ダンジョン攻略
朝の目覚めは、わりと快適だった。それなりの宿屋だったからかベッドは柔らかで寝心地は悪くない。病院のベッドに眠っている俺はこのように普通に夜寝て朝に起きるということができないが、脳はしっかりとしたサイクルを築いてくれているらしい。
ボウルに汲まれた水で顔を洗い、朝食を食べに階下に下りる。宿屋のオヤジへと顔を見せ、食堂も兼ねている一階で朝食を用意してもらう。その際、少しばかり情報収集を開始した。
「この辺であんまり強い魔物の出ない攻略済みダンジョンってどこになりますか?」
俺の言葉に、食事を運んできてくれたオヤジが答える。
「あんた開拓者なのかい? そうさなあ……この近くだと、西門から真っすぐに進めば一時間ほどのところにある《ビーストケイブ》なんかがいいんじゃないか? ウチに開拓者が泊まることも多いがレベルが低い場合そっちに行くって聞いたからな」
なるほど、ビーストケイブ……名前から獣系の魔物でも出るのだろうか。昨日町を散策した感じだと町を四つに分断する大通りは東西南北にそれぞれ出入り口が存在しているようだった。西にダンジョンがあるとして、残りの東南北は何があるのだろうか。
「北はこの国の首都フレイラークがあるのは知っているだろう。南にもダンジョンはあるんだが、少々手強い魔物が出るらしいから行かないほうが無難だ」
「東は……何があるんですか?」
「おいおい、国境に決まってるだろうが」
国境? ……そういえばギルドのお姉さんが国力増強とかなんとか言ってたな。ということは他にも国があるってことだろう。西と南にダンジョンがあるということは、国の領土を拡げるために領域を拡大できるのは西と南になるのか。北は……首都フレイラークをさらに越えた先にはダンジョンでもあるのか?
オヤジに質問を続けようとしたが、他の客が呼ぶ声に従って「すまんな」と言って退散してしまった。
まあ、必要な情報はそれなりに揃ったので、とりあえずはいいとしたい。朝食を食べ終わり、適度な満腹感を得てから、部屋で準備を整えることにした。
昨晩寝る際に、つい普段通りに脱ぎちらかした町人服を手に取る。装備欄を操作すれば一瞬で装着されるのかと思ったが、どうやら違うようだ。ちゃんと自分で着ると装備欄に《身体》町人服となった。
脱いである状態だとどうなるかが気になるので、試しにもう一度脱いで手に持ってみた。
《アイテム》ウインドウに『町人服』という表示が現れたので選択してみる。
すると待機アイテム欄へ移動しますか? という表示がされ、OKを押すと町人服が消えてしまった。少しビビッたが、待機アイテム欄から選択し直すとふたたび実体化してくれたので、裸でウロつくことにはならずに済みそうだ。
ちなみに手に持っている状態――触れている状態でないと待機欄へと移動させることはできないようだ。もしも盗まれたりした場合、ちょっと困ったことになりそうだが、所有権などはあるのだろうか? と考えても分からないことはスルーしよう。
ただし《イグニス・ヴァルム》については待機欄へ移動させようという試みは不可能だった。契約終了まで移動不可という呪われたようなメッセージが出現したためだ。まあ、この発見は大きい。持ち切れないアイテムは待機欄へ、すぐに使うアイテムは外に出しておけばいいのだろう。魔物と戦う際にこんな悠長な操作ができるとは思えないからな。
「ところでさ、ヴァル」
『もしや我のことをいっているのか』
この呼び方で反応してくれたことに少しだけ親近感を覚える。鞘にあった装着具で今は腰に提げているイグニス・ヴァルムに話しかけた。この武器名はあのドラゴンの名前らしい。長いので勝手に短縮してみたが、どうやら怒られることもないようだ。
「その、核玉を集めてみようかなとは思うんだけど、卵の件はどうする? 放っておいていいのか?」
