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どこまでも続く階段

「これが.....?」


「はい、この階段を降ります。しばらくすると閉まるので早いとこ中に入りましょう」


「ああ」


階段があるのは分かるが、その奥がどうなっているかは暗すぎて分からない。それが言いようのない不気味さを演出していた。


「本当に入っても大丈夫なのよね....?」


「大丈夫、なはずです......」


「はず....?」


「何せ私も入ること自体は初めてですから...」


ニアは不安からか、その表情を曇らせていた。かくいう俺も少し怖かった。俺の中もステンノも反応するかのように背中の皮膚が微かに痙攣していた。


魔法で光源を用意し、その階段をひとつずつ慎重に降りていく。


俺たちの足音が下へと反響する。階段を少し降りた段階で扉は勝手に閉まり、光がなければ今頃真っ暗になっていただろう。


階段は螺旋状になっていて、どこまで続いているように感じられる。


「結構深いわね....」


「そうだな.....」


無機質な石レンガ造りの壁を伝いながらゆっくりと進む。 壁や階段自体にはかなり年季が入っているようだった。


やがてその階段の終わりに差し掛かり、その先に重々しい金属の扉が見えた。見たところ魔方陣などの特殊な仕掛けもなさそうだったので、俺はその取っ手部分に恐る恐る手をかけた。


「開けるぞ....?」


「はい」

「ええ」


地面と扉とが擦れる音を響かせながら、扉をゆっくりと開ける。すると勝手に光が奥まで灯っていく。どうやらこの部屋には階段と違って光源が備え付けられているようだ。そしてそこには円状に広がった部屋があり、真ん中の台座のようなものの上には巨大な何かが置いてあった。


それは一見してただの水晶玉のようだったが、この球体が持っている魔力量や威圧感からすぐにこれが巨大な魔道具であることに気づく。


よく見るとその水晶玉の中は黒く濁っていた。これが恐らく前にステンノが言っていた純粋な魔力なのだろう。

『疼いちゃうね、こうも膨大で純粋な魔力を見ると....』

頭の中にステンノの声が響く。


魔道具の中の魔力はふわふわと膨張と収縮を絶えず繰り返していた。その様子からこの魔道具が今も尚、起動し続けていることが分かる。


「これは一体なんのための魔道具なんだ....?」

隣を見ると、ニアとニーナが口を開けてただ呆然とその魔道具を見つめていた。


「なんのためのってそれは.....」


「アルフ先生は知らないの?」


「何がだ?」


「この学園の結界のこと」


「ああ、確かそんなようなことを前にも聞いたな....」


確かここへ来てまもない頃に俺が一回壊したやつか。


「ってまさか.......」


「はい、恐らくこれがその結界を維持している魔道具かと.....」


「それって俺たちが見たらまずいものじゃないのか.....?」


「そうですね......。......まあ私は先生方のことはある程度信用していますし大丈夫だとは思いますけど....」


「このことは他言無用ってことね....」


「はい、それでお願いします」


俺とニアが同時に息を呑んだのがお互いにわかった。この魔道具は学園を守る上で欠かせないものだろう。結界を破壊されるだけならまだしも、もしこの存在が悪意ある者に知れ、魔道具自体が破壊されたりすればこの学園は危険にさらされる事になる。いや悪用される可能性も十分にあるのだ。


そう言えばリンはこの魔道具の存在を最初から知っていたのだろうか?いやそもそもこの部屋の存在自体知っていたのか?


あのなんとも言えないリンの表情が脳裏にチラつく。


いや今はそれよりこの部屋をもっと調べることが先か。


「とりあえずこの部屋を調べるか」


「そうね......他にも何かわかるかもしれないし」


その後、俺たちは魔道具の周辺や壁などをくまなく調べていった。


壁には魔力を集めるための魔法陣が描かれていたが、それ以外は何も無かった。その事からこの部屋は魔道具の為だけの部屋だと分かった。


そして驚いたことに魔道具の動力源である魔力は時間が経つ事に増えていた。恐らく地上の人間(主に生徒)からこの魔道具が少しずつ魔力を吸収しているのだろう。だからこの学園の結界は常に維持され、術者はその規模によりかなりの量の魔力を消費するにも関わらず、魔力欠乏症にはならない。


ある程度調べ終えた後、俺たちはこの部屋を出た。そしてそれと同時に、もしかしたらこの隠し部屋に学園長がいるかもしれないという俺の淡い期待も潰えたのだった。





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