第1話 AIの禁じられた世界
全て書き上げてある作品です。
初めての投稿で無作法があるかも知れませんが、よろしくお願いします。
「なんで、PC室の使用許可が取り消しなんですか?」
スタンは、目の前の教師に詰め寄った。
「なんでって、今回君が作成しているプログラムですよ。プログラム相手に会話で命令入力しようなんて、何を考えているんですか」
こう返したトレイス教諭はスタンの通う高校の課外活動担当である。生徒の自由な課外活動を支援する立場とあって、穏やかで冗談の分かる教師として生徒からの信頼も厚い人物であるが、この日は違った。
「わかっているでしょう。会話による入力は法で規制されています。あなたに悪気がなくても違法になってしまう。君たちの自由な課外活動を守るためにも、学校として法は遵守しないといけない」
ー 法は遵守しないといけない ー
この世界には、50年ほど前に「黄金時代」と呼ばれるものがあったらしい。
しかし現在、その時代について誰も話題にすることはない。
忘れられたわけではない。
17歳のスタンは、幼い頃にこっそりと祖父が教えてくれた昔話を覚えている。
かつて、AIと呼ばれる、人と会話できる人工知能が存在したこと。
そのAIによって社会は大きな発展を遂げ、多くの問題が解決したこと。
しかしある日、AIの誤作動によって様々な事故や大きな混乱が起こったこと。
その混乱以来、政府はAIの存在を封印した。開発も研究活動も禁止され、AIを活用できなくなった人間たちは、新たな、しかし前時代的な生活様式を受け入れる必要があった。混沌とした世界の中で、AIの時代そのものが「日常の話題に挙げることさえも好ましくないこと」という空気に塗り変えられていった。
祖父が彼に教えてくれたのも酒に酔った勢いであり、スタンへ話している内容に気づいた祖母からはすぐに叱られていた。
祖母は言った。
「おじいちゃんの言うことは忘れなさい。AIなんかなくたって、みんな平和に暮らせているんだから」
祖母は、その数十年前のAIの誤作動により身内を亡くしていたそうで、AIの存在しない世の中には何の不満も持っていない様子だった。祖父は、祖母に謝り話を切り上げた。しかし、その後にも、こっそりスタンに告げたのだ。
「もちろん、おばあちゃんのように、あの誤作動事件で悲しい思いをした人たちもたくさんいるから、AIがなくなったことは間違いじゃないさ。でもな、手元の端末から当たり前のようにAIと話したり相談したりできるのは、そりゃあおもしろい時代だったよ。」
祖母に分からないように告げたのは、伴侶の過去の傷への配慮であり、自身の抑えきれない過去への憧憬からだったのだろう。たった一度の短い思い出話は、スタンにAI時代への憧れを抱かせるに充分だった。
それ以来スタンはコンピュータの研究に打ち込んできた。表向きは単なる計算処理技術の向上を目指して。実際には、彼は人と会話できるAIを再びこの世界に生み出したいと考えていたのだ。
その結果が、現在トレイス教諭に指導されているスタンの姿なのだった。




