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慈愛の聖女  作者: クー
第3章 第三回公式イベント~本戦編~
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パンダモンの独白

今回は師匠の軽い過去と想いのエピソードです…

次話から戦闘に戻ります



サフィアーノ達…ビトレイアルと遭遇した辺りまで遡る………




「おいおい…俺達の事を忘れたのか?…パンダモン」


この一言を聞いた瞬間、俺の全細胞が悲鳴をあげた……

何故なら、この声の持ち主は、俺が今まで生きてきた中で最もトラウマを与えられた人物だからだ。





アイツらとの出会いは、第二回公式イベントで俺が運良く7位にランクインした翌日だった……


「君!…昨日の大会では凄かったな!」

「そうそう…あの一撃は凄かったよねー」

「ふふふ…そうね」


「どうも……」


「それで相談だけど、僕達と同じパーティーに入ってくれないかな?」


「えっ?……」



俺は元々ゲームが趣味で、ユーディストオンラインを始める前は様々なVRMMOをやってきて、時にはクランの団長みたいな事もしたりして楽しくやってきた。

前のVRMMOでは痴情のもつれで滅茶苦茶になったこともあり、このゲームでは他人に気を遣わないソロでやっていくことに決めていた。

たまに臨時のパーティーとかに誘われたりして、そこでお節介を焼いてしまった事もあるけど、大きな問題もなく順調に強くなっていった。


だけど、一人でゲームをやってるとふと思ってしまう……

俺は何の為にゲームをしているのかと


俺がゲームに夢中になった切っ掛けは、近所の友達と一緒に遊ぶことで、楽しかったり、悔しかったり、腹が立ったりと沢山の思いを共有する仲間が出来た事だ。


しかし、大人になるにつれて、ネット上の顔も分からない相手と一緒に遊んでもその時は確かに面白いかもしれないが、何か心にぽっかりと穴が空いたように感じてしまうようになった。


その様な気持ちを抱いている時に、痴情のもつれなんかが勃発してしまったので、俺がソロでプレイするのは必然であっただろう……


だけど、やっぱり一人でゲームをやってると空虚な気持ちになることが多く、楽しさを求めてゲームをしている筈なのに、ただの作業を行っているような感じがして苦痛に思う時がある。

現に俺は第二回公式イベントと言う大きなイベントで見事7位に入賞したが、思ったよりも嬉しい気持ちはなかった。

もちろん好成績を収めた事に対して嬉しい気持ちはあった…たが、7位になって何かあるのか?って問われると、俺は答えに窮するだろう……


サフィアーノに誘われた時は、まさにソロでゲームをする楽しさを見出だせなかった時で、ヤツの口車に乗せられてアイツらと固定パーティーを組んだのも仕方なかった。


俺は昔のように信頼できる仲間と一緒に遊びたい一心から、やれることは全部やったと思う。

雑用や指揮はもちろん、アイツらのロールやスキルで有用そうなのを徹底的に調べてアドバイスしたり、効率的な狩り場の調査や他のパーティーとの情報交換、日々掲示板を確認して情報の精度を調べて有用なモノの抽出、金欠で困ってるヤツには金策の伝授やルピを貸したり……アイツらと一緒に笑いあえる様に、本当に色んな事に手を出したなぁ……


それと、俺の関西弁がダサいとネットゲームを始めた頃に言われたから、それ以降標準語で話す様にしていたが、アイツらの前では自分を偽るのを止めようと、封じてた関西弁をいつも通り話したりもした。


