無事、解決……?
――その後。
私には見えないほどの早さで男の背後に回り込み、男をうつ伏せに地面に倒したミハエルは、男の背中に片膝を付き体重を掛けて動けなくしながら、ギリリと男の両腕を締め上げた。
そこに巡回中の騎士達が現れたのでそのまま男を引き渡した。
……あっという間の出来事だった。
男が組伏せられるまで、十秒もかからなかったのではないだろうか。
流れるように綺麗な一連の立ち回りは、まるで映画のワンシーンを見ているかのようで……。
私はただただその光景に見入ってしまった。
流石は王子の護衛騎士のミハエルだ。
ミハエルに守ってもらっているクローウェルが羨ましい…………って、そうじゃない。
「騎士様、ありがとうございました」
「良いのですよ。騎士の務めですから」
慌てて頭を下げると、ミハエルから頭を上げるように促される。
頭を上げながらチラリとミハエルに視線を向けると、その顔色が浮かないことが気になった。
……どうかしたの?
ふと浮かんだ私の疑問は直ぐに晴れる。
ミハエルは痛ましそうな視線を地面に向けながら言いにくそうに口を開いた。
「……それよりも、あなたの大切な物が守れませんでした……」
……私の大切な物?地面に?
首を傾げながら、ミハエルにつられるように地面に視線を向けると……
『わあぁぁぁぁぁ!!!』
突然、頭の中に大声が響いた。
「……っ!?」
いきなりの大声に思わずビクリと身体が跳ねてしまう。
「……大丈夫ですか?」
ミハエルが心配してくれているが、私が驚いたのは落ちた団子に対してではない。
「……大丈夫です」
頭の中がまだキーンとしているが、何とか笑顔を作った。
『だいじょうぶじゃないよぉ~!!』
アリアの不満たっぷりの声が聞こえるが……少し黙っていて欲しい。
私が驚いたのは言わずもがな、アリアの叫び声のせいだ。
『アリアのだんご……』
クスンと鼻をすする音が聞こえた。
全然気付かなかったのだが、先ほどの騒動の間にいつの間にか団子から手を離してしまっていたのだ。
これならさっさとアリアに渡してしまえば良かった……。
無惨にも潰れた団子がとても痛々しい……。
『やってこようかなぁ……』
ゾワッとするようなアリアの低い声が聞こえる。
『何を?』とは聞けない。
そんなの聞かなくても分かる。
早くミハエルと別れて団子を買い直さなければ、一つの命が消えることになりかねない。
とても失礼な男だったけど、死ぬことまでは望んでいない。
後悔する位の罰を受ければ良いとは思うが……。
『アリア様!落ち着いて下さい!』
今まで黙っていたレイがフォローしてくれるようだ。
連れて来て良かった!頼りにするよ!
『ただやるだけでは物足りないですよ!食べ物の恨みは恐ろしいことをしっかりと植え付けてからやらないと!!』
『あ、そっかぁ~!』
……おい、こら。煽ってどうするの!?
そして、アリアも『そっかぁ~!』じゃない。
二人とも少し冷静になって欲しい。
気持ちは十分に分かるから!
「……本当に大丈夫ですか?」
ミハエルに顔を覗き込まれた。
しまった……。
ミハエルの存在を忘れていた。
団子を落としたことにショックを受けて立ち直れないのかと思われたりしてないよね……?
どんだけ食いしん坊なの、私。
色々と気まずいので…………ここは逃げるに限る!
「す、すみません!大丈夫です」
もう一度深く頭を下げて踵を返そうとすると……
「待って下さい!」
ミハエルに呼び止められた。
「……ええと、あの?」
「お詫びにご馳走させて下さい!」
いやいやいや!
「騎士様は助けて下さったではないですか!普通ならば私がご馳走させていただく方だと思いますけど!?」
「騎士たる者、女性にご馳走していただくわけにはいきません!」
「いえ!お礼ですから、私にご馳走させて下さい!」
「駄目です!女性には払わせません!」
そんな押し問答を数回繰り返した末――――。
ミハエルに団子屋まで連れて行かれることになった。
女性の手を引くのは憚るのか、ミハエルは私には触れようとはしないが、私が逃げないようにか、しっかりと視線を合わせて、決して外そとはしなかった。
イケメンに見つめられるのはとても気まずいし、そもそも歩きにくいのだけど……!?
周りの人々がザワザワしていることに気付いている!?
『おだんごぉ~、おだんごぉ~!』
『お団子!お団子!』
君達は気楽で良いね!?
――結局、私はミハエルに団子を十本も買って貰うことになった。
ミハエルにアリア達は見えてないよね!?
私一人に団子十本はおかしいよね!?
アリアやみんなで美味しくいただきましたが、何か……?!
変装しているから私だとバレていないとは思うけど……暫くの間はミハエルの顔を見たくないと思った一日でした。
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次回の更新は4日の17~19時の予定です^^
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