『今の状態では、どうにもできないだろう。傷が癒えればふたたび捜すまでだ。お前がそちらまで気にすることはない』
などと、怒気を孕んだ声で返答があった。気になる……に決まってるよな。
とりあえず、宿を出た後に、昨夜襲撃のあった南西地区へと足を運んだ。卵について何か手がかりがあればと思ったからだ。
南西地区は結構な荒れ具合だ。この町は円状に広がっているようで、直径は体感的に二キロほどだろうか。球体を四つに分割したうちの南西地区に面している大通りは数十メートルに渡って石畳がひび割れていた。まだ焼けた建物などもそのまま残っているのが生々しい。
そんな通りを歩き、全焼した建物の前で復旧作業に忙しそうにしている商人の男に話しかけた。
ザイル Lv25 商人
「あの」
「なんだい。悪いが店がこの有様でね。商品なんかを売ることはできないよ」
振り返った男は商人にしては素っ気なく、せかせかと動き回っている。痩せた頬にギョロついた目はどことなく誠実さに欠けるといった印象だ。
『ここら辺りで匂いが途絶えた』
ヴァルがいきなり喋るので、目の前の男に聞こえるのではと心配したが、どうもこの姿でのヴァルの声は俺にしか聞こえないらしい。
「ここでは、どんな商品を売っていたんですか?」
ザイルは微かに眉根を寄せて俺の問いに答える。
「別に普通の商品だよ。道具類を中心にね」
「そうですか、卵とかも置いてあったんですか?」
男の顔が微かに硬直したのは、俺にも分かった。だが、別になんの卵かなんて言ってない。
「ああ、いや、食料品店はこの先を少し行った場所にある。卵を探しているのならそこに売っているよ」
咄嗟の反応にしては合格点だろう。だがこちらは最初から疑っている。今の硬直は明らかに不自然なものだった。かといって、ここでこれ以上食い下がってもよろしくはないだろう。
「そうですか。ありがとうございます。それと、ダンジョン攻略へと向かう開拓者が使うような防具を置いてある店って、この辺にありますか?」
「ああ、それもあっちに商人ギルドがあるから、そこに色々な店が入っているだろう」
軽く頭を下げ、俺はその場を後にする。今はここまでだが、後々何かの手がかりになるかもしれない。ザイル……名前は覚えた。
『気にしなくて良いと言っただろう』
「少し情報を集めただけだよ。あの男は少し怪しい。機会があればもうちょい探ってみるよ」
ヴァルの言葉に、通りを歩きながら小声で対応する。
『すまぬな……イサヤ』
昨晩、一応俺の名前もヴァルに教えたのだが、初めて名前を呼んでくれた。ドラゴンがデレるとは思わなかった。我の卵――とか言ってたから雌なんだろうか? ともあれ変にからかうと燃やされそうなのでやめておく。
少し歩いた先に商人ギルドが建っており、中に入ると活気に溢れた空気が室内を支配していた。真ん中には受付と思われるカウンターがあり、それらの周りには様々な店が詰まっているといった光景だ。
話を聞く限り、真ん中の受付は魔物がドロップする材料限定の売却窓口だそうだ。周りの店では売れないらしい。どうやら武具や道具の材料となるアイテムの独占が起こらないように、商人ギルドが適正価格を決定して各商店へと卸しているらしい。町にある他の店でも材料に関しては同様のようだ。
しかし今は材料を売りにきたのではなく必要なのは防具だ。武器はヴァルがいるので問題ないだろうが、防具がこの服では心許ない。
いくつかの防具屋を回ったが、同じ品においては基本的に値段は変わらないようだ。そのため、適当な防具屋で町人服よりはマシだろう革の服を購入し、町人服は下取りしてもらった。
これで残金は250ダカット。道具屋へ赴き、回復アイテムである《癒しの滴》なる小瓶に入った液体を四つ購入する。瓶が戦闘で割れる心配は杞憂だと店主が言ったので一応は信じることにする。これで残りは50ダカットだ。
