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飼い猫と戯れるのは大切

俺は自室で黙々と作業をする。


あれから、俺は数日間の謹慎処分を受けていた。


理由はあれだけのことをしておいて、何も制裁が下らなかったら色々と問題が生じるからだ。


それにしても........。


「ギルから回ってきた答案の丸つけとか地味だし、きついしでいいことが何もないなあ」


俺はぐっと後に伸びをしチラリと左を見る。


俺の肩に頭をくっつけ寄りかかりながら上目遣いでこちらをじっと見つめるレーネ。


「何でしょうか?」


「いや、何でしょうかって.....いい加減寄りかかるのやめてもらえませんかね...」


「承知しました」


そう言ってレーネは乗せていた頭をどかしたが、次は腕を絡めてさらにくっついてくる。


「........余計やりにくいわ!!」


しかもレーネの体温がより伝わってきて色々とやばいし......。


あの一件の後から、レーネのスキンシップが激しくなっているような気がする。


特にこういう在宅勤務の時は何かしらのアクションを起こさないと気が済まないらしい。


「ご主人様...?」


「?」


俺の目を奥の方まで見るかのごとく、じっと目を合わせる。


レーネの少し青みがかった瞳はいつ見ても綺麗だ。


「今回、私は全力でご主人様に貢献してきたつもりです」


「お、おう」


確かにあの時のレーネの貢献度はかなりのものだった。


しかし急になぜそれを.....。


「それに対するは特別報酬などがあっても良いかと......」


「特別報酬って..........例えばどんな?」


あんまり高価なものとか買えないんだけど。


「いえいえ、そんな大層なものではありません。ただ全身を撫でていただければ十分です」


「全身を........だと?」


「はい。何か問題が?」


キョトンと首を傾げるレーネ。


「いや、頭とかだったらいいけど、流石に全身は........色々と問題があるだろ」


「なぜです?ついこの間だってその辺の野良猫をぐちゃぐちゃに愛撫していたではないですか」


「おい!!!!言い方ってもんがあんだろォ!」


まあ確かにレーネが人間の姿になる前では満更でもなくやっていたが....。


俺はレーネを体を一瞥する。


凹凸はないものの、綺麗に整った体つきに顔立ち。


まだ、胸部に膨らみがないからいいものの....。


「今すごく失礼なことを考えましたよね?」


「いや!?別に!?」


やっぱり怖いよ、このメイド...。


猫を撫でる。


この行為は何の問題もない。


しかし、姿形が変わるとなると話は別だ。


「それとも、野良猫は可愛がれても飼い猫は可愛がれないのですか?」


「え......それは...」


「私は今深い悲しみに襲われています。一万年と二千年前から愛していたというこに......」


「いや、お前生まれたの10年前くらいだろうが」


「そんなことはどうでもいいのです。.....仕方がありません。かなり譲歩して頭を撫でる、というのはどうですか?」


「まあそれくらいなら........」


その程度なら別段問題はなさそうだ。


俺がレーネの頭に手を持っていこうとすると、レーネはおもむろに俺の上に跨ってくる。


すると太ももにレーネの体がモロに触れる。


「おい」


「何でしょうか」


「だから何でしょうか、じゃねーよ!!!」


「譲歩したのですから、これぐらいは当然ではないでしょうか。それとも、全身を撫でてくださいますか?」


「....ッ!」


ならしょうがない、のか.....?。


なんかやり方が悪徳商法と似ている気がするが....。


そう思いつつも俺は渋々、了承する。


レーネは俺の胸のあたりに頬をつけ、身を任せるように寄りかかってくる。


「私は変温動物ですので、体温が必要なのです」


「猫は恒温動物だろうが」




「「.......。」」


少しの間、沈黙が流れる。


やばい、めちゃくちゃドキドキする。


俺はレーネの頭にたじろぎながら、手を置いた。


柔らかな髪の毛の感触が伝わってくる。


何だろうか、この謎のフィット感。


俺は無意識のうち、レーネの背中に手を移動させていた。


思えば、ここに来てからレーネに頼りっきりだったな.......。


「レーネ、いつもありがとな。.....お前が居てくれると本当に助かるよ」


「..........ッ」


レーネの体が一瞬跳ねる。


「ん?どうした」


「.........にゃんでもないです」


「は?」


「何でもないです!!!」


「!?」


なんで突然大声になるんだよ....。


レーネは顔を俺の胸にぐりぐりと埋めた。


表情は伺えないが、耳は赤い。


急に恥ずかしくなってきたのだろうか。


俺もそれを見て、我に返り赤面する。


それからも俺はレーネの背中や頭を撫で続けた。


レーネもそれに同調するようにゴロゴロと喉を鳴らす。


喉がなってしまうのは大抵機嫌がいい時で自分ではどうにも出来ないらしい。


やがてレーネはゆっくりと顔を上げ、何か言いたげな表情をした。


その顔は少し微睡んでいるようで、目はとろんとしていた。


「?」


「...........ご主人様、私やっぱりもう我慢ができません!!私と....」



すると突然、鉄が軋むような凄まじい音が玄関から響き渡った。


「何の音だ!?」


玄関の扉からか!?


俺はその音に釣られ、レーネの声を聞き落す。


その音は数回響いた後、ついに玄関の扉自体が跳ね飛ばされてこちら側の壁に当たった。


扉は拳の形にボコボコになっていた。


「邪魔するわよ~」


やはり、あいつか...........。


「今日はあんたに用があって来たんだけど..........ってあんたたち、何やってんのよ!?!?」


光を帯びるかのような見事な金髪に、正義を象徴する赤い瞳。


間違いない。


「おい、サラァァ!!!何やってんだよ!!!」


「あんたこそな、な、なにやってんのよ!!そんな女の子とくっついたりなんかして.....!」


「これは違うというかなんというか......ってんなことよりのなんて入り方して来てんだよ!!!」


「いやだってあんたの部屋に入ろうと思ったんだけど」


「おう」


「鍵なんて持ってないし、インターホン押すのも面倒だったから.....」


「おう」


「ぶち抜いて来たわ☆」


「お前は脳みそまで筋肉で出来てんのか!?」


「ハァ!?乙女に向かって言うことじゃないでしょうがァァァァァ!!!!」


サラは顔を真っ赤にして反論してくる。


「どこの世界に鉄の扉破壊して入ってくる乙女がいるんだよ!!!いっぺんお前の中の常識を革命してこい!!」


そんなテロリストが立て篭もってるわけじゃあるまいし.......やはり一般常識を逸脱してやがる。


しかもこの部屋、学園から借りてるものなんだけど........。


絶対、弁償代そっちの経費から落とさせてやる。


その後、ぐちゃぐちゃになった鉄の扉を片付け、サラに状況説明をした後リビングのテーブルに座らせた。



















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