのほかの心惹かれる品々が、飾られていた。奥には赤いベルベットのカーテンが何枚も重なって天蓋のように吊り下げられている。
あの奥にも品があるのだろうか?
見たい。
しかし、他に客がいない。
こういったこだわりの店に他の客がいないときに入ると店主の話に心を込めた返答をしなければならず、気疲れするんだよな、と心中でまくしたてる。
気になるが……、また人の多そうな日に出直すのも悪くないかと去ろうとしたとき
「気になるの?」
そっと開いたドアから柔らかい声と共に、背の高い女性がのぞいていた。
「どうぞ、入っていって。」
赤みを帯びたしなやかな長い黒髪に、うっそりとした笑み。眠たげなようで、しっかりと私を見つめるその瞳に、確かに私は射られた。




