飛び交う秘密
「それでどこへ行ってたの?」
「それはだな....」
ニアは俺の顔を覗き込みながら、そう質問する。
よく見るとニアの後ろにニーナが気まづそうな顔をしながら、隠れていた。
きっとニーナにも俺の事を聞いたのだろう。
「ギル先生もアルフ先生も突然いなくなっちゃうし.......心配したんだから」
そう言えばニアだけは今回の出張に呼ばれるどころか、概要すら知らなかったな。
なぜ、俺が呼ばれてニアが呼ばれないのか。俺はずっと疑問を抱いてた。
力は俺と同等かそれ以上のはずなんだがな。
「まあ、その......他の学園と共同の集まりがあっただけだ。別に大したことじゃない。ギルのことについては俺もわからない」
「そうなの....?」
ニアはなんとなく、腑に落ちないという顔をしていたが元の快活な表情に戻った。
ニアにも今度ゼロを紹介しないとな。まだ入学してないから今な時点じゃ魔法は解けないが。
「とりあえず、俺はこれからまた行かなきゃならない所があるからここで」
「わかった。授業は.....?」
「どうせ、俺達にはやらせてくれないだろ」
「そう......ね」
ニアは少し残念そうな顔をした。
ただ副学園長相手じゃ恐らくどうにもならないだろう。
「まあクラスには顔を出すよ。ニーナもこのまま授業を受けてこい」
「わかった」
「えー。先生は行かないのに私だけ行くんですか?それって不公平じゃないですかねぇ?」
「お前はここの生徒だろうが。俺は別に用があるんだよ」
「ニーナさん、最近授業サボり気味だったわよね?」
「うッ.....」
ニーナはあからさまにギクリという表情をした。
「そうなのか?」
「それは.......その腹痛で.....」
ニーナの目が泳ぐ。
「この前なんて一限だけ顔を出して授業が終わる前に早退したことだってあったじゃない。少し前まではそんなこと一切なかったのに」
「少し前まで.....?それは具体的にいつ頃からだ?」
「そうね......。ちょうどアルフ先生がいなくなったあたりから.....んぐぅ!?」
突然、ニーナがニアの口を物理的に押さえつけた。
「それ以上はいけませんよ。ニア先生」
その瞬間、ニーナが何かを囁いた。するとニアは急に顔を青くして黙り込んだ。
「どうしたんだ、急に」
「・・・」
「乙女同士の秘密です♡」
ニーナとニアの表情は対照的だった。それがなんとも言えない不気味さを演出していた。
「先生、この後は用事があるんですよね?」
「ああ、そうだけど」
「なら急いだ方がいいのでは?」
今度、ニーナの無言の圧力みたいなものが放たれる。
「わ、わかった」
俺はそこでニアとニーナと一旦別れ、そのまま目的の場所まで向かった。
人気のないひんやりとした廊下。
古びた扉に塗装が禿げた壁。
それがどこか懐かしかった。
俺は静かにゼロの魔法を解いた。
「レーネはそのままで」
「わかりました」
レーネがここにいたら不自然だからだ。
俺は恐る恐る扉を開く。中にはきっと白衣姿のあいつがいるはずだ。




