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魔女が落とした宝物  作者: 内藤ナイト
2/12

最初の愛②

 彼の名前は中川敦。歳は私の一つ下で17歳。これが私の初めての交際。

 容姿は私の主観からするといたって普通で可もなく不可もない。そんな敦との交際を何故私が受け入れたのか?それは丁度梅雨が終わる時期に差し掛かった頃だった。

 学校から帰宅する途中で雨に降られた。ニュースではもうすぐ梅雨明けだと今朝テレビで言っていたにも関わらずかなりの勢いで水滴が地面へとぶつかっていた。学校から自宅までは歩いて20分程度だったが未だ半分ほどの距離しか歩いておらず目に見える範囲での雨宿り場所は幼い頃よく遊んだ公園の遊具小屋だけだった。

 昔から雨は嫌いでは無かったがそれは屋内にてその雨音を聞く時であり、このように体に纏うことはあまり好きではない。幼い頃は高く感じたこの遊具小屋の天井も今となっては人2人が入るのが精一杯である。

 袖や髪を搾り、持っていたハンカチで体に纏った水を拭っていく。

幸い、雨の勢いは先程よりも弱まっており1時間ほどすれば止む気配もあった。私はカバンの中にあった一冊の本を手にして自分の世界へと潜り込んだ。シトシトとはよく分からない擬音であるが雨音の中読書にふけるのも悪くはなかった。今読んでいる本はレモン-インセストという本で一つの愛をテーマにした作品だ。10ページ程文字の羅列に目を通した時公園に一人の男の子が駆け足で入って来た。軽く息を切らしながら学校カバンを頭の上で持ち私のいる小屋へと入ってきた。

 『ども』なんともまぁ気のないあいさつだ。素気ないというかなんというか。これに対して私は『すごい雨だったね』と返し再び本へと視線を戻した。

 彼は犬の様に体を左右に揺らしながら全身の水を払っていたが正直水滴が私の近くまで飛んできたので本を読む側からすると勘弁してほしかった。

 彼の名前は中川敦。歳は私の一つ下でサッカー部に所属している。学年も違うのに何故他人に興味ない私が彼に対する情報を把握しているかというと彼は今年からこの学校に転入してきた生徒だったからだ。

 始業式の日に校長の挨拶後彼は壇上に上がり軽い自己紹介をしていた。どうやらサッカー部に入って活躍したいと豪語していた。

 それから数週間後私が学校から帰ろうとしたときサッカーボールが私の頭と接触した。どうやら彼が蹴ったボールが私に当たったらしい。『ごめんなさい』中川敦が私に近づきながら謝罪してきた。当たった直後は頭部に痛みが走ったが今はそこまでのようだ。私は『大丈夫』とだけ言いその場を後にした。

 どうやら彼も全身に浴びた水をある程度払ったらしい。小屋の椅子に腰をかけながら話かけてくる。

『本当に。傘もなかったので困りましたよ。服もびしゃびしゃになっちゃったし。』この年頃の男の子はハンカチを持ち歩いていないのだろうか?ハンカチで水を拭った私と比べ彼は未だに多くの水を纏っていた。そんな彼を気にもせず私は再び自分だけの世界へと入ろうとしていた。そのとき『本好きなんですね?』彼の口から言葉が出てきた。

『まぁ、一応。』素気なく返答した。正直この雨でこの場から逃げ出せない状態となっているため、他人とのコミュニケーションを不得手とする私にとってはあまり良くない状況だった。彼はというと空を見上げ落ちてくる雨粒をどことなく曇った眼差しで見つめていた。

 数分後、『クシュ』今度彼の口から言葉では無くくしゃみが出て来た。よく見ると軽く身震いしているのが目にとれた。見かねた私は彼に『このままじゃ風邪引くよ?家でシャワー浴びなよ?』そう声をかけ彼は首を縦に一度振ると私は彼の手を取り小屋から出て走り出した。雨雲の向こうからは微かに日の光が見え始めていた。

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