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陥れられた者達

尖った目元。


男は銀色の視線を私達に向けていた。


確かこの男.......アルフの同僚でウルドに気に入られていた....ギルだったけ?


ということはこいつもウルド派閥の人間...?


先に言葉を発したのはエメだった。


「なにしに来たんだよ。このまま、ウルドにチクリにでも行くのか?あぁ?」


エメは相手を睨みつけ、威嚇するような声を発したがギルは全く動じない。


それどころか笑みを浮かべる余裕さえ見せた。


まあこちらは檻の中。力関係には差がある。


「そんな目をしてくるのはアルフ先生くらいでしたよ」


するとギルは突然、檻の扉を開け始めた。


「「!?」」


やがて、ガチャリという音と共に扉が開く。


「はい、どうぞ」


「どうして........あんた、ウルド側の人間じゃ......」


「私は別に彼についたわけではありませんので」


「犯罪者の幇助は重罪なのよ......?」


「あなた方は犯罪者なんですか?」


「それは.......」


私達は犯罪を犯していていない、けどここでは弱者が悪を背負うしかない。


この状況を作りあげたウルドが正義、陥れられた私達が悪。


私は黙ることしか出来なかった。


「あなた方が勝てば、私も犯罪者ではなくなるはずですよね」


「・・・・・」


こいつの意図がわからない。


なんのために、こんなこと。


ギルは私の反応を見て、少し遠い目をした。


「あなたの班で前線で共に戦っていた女教師二名を覚えていますよね」


リーフィとジル


脳内に映像がフラッシュバックして数歩後ろに後退してしまう。


「その内の一人、ジルは私の妹です」


「!?」


ジルからそんな話は聞いたことがなかった。


「彼女は今、リーフィさんが治療されている隣で震えを止めらずにうずくまっています」


当然だろう。彼女はリーフィの身に起きた惨状を隣で見ていたのだから。


「彼女はもう今後一生魔法は使えないでしょう」


「どうして......?」


「魔法を使おうとする度に脳裏にあの映像が浮かびパニックに陥ってしまんですよ。戦争に駆り出される魔法使いにはよくあることですけどね」


淡々と他人事のように話し続けるギルを見て私は聞かずにいられなかった。


「あなたはそれを聞いて何とも思わないんですか?」


「何とも、思わないだと?」


ギルの目の色が変わり、私は呼吸が出来なくなっていた。


首元にはギルの手が食い込み、自分の力ではどうにも出来なかった。


「ぐ........っ!」


すかさずエメが動き、ギルの手を無理やり引き剥がす。


「サラには手を出すなよ、落ち着いて喋れ」


私は手が離れたと同時に呼吸を速め、咳き込んだ。


呼吸を落ち着けながら、私は再度ギルを見る。


そこには先程までとは違う、まるで下等な動物を見るかのような目で私の眼を覗き込んでいるギルがいた。


「随分と様子が変わるな、先生」


エメは煽るようにギルに近づく。


「あんたは学園じゃ有名な女嫌いじゃないの?」


「私は下等な魔女が嫌いなだけだ。全ての魔女を嫌っているわけではない。その点、ジルは優秀な魔女だった。なのに........」


ギルはそこで言葉を詰まらせる。


「ジルは昇進のためだけにこんな危険な任務を背負った、いや背負わなければならなかった。そうさせたこの国が今は憎い」


ギルの意志のこもった言葉は私たちを納得させる力があった。


「私はあなた方が正義であることにかけます。そして万が一、あなた方が悪であったなら.....」


「悪だったら?」


「その時は私がお前らを全員殺してやる」


ギルの目は本気だった。


「わかったわ、ここの全ての檻を開けなさい。革命を起こしてやるわよ、奴らにね」


久しく忘れていた闘志が湧き上がってくる。


そんな私の隣でエメは準備運動のように指の関節を鳴らした。



◇ ◇ ◇


「..............。」


私は絶望していた



頭の中が漂白されていく。



私は絶望していた


呼吸を忘れるほど、そして酸素が足りなくなって体が激しく求めるまでずっと呼吸を忘れていたのだ。


呼吸が荒くなる。


吐き気もする。


涙も止まらない。


心臓の音しか、聞こえなくなる。


涙を零す。


外は雨が降っていた。


私の気持ちを代弁するかのように、また暗示するかように。


「なんでここ濡れてるんだ、雨漏りでもしてるのか」


「かもな、外は雨がひどいからな」


魔法で私の姿が見えていないものたちの会話が雨音と共に耳に流れ込んでくる。


私は震える手でご主人様の青白い頬に触れる。


生気が感じられない冷たい皮膚の感触しか掴めない。


声にならない声が水っぽく口から零れていく。


今度は何度も甘え、握ってきた手に触れてみる。


やはり、何も感じられない。


まるでビニールみたいだった。


私は嗚咽することしか出来なかった。


こんな時、いつも涙拭ってくれていた手はもう動かない。


ご主人様の手の感覚はもう残っていないのだ。


あるのはビニール質の皮膚と角張った骨の感触。


そこにご主人様を見いだせなかった。


それどころか、その肉塊をご主人様だと認めるのことさえ今は出来なかった。


私の脳は認めることを拒否したのたのだ。


そんな中、また男達が後ろで話しているのを耳にする。


「ここだけの話だが今回の崩落事件、ウルド様が一枚かんでいるらしいぜ」


「ああ、だからダイス上官や周りの連中が反逆罪扱いなんだろ」


「それで檻にぶち込まれるなんてたまったもんじゃないな」


ウルド.....?


その名前を私は指示書で目にしていた。


この作戦の代理指揮官......


その瞬間、扉が開く音がし男達が整列した。


「ウ、ウルド様!」

「なぜこんなところに?」


「いや、少し調べたいことがあってね。その関係で少し席を外してもらえないかな。それに君らに任せたい仕事もある」


「「はい!なんでしょうか」」


「崩落現場の深層部に調査しに行った部下の一人が帰ってこないんだ。至急、捜索に行ってくれたまえ」


「「了解しました!!」」


私は目の瞳孔がみるみる広がっていくのを感じた。


こいつが.............ご主人様をッ!!!



私の中の果てしなき絶望は枯れることのない憎しみへと変わった。

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