最後に、道具屋で腰につけるような小袋を購入した。これは《癒しの滴》のような瞬時に使えるようにしておくアイテムのために必要だろう。早速購入した四つを入れて腰へとぶら下げた。
残金0
少し軽率だったかもしれないが、これでダンジョン攻略の準備はいいだろう。もう戻れない。
――サウスプラナの西出口に移動し、俺はついにこの世界でのフィールドへと足を踏み出した。町を出たすぐ近くには、畑と思われる土地がしばらく続き、やがて広原へと姿を変える。町から離れることに若干の不安を抱いたが、構わず歩き続けた。
正確な時間などは分からないが、おそらく行程の半分ほどきた頃、半ば予想していたことが俺の身に降りかかった。
視界の遠く向こう、何か動く物体が見えた。それが近くまで――判別できるようになるまで接近してきたとき、ナニであるかを知った。
一見すると、現実世界で見たことがある犬の姿に似ていると思った。あれは確か――そう、シベリアンハスキーだったと思う。しかしそれによく似た姿の生き物は、およそ人に懐くような可愛らしさを内包してはいなかった。
血走ったような赤く濁った眼は、完全に俺を食事の対象としているかのようにギラギラと輝いている。絶え間なく涎を垂らし続けるその口からは、鋭く大きな犬歯が荒い息遣いとともに姿を覗かせていた。身体は灰褐色の体毛で覆われ、身体のフォルムは体毛で覆われているのに筋骨隆々な力強さを感じさせられる。
俺が知っているRPGの魔物は、荒い仕上がりでどこか作り物の雰囲気が拭えなかった。それ故に本物ではないのだという感覚が多分にあったため、異形の姿に驚くことはなかった。
だが、昨日のヴァルにしてもそうだったが、精細な造形で、眼を凝らすと毛の一本一本までがリアルさに溢れている。
やだ、このワンちゃん怖いっ。
などと考えている場合ではなく、今にも俺を噛み千切らんと襲いかかろうとする目の前の生き物に意識を集中させる。
ラウンドウルフ Lv2
ヴァルの時には驚きのあまり観察できなかったが、ドラゴンに比べれば所詮はこんなの犬コロだ。……もっとも俺はレベル1のため、餌になる可能性は十分ある。油断などできるはずもない。
俺は腰にあるヴァルの柄を握りしめ、勢いよく抜き放つ。
柄は赤鱗のような装飾、刃は燃えるような美しい紅である直剣は、微かな熱を帯びているように感じられる。宿屋の寝室で素振りをして判明したのは、これは片手剣ではなく両手剣だ。片手で振れる軽さではない。
装備欄には《右腕》に装備されていたが、両手で持つと《両腕》イグニス・ヴァルムと表示されていた。それぐらいの説明はあってもいいと思うのだが、この世界にヘルプ機能はないのでしょうがない。
ともあれ、現実世界での経験がここで活きることは十分にあるだろう。何せ身体の感覚が現実と全く一緒なのだから。剣道は人相手だが、応用は可能だと思う。要は間合いと相手の動きを見極めることが一番大切なのだ。
ヴァルを中段に構える。
俺は声を発した。
「――来いっ!」
まるでその言葉を待っていたかのように、ラウンドウルフが大きな体を一度沈ませてから、勢いよく弾けさせた。
その身体は、見ため通りに力に溢れており、数メートルという距離は一瞬で喰らいつくされてしまった。目の前まで駆けてきた相手は、それこそ空気が振動するような咆哮の後、地面の土を抉り、蹴り上げながら宙へと跳躍する。
首元に大きな顎が間近まで迫ってから、俺は半歩身体をズラすようにしてそれを避ける。試合で相手の剣戟の間合いを見切るというのは、剣士として何より大事なことであり、剣速と比べればこのラウンドウルフの突進は些か遅めにも感じられる。
