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第32話 「帰還」

凱旋の翌朝、セレナが8人を呼び出した。


彼女の表情は、いつになく深刻だった。

「皆さん、お話があります」

セレナが古い書物を広げる。

「帰還の方法について、ようやく確実な情報が見つかりました」

「本当!?」

ミナが身を乗り出す。

「はい。でも......」

セレナが言葉を選ぶ。

「皆さんが帰れる場所は、一箇所だけです」

「一箇所?」

ユカが首をかしげる。

「瘴気の源、今は浄化されて泉になっている、あの場所です」

セレナが地図を指差す。

「召喚魔法陣は一方通行。帰還するには、この世界で最も魔力が集中する場所が必要なんです」

「それが、瘴気の源だった場所......」

アオイが理解する。


「実は」

セレナが申し訳なさそうに続ける。

「私、最初から知っていました」

「え?」

8人が驚く。

「帰還するには、瘴気の源を浄化しなければならないことを」

セレナの目から涙が溢れる。

「でも、あまりにも困難で......言い出せなかったんです」

「もし失敗したら、皆さんは永遠にこの世界に留まることになる」

「そんなプレッシャーを、最初からかけたくなかったんです」


ミナがセレナの肩に手を置く。

「セレナ、気にしないで」

「あなたの判断は正しかったわ」

ユカも優しく言う。

「もし最初から知っていたら、きっと怖くて戦えなかったかも」

「でも、一つずつ乗り越えてきたから、最後まで頑張れた」

サキも頷く。

「ということは」

ハルが確認する。

「もう一度、あの泉まで行かないといけないのね」

「はい。そこで帰還の儀式を行います」


セレナが説明する。

「三日の道のりです」

「分かったわ」

ミナが決意する。

「みんなに別れを告げて、出発しましょう」

その日の午後、王城の広場に17人の仲間たちが集まった。

8人が再び旅に出ることを、彼らに伝える。

「もう一度、あの泉まで......」

エルネストが寂しそうに言う。

「はい。そこからじゃないと、帰れないみたいで」

ミナが説明する。

「じゃあ、僕たちも一緒に行きます」

レインが即座に言う。

「最後まで、一緒に」

フローラも頷く。

「でも......」

ミナが言いかけると、エルネストが首を振る。

「当然じゃないですか」

「僕たちは、チームなんですから」

マリアも微笑む。

「最後の最後まで、一緒に行きましょう」


翌朝、25人と セレナは王都を出発した。

国王陛下と市民たちが、城門まで見送りに来てくれた。

「チアダンサーたちよ、君たちのことは永遠に忘れない」

陛下が深く頭を下げる。

「どうか、元の世界でも幸せに」

「ありがとうございました」

ミナが涙を流しながら答える。

馬車が動き出すと、市民たちが一斉に歌い始めた。

それぞれの土地の歌。

労働歌、収穫歌、山の歌、商人の歌、学びの歌、船乗りの歌、国境の歌。

そして王都の聖歌。

別れの歌声が、馬車を見送る。

道中、様々な町や村を通過した。

どこでも、人々が8人に感謝の言葉を伝える。


北部工業地帯では、職人たちが作った記念品を贈ってくれた。

「これを持って帰ってください」

「あなたたちを、忘れません」

東部農業地帯では、農民たちが収穫したばかりの作物を持たせてくれた。

「元の世界で、食べてください」

「この大地の恵みを」

西部、南部、中央部、沿岸部、国境。

全ての地域で、温かい歓送を受けた。


二日目の夜、小さな村で野営した。

焚き火を囲んで、25人とセレナが最後の語らいをする。

「ねえ、みんな」

カノンが切り出す。

「私たち、本当にすごいことをしたのよね」

「ああ」

トーマスが頷く。

「世界を救ったんですから」

「でも、それができたのは」

ミナが仲間たちを見回す。

「みんながいてくれたから」

「一人じゃ、絶対にできなかった」

ユカも続ける。

