第50話
進達がその足で踏み入ったのは遊園地。
老若男女様々な人が行き交い、
色々なアトラクションを楽しみ、
夢のような時間を過ごす場所。
そこに四人は遊びに来ていた。
「それにしてもタダ券なんてよく手に入ったな」
先ほど絡めた腕は流石に解いてはいたが、
しっかりと握りしめられた手で
先へ先へとと引っ張る桜へと投げかける。
「そこは人徳ってやつだよー」
「違うでしょ、雫先輩のおかげ、だよ」
どこか不機嫌そうな五月が桜へと釘を刺す。
それに続くように紗英が続く、
いつの間にか進の横に付き歩幅を合わせながら。
「私達が最近一緒に遊んでいない事を聞いて気を遣ってくれたんです」
「へー高田がねー」
ふと視線を上げながら雫の顔を思い浮かべる進。
……なぜか楓のような悪い顔でほくそ笑む姿が浮かび
失笑してしまう。
それをまためざとく桜が見つけ進をからかう。
「あー進にぃー雫先輩にその顔報告しておくねー」
「待て待て、少し話し合おうか」
ニヤニヤしながら話す桜へ進が真顔でそれを止めようとする。
そんな二人を楽しそうに眺めながら一緒に歩く紗英。
とても和やかな時間と空間がそこにはあった。
それを証明するかのようにワイワイと会話が進んでいる三人、
みな笑顔でポンポンと言葉が弾んでいる。
その様子をどこか遠くから見守るように
少し離れた位置から後をついていく五月。
普段の五月ならすぐに混じっても可笑しくないのに、
それをしなかった。
否、出来なかった。
それは五月の心にざわつきがあったから。
桜と紗英が楽しそうにしている事に安心していると同時に
進と仲良くしている事にどこか怒りにも似た感情が芽生えていた。
それは昨日、自ら一度否定した感情。
暫くは芽生えないと思っていたのに、
「さっきの、せいかな」
小さく言葉を溢し視線を落とす五月。
遊園地独特の舗装されたタイルが目に入る。
キレイに並べられ、清掃も行き届いていたので
タイルの上はとても歩き易く、とても重苦しい。
一歩踏み出す度に足に枷がかかるようで
少しずつ三人から距離を置くように誘導されるようで、
「五月さん、大丈夫?」
「ふぇっ!はっ、いっ?!」
唐突に上から声が降りてきた。
それに導かれるように視線を上げた先には進の顔があり、
驚きで停まらなかった身体はそのまま進へと突進していた。
だが、その事も進には予想通りだったのだろうか、
まるで包み込むようにふわりと五月の身体を受け止め、
「っ!!」
瞬時に進の顔が赤くなる。
それを合図にすぐさま五月の肩を掴み
グイっと五月の身体を遠ざける。
「ちょ、調子が悪いならどこかでやすっ!」
「あ、いえ……大丈夫、です……」
語尾が裏返りながら途中で言葉が途切れる進と
また視線を落とす五月。
そして二人してその場に固まってしまった。
そんな様子を遠巻きに眺めている桜と紗英は
複雑そうな顔をしながら
「進さん、噛んじゃって可愛い」
「まったく進にぃも五月も……」
紗英と桜はそれぞれの感想を述べながら
顔を見合わせ五月達の元へと足を運ぶ。
様々な思いを乗せた四人の『今日』は
今これから始まるのだった。
こんばんわ、作者です。
50話まできました。
そして気づけばこの小説も1年を迎えます。
2017年内終了とか言ってたとは思えない長さになっております(笑)
終わらす気は作者にあるのか、あります(笑)
なので最後までお付き合い頂けると幸いです。
ここまでお読み頂きありがとうございます。