まあ、ゲームを本気でやりすぎたせいで、仕事に身が入らなく上司に怒られたりしたけど、その時は過去の情熱を取り戻そうと必死だったので特に気にしなかった。


次第に俺達の名も売れていき、トッププレイヤーの一角に手が届く所まできて、最高の時間だった。

でも、そんな楽しい毎日を過ごしていた俺にあの日がやってくる……


あの日は仕事で遅くなり、慌てて飯屋に行った時、話し声が聞こえてきた……


「てかマジでパンダモンウザイよな」


「分かるー」


「最近特にそう思うわ」


「前なんて、俺っちがステータス見てたら、聞いてもないのにペラペラとあのスキルが良いとか喋りかけてきてホントにウザかったなぁ…まさにウザパンダだね」


「あー俺もそれあったわ…アイツ絶対俺達の事見下してるよな。それに関西弁がめっちゃウザイ」


「ホントそれー」


「あの関西弁どうにかならないかしら?…あれのせいでこっちの言葉まで関西弁になりそうなんだけど」


「確かにな…俺は最近アイツの関西弁聞いてると、顔面殴りたくなってくるんだよな……」


「分かるー俺っちも魔法ぶちこみたくなるもん」


「私は最近アイツへの回復頻度を減らしてるわよ」


「ハハハ、ヒデェなおい…それでアイツ最近死にかけてるのか」


「だって戦闘中のアイツの指示が腹立つから…」


「確かにあの関西弁で指示出されると、偉そうでイラッとするなぁ……最近特にそう思うよ」


「確かになぁ…そういえば、昨日も天空の庭園のボスを倒す前に、行動パターンはどうとか、この場合はこう動くとか…細かい指示してきやがってよぉ…マジで煩かったなぁ」


「ああ、あの昨日ヤツね…それにしてもいつもバカみたいに調べてくるけど、どんだけゲームに本気なのよって思っちゃうわよね」


「所詮ウザパンダだから、ゲームぐらいしかやることないんじゃない?」


「ハハッ…そうかもな」


「それ当たってるかもね…だってあれだけ鬱陶しかったら、彼女とか絶対にいなさそうだもの」


「クロア辛辣ー」


「てか最近アイツ…クロアの事狙ってそうじゃないか?」


「確かに!…俺っち達よりもクロアに教えてる方が距離近いもん!」


「ちょっとやめてよ!…あんなのに好かれてもキモいんだけど…」


「そんな事言って…満更でもないんだろ?」


「ホントにやめてよね!…確かにアイツは私の胸とかお尻とか良く見てくるけど、正直気持ち悪いのよ!」


「あはは…ウザパンダフラれてるじゃん!」


「俺らの大切なパンダモンがいつか通報されるかもな!」


「プッ…大切なって……」


「雑用とかやってくれるから、ある意味大切かもね」


「確かにそうだね」


「そうだな…今後もアイツを上手いこと使って、俺達は楽に強くなってやろうぜ!」


「賛成ー」


「そうね…アイツにはそれぐらいの価値しかないからちゃんと使ってあげないとね」


「それで不要になったらポイするんだよね?」


「その通りよ!」


「ギャハハ…酷い女だぜ!」


「サフィアーノも似たようなもんでしょ」


「そう言えばウザパンダ遅いねー

このままじゃあ、俺っち達がご飯代払わないといけないじゃん……」


「確かに、アイツが来ても鬱陶しいだけだけど、キチンと支払いはやってもらわないとなぁ……」




くそっ!…アイツらが俺の事を疎ましく思ってるのは薄々感ずいてたけど、こんなに嫌われてたのか……

俺はゲームを仲間と一緒に楽しみたいだけなのに……

くそっ!…くそっ…くっそぉぉ……



あの日はどうやってログアウトしたか覚えてない……

ただ、ベッドで翌日まで泣いていた事だけは覚えてる。



翌日俺は吐きそうな気持ちになりながらも、ユーディストオンラインにログインした。

多分アイツらの事を信じたい気持ちが少し残ってたのだろう…そんな一抹の思いを抱えて飯屋に向かうと、昨日とは全然違い笑顔なアイツらがいた。

やっぱり昨日のは悪い夢やったとその時は思って、いつも通り狩りに出掛けたり、ダンジョンクリアを目指したりして、楽しく遊んでいた。


でも、前からも感じてた違和感が昨日を境にどんどん大きくなってきて、一緒に笑いあってるハズなのに、俺とアイツらの気持ちが違う様に感じた。

アイツらとの気持ちのズレは日々大きくなっていき、ある日、決定的にアイツらと分かりあえないと思ったんだ……

あの日は新しいダンジョンを攻略する為に、俺はアイツらにポイントや注意点を熱心に話していた。

だが、話している最中は誰とも目が合わないし、話し終わって攻略に臨んだ時も、俺の言ったポイントや注意点を全く守れてなかった。


この時に確信した…ああアイツらは俺の事を微塵も興味がなく、ただ便利にパシれるヤツぐらいしか思っていないのだと。


俺は溜まっていたもんを全て吐き出すかの様に、今までの想いをアイツらに伝えた。

聞いてたどうかは分からんが、ポーズとして一頻り聞き終えたアイツらは、癇癪起こす様なヤツをこのパーティーに置けないと言って、俺をパーティーから追放した……


それから俺は人という存在が信じられないようになって、仕事は全部自分でやるようになったし、プライベート関係も付き合い始めた彼女とも別れたり、友人と遊びに行くこともなくなった。

勿論ゲームも一切ログインせず、無味乾燥な毎日をただただ過ごしていった……


そんなある日、母親から一本の電話があった。

電話の内容は、よくある近況報告がメインで、俺は当たり障りのない事を言ってたと思う。

だけど、母親は俺の些細な声音に違和感を覚えたんやろうな、何かあったのかを聞いてきた。

流石にゲームであった事をそのまま伝えるのは気恥ずかしいので、婉曲に最近ツラいことがあったと伝えた。

すると母親は一言、"ツラかったら初心を思い出してみなさい!"と電話越しで言った。

更に続けて母親は、今アンタがやってることは知らないけど、それはアンタにとって本当にやりたかった事なの?…それを即答できない様じゃ誤った道を進んでるから全部やめて、また一から始めなさい!と言った


俺はその言葉を受けて暫く呆然として泣いていた。

恐らく母親も俺が泣いているのが分かったのか、暫く何も言わずに時が進み、やがて俺は母親に一言ありがとうと伝え電話を切った。


この電話のお陰でフェリシアちゃん達に会えた事は俺にとってこの上ない幸運やった。

だけど、そのフェリシアちゃん達が俺のせいでピンチに陥っている……

ここで動かないと、俺の大切なモノをまた手放してしまう気がする。

正直アイツらと向き合うのはまだ怖いし嫌だ…でも、フェリシアちゃん達が俺の目の前で傷付く方が何倍も嫌や!


だから俺は立ち上がる…今度こそ本当の仲間になるために……








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