「25人の絆があったから」

サキが締めくくる。

エルネストが立ち上がる。

「僕、ミナさんたちと出会えて、人生が変わりました」

彼の目には涙が光る。

「勇気、希望、仲間を信じる心」

「全て、教えてもらいました」

マリアも続ける。

「私も同じです」

「この経験は、一生の宝物です」

一人、また一人と、17人全員が想いを語る。

レイン、フローラ、アルト、ニーナ。

それぞれが、8人から学んだことを語る。

そして、これからどう生きていくかを誓う。


「僕たち、チアダンスを広めます」

エルネストが宣言する。

「この世界に、皆さんが教えてくれた絆の力を」

「素晴らしい」

ミナが涙を流す。

「あなたたちなら、きっとできるわ」

セレナも微笑む。

「私も協力します」

「聖魔法の理論と、チアダンスの技術を」

「次の世代に、伝えていきましょう」


三日目の夕方、ついに泉に到着した。

浄化された泉は、美しく輝いている。

周囲には花が咲き乱れ、鳥が歌い、生命に満ちていた。

「ここが、帰還の場所」

セレナが泉の前で説明する。

「儀式は、日没と共に行います」

まだ、少し時間がある。


その間に、25人とセレナは最後の時間を過ごした。

泉のほとりで、円座になって座る。

「セレナ」

ミナが切り出す。

「あなたに、最後に伝えたいことがあるの」

「何でしょうか」

「あなたは、私たちの9人目だった」

ミナの言葉に、全員が頷く。

「異世界に来て、戸惑っていた私たちを」

「導いてくれたのは、あなただった」

ユカが続ける。

「聖魔法の本当の意味を教えてくれた」

サキも感謝を伝える。

「あなたがいなければ、私たちは何もできなかった」

「皆さん......」

セレナが涙を流す。

「私こそ、感謝しています」

「一人で研究室に閉じこもっていた私に」

「本当の仲間を与えてくれた」

「生きる意味を、教えてくれた」


セレナが8人を見回す。

「だから、お願いがあります」

「元の世界でも、この絆を大切にしてください」

「そして、多くの人に伝えてください」

「心を一つにすることの素晴らしさを」


日が沈み始めた。

儀式の時間が来た。


8人は泉の前に立ち、手を繋いだ。


17人とセレナは、少し離れた場所で見守る。


「皆さん、準備はいいですか」

セレナが最後の確認をする。


「はい」

8人が答える。


セレナが呪文を唱え始める。

古い言葉で、帰還を願う術。

泉の水面が、淡く光り始める。

「みんな!」

エルネストが叫ぶ。

「絶対に、忘れません!」

「ありがとうございました!」

マリアも涙を流す。

17人全員が、それぞれの言葉を叫ぶ。

「元の世界でも、頑張ってください!」

「私たちも、ここで頑張ります!」

「また、いつか会えますように!」


8人も叫び返す。

「みんな、本当にありがとう!」

ミナの声。

「絶対に忘れないから!」

ユカとサキの声。

「この絆は永遠よ!」

ハル、アオイ、エマ、リコ、カノンも、それぞれの感謝を叫ぶ。


光が最大になった。

泉から立ち上る光の柱が、8人を包み込む。

「さようなら!」

「ありがとう!」

「また会おうね!」

最後の言葉が響く。


そして、8人の姿が光に消えた。


静寂。


泉に、波紋だけが残る。

17人とセレナは、しばらく泉を見つめていた。

「行ってしまった......」

エルネストが呟く。

「でも」

セレナが前を向く。

「彼女たちの意志は、ここに残っています」

「私たちが、受け継いでいきましょう」

17人が頷く。

「はい」

「彼女たちが蒔いた種を」

「この世界で、大きく育てていきます」


泉の水面に、虹が映った。

それはまるで、8人からの最後のメッセージのようだった。

「ありがとう」

「そして、さようなら」

新しい物語が、この世界で始まろうとしていた――。

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