地面に足をつけて急制動をかける獣の身体は、おそらくはすぐに反転して襲ってくるだろう。だが、それよりも早く、俺はヴァルを振り下ろした。
ラウンドウルフの体毛に覆われた横腹を切りつけると、唸り声とともに血飛沫が跳ねた。途端、切り口から激しい炎が巻き起こり、それは一瞬で相手の身体を包み込む。
「ガ……か」
黒焦げとなって息絶えたラウンドウルフは力なく地面へと倒れ伏し、その身体が揺らぎ、空気の中に溶けるように四散していった。
「ヴァル……凄すぎるだろ……」
大きく深呼吸をすることで息を整え、魔物が四散した地面に転がっている毛皮を拾い上げた。アイテム名は『毛皮』らしい。これが材料アイテムなのだろうか。とりあえず待機欄へと移動させ、ウインドウを閉じた。
「でも核玉は出現しないのな」
『我で魔物を斬れば、核玉は我の傷を癒すために吸収させてもらう。だが……こんなものでは全然足らぬ』
やっぱり。
なんとなく想像はついてた。せっかくの開拓者ギルドでの換金用アイテムはヴァルに吸収されるらしい。こうなれば材料アイテムを売却することで利益を出すしかなさそうだ。まあ核玉を吸収するデメリットを遥かに上回るさっきの威力を見れば、むしろヴァルにはお礼を言いたいぐらいである。
やはりフィールドでも魔物は出るのか。頻度としてはここまで何事もなかったので多いとはいわないが、やはりダンジョン以外でも魔物は出る。
ダンジョンへふたたび足を向ける俺は、少しだけ笑っていた。
初めての魔物を倒せた喜び、リアル過ぎるほどの現実とは異なる世界……それらは確かに少し楽しいのかもしれない。
しかし、衝動はそういったものから生まれたわけではなく、半年間も眠り続けていた俺の身体が――正確には脳が、やっと活発に動き回れるようになったという、どこか原始的な欲求が満たされたことへの快感によって満たされていたのかもしれない。
静謐に彩られた何もない真っ暗な空間から、情報に満ちた世界への解放。
それはきっと、人間の本能にも近い、闘争心を高ぶらせるには十分だったのだろう。
ダンジョンではもっと魔物が出る頻度は高いのだろうか。
「魔物、また出てこないかな……」
『なかなか頼もしいではないか』
ヴァルのほのかに熱い柄を握りしめる掌は、軽く震えるほどの興奮を覚えていた。
午前中――太陽が頂上へと達するまでに、俺は目的の『ビーストケイブ』へと到達した。フィールドで魔物と遭遇する頻度はやはり高くない。戦闘はあれきりだった。まあ、そうでなければ町は襲われ放題だろう。
何故ここが目的のダンジョンだと分かるのかというと、目の前の女性が教えてくれたからだ。二十代半ばの凛々しいといった騎士。
リーベンス Lv21 騎士
と表示された女性は、銀色のブレストアーマーを着込み、マントを羽織っている。ここにいる理由はダンジョンの出入り口を交代で見張るためらしい。
ダンジョンの管理は国が行っているとのこと。領土に関係することだから、当然なのかもしれない。
「君は開拓者ギルドに登録している?」
「あ、はい」
「名前は?」
「イサヤです」
「ああ、あるわね……でも、君一人で入るつもりなの?」
何かを操作する手振りの後、騎士がそんな言葉を口にした。そういえばギルドは国に登録者リストを提出すると言っていた。それを見たのか。
町人 Lv1って大丈夫かよ、ってなことだろう。
ん? だが、別に登録していなくとも攻略は可能だとも言っていたはずだ。
「ええ、ところで、開拓者ギルドに登録してなくてもダンジョンに入れるって聞いたんですけど、してないと駄目なんですか?」
「いえ、問題ないわ。その場合はここで簡単なチェックをさせてもらうけど。具体的にはステータスカードのチェックとかね。ここは既に攻略が終わったダンジョンだけど、変な人には入ってほしくないから」
「変な、人?」
