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騒がしい教室

「これは一体なんの騒ぎなんだ?」


「たいへんなことになってるのよ!」


生徒の視線は全て教室の中に注がれていた。


ニアがヒステリックに俺の肩を揺らす。


「学園長と副学園長が拘束されてるのよ!」


「ああ?それはどういう......もういい。見に行ってくる。ゼロはここで待っててくれ」


「...うん」


俺は自分の目で真相を確かめるべく、人混みを掻き分け中へ入る。凄まじい肉の壁は何層にもなっており、中々前には進めない。ニアも俺の後にピッタリとついてきていた。


そしてやっとの事で教室の入口まで来た。そこには見たことがない(恐らく別のクラスを担当している)衛兵二人が生徒が教室に流れ込むのをダムのようにして、塞き止めていた。


「落ち着くまでしばらくここは通せない」


「俺たちはここの教師だ。通してくれてもいいだろ」


「・・・」


衛兵はそこで黙り込んだ。彼らが邪魔で中の様子は見えない。


そして後ろの生徒からの圧のせいで俺たちはどんどん壁に体を押し付けられる。まさに鮨詰め状態だ。


「早く通してくれないか?」


「だめだ。指示があるまでは....」


そこで衛兵の後ろから声がする。


「ああー。教員の方々は通しちゃっていいですよ」


「承知しました。どうぞ。......生徒たちは直ちに後ろに引きない!!」


衛兵の言葉に生徒たちは皆愚痴をこぼす。


俺たちは衛兵達が開けた、人がやっと一人取れるくらいの隙間を無理やりくぐりぬけて中に入った。


そこにはフローラとエリーゼがいた。


そして恐らく魔法が今も使えないはずのガレルの姿はなかった。今頃原因究明に躍起になっているところだろう。


「何事ですか?これは」


「まだ事情知りませんでしたか。これは失敬。各教員には通達を送ったのですが、あなたには届いていませんでしたか」


「ええ、覚えがありません」


「では今説明を.....」


「ねえ!」


エリーゼが言い終える前に遅れてやって来たニアが彼女の話を遮った。


「学園長と副学園長を拘束を今すぐやめてください」


「うーん。残念ながらそれは出来ません」


「拘束.....?」


俺は状況が読み込めず、疑問符を浮かべた。さっきのニアの言葉が頭をぐるぐると回る。


「どうしてですか?」


ニアは食い下がらない。


「それは今彼らには、不正の疑惑がかけらているからです」


「不正の疑惑.......?一体なんのですか!?」


俺はそれを聞いて、一瞬反応しそうになったのを上から押さえつけた。

もしこれがゼロの事だとしたら......。体から血の気が引いていくのを感じる。


「タレコミがありましてね。彼らが何らかの不正をしている、と」


「は.....?何らかのってなんですか!?そんな曖昧な理由で.......。」


「この学園は国から多大な支援を受けていますので、そう言った不健全な動きが少しでもあった場合、見逃す訳にはいかないのです。安心してください、監査が終わって何もなければすぐに解放致します」


「じゃあそれまで誰がここを取り仕切るんですか?」


「安心してください。それは我々が責任をもって致しますよ」


エリーゼはそこでニコリと笑った。ニアはそれを見て青ざめた。


「そんなことって.....」


「それに新しい担任候補も既に決まっています」


「誰ですか、それは....」


「ここにいるフローラさんと今は一時休養中のガレルさんです」


「あはは。どーも、フローラと申します。これからよろしくお願いしますね?副担任さん」


そう言ってフローラは人懐っこい笑顔を浮かべて、俺とニアに握手をしてきた。

この女はとにかく人との距離が近く、自然とこっちが体を引いてしまう。


「ガレルさんもしばらくしたら復帰しますのでご安心を。授業や試験については追って連絡致します。それでは私はこの学園の七面倒臭い理事がありますので、これで失礼しますね」


「ちょ、ちょっと....!?」


エリーゼは俺たちの話を聞こうともせず、そのまま教室を出ていってしまった。


唖然とする俺とニア。


そこでエリーゼから指示が出たのか、教室にはせき止められていた生徒が一気に教室に流れ込んできた。それにより静かだった教室が途端に騒がしくなる。


よく見ると黒板には、さっきエリーゼが話した内容が書かれた紙が貼ってあった。


《授業及び試験内容と担任変更のお知らせ》


話の中にゼロのことは出てこなかった。本当は不正などどうでも良く、それよりも奴らは学園に干渉するのが目的だったのかもしれない。だとすれば、ゼロのことはバレていない.....?いやまだ安心するのは早いか....。


入ってきた生徒の中には、不安げな表情を浮かべるゼロと沈んだ様子のニーナがいた。


もし仮にゼロに危険が及ぶようなことがあれば、この学園を出なければならないかもしれない。


授業開始のチャイムが鳴るも生徒たちはさえずり続ける。


それは学園の秩序がたった今崩壊したことを告げる鐘の音だったのかもしれない。

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