「ダンジョン攻略をしている者は貴重なアイテムを所持していることが多いわ。それを狙った盗賊とかそういった類の人達のこと」
……なるほど。
「まあ、実際のところ登録しておいてもらった方がこっちは楽だけどね。すぐに確認できるし、ダンジョン攻略に挑んでいる人数とか把握するのも大切だから」
あのタイミングで登録しておいてよかった。今の俺はドラゴンテイマーという職業にある。別に犯罪者というわけではないが、サウスプラナでの事件のすぐ後だ。もしかすると何かの嫌疑をかけられればたまったものではない。
「それでは」
「君、本当に気をつけるのよ。一階層ごとに入口へ戻る転移床があるから、無理だと思ったらすぐに引き返しなさい」
騎士さんは町人の平和を守る優しい人、なのであるなら一緒についてきてほしいぐらいだった。
ダンジョン内部は、洞窟の様相だった。ただ内部の壁はどこか土とは異なる物質である気がする。外の光が届かないはずなのだが、壁の表面が発光しているために見るには困らない。
ダンジョンはいくつもの部屋が繋がっている構造をとっており、通路部分は幾分狭い。大人が二人ほど横に並べるぐらいの広さだ。挟み撃ちにされれば危険かもしれない。というかダンジョンって一人で攻略するものなんだろうか? きっと違う。あの騎士さんの目はそうは言ってなかった。
通路に魔物が入ってくることはない、という良心的なことは期待しないほうがいいだろう。通路に入る時には十分に周りを確認してから入るようにすべきだ。
ダンジョンに入って数分もしないうちに、俺は魔物と遭遇した。フィールドに比べれば圧倒的なまでの遭遇率だ。
ケイブウルフ Lv1
ラウンドウルフとよく似ているが、レベルは低い。向かってくるところを冷静に対応し、一閃する。それだけで相手の身体は炎に包まれて消滅する。薄暗い部屋の内部を、一瞬だけ眩しいほどの明るさが照らした。
アイテムは残っていない。必ずしも残るわけではないようだ。
ふと、自分のミスに気付いた。今日ここに来る前に開拓者ギルドでビーストケイブの情報をちゃんと聞いてくるべきだった。俺はアホか。マッピングをしながら歩くというのは大変極まる。
だが……今さら戻るのはもっと大変である。仕方がない。壁伝いに一方向に進んでいけばいつかは次の階層へといけるだろう。騎士の話ではその時に入口に戻れるらしいから、何かあればそこで戻ればいい。些か軽率な思考かもしれないが、ヴァルの威力は本当に凄まじい。いくら相手のレベルが低いとはいっても、こっちだって低いのだ。本来なら一撃でズバズバ倒せるものではないのだと思うが。
次に遭遇したのは、尖がった耳に緑の服を着た醜悪な小人だった。
ゴブリン Lv1
ゴブリン Lv2
しかも二匹同時である。虚ろな目が不気味に光っており、手には短い棍棒を握っている。あれで殴られればかなり痛そうだ。
少し腰が引けるが、間合いは圧倒的にこちらが優位。獲物の長さが違う。こちらの間合いに入ったゴブリンの手首を上段から勢いよく振り下ろした一撃が跳ね飛ばす。そこから炎の渦が発生してゴブリンの片腕が消失した。手首を斬ったのだが、肩までが一瞬で蒸発してしまったようだ。
呻く相方の怒りを晴らすために、もう一匹のゴブリンが飛びかかってくるが、首を斬り落とすことで迎撃する。勢いよく撒き散らされた血液も、燃え上がった炎とともにすぐにかき消える。残った一匹にも、身体の中央に剣を押し込むことで絶命させた。
後に残ったのは《ゴブリンの牙》だけだ。
「それにしても、強すぎるんじゃ?」
『我の傷が癒えれば、まだこんなものではない。もっとも癒えた時点で契約は終了だがな』
さようで。考えてみればあの巨大なドラゴンがここまで小さく収縮しているのだ。並みの魔物が敵うはずもない。……使い手の俺がしっかりしていればの話だが。




