日記11
旗振り
あちこち面接を受けて、やっと見つけた仕事が交通誘導の旗振りだった。
危険な仕事なのに給料がやってられないぐらいひどい物だった。
給料の低さと、毎日の危険な仕事でやる気が全く出なかった。
「お前、元自衛官なんだって?」
不意に声を掛けてきた、メガネの言葉遣いが乱暴な男性の先輩。
その先輩と自衛隊の話をした、かなり嫌な思い出を先輩に語り、私が自衛隊が大嫌いだという事も伝えた。
「俺も元自なんだけどさ、良いコーヒー飲ませてくれる所があるんだけど、ちょっと今度の土曜日付き合ってくれねえか?」
こいつホモかな?などと思いながらも、仕事が不規則で時間だけは持て余していて暇だったので、コーヒーをタダで飲ませるという話に付き合う事にした。
土曜日
自衛隊広報所前
「なんですかここは!帰ります!耳か頭が悪いんじゃないのか!騙したなこのホモメガネ!ド畜生!」
私は自衛隊関係の施設にイライラしていた。
「良いリアクションだがちょっと待てって。マジで良いコーヒーなんだから!」
旗振りメガネの先輩が食い下がった。
そんなやりとりをしていたら「おお、そいつが言ってた例の奴か。」と緑色の制服を着た随分と上着の重たそうな、バッヂを大量に付けた自衛官が出迎えた。
「まあまあ、怒るなよ。事情は大体聞いてる。中に入ってコーヒーでも飲みなよ。冷房も効いてるぜ。」
2尉のバッヂを付けた40代ぐらいの男性が、そう発言するとタバコを咥えてに火を点けて、紫煙を吐きながら私と少々話しをし、しぶしぶと私は誘われてメガネ先輩と、自衛隊広報科の施設に入った。
次の年の春。
何故かまた自衛隊の列に私は立っていた。
「自衛隊の報酬がかなり良い。」
「あれから10年も経ったのだから、当時のクソみたいな連中はもう居ない。」
私の新しい自衛隊が始まった。
年間30日の即応予備自衛官。
それが私の新しい居場所だった。
そして彼女が成人して看護師になった。
私は彼女の住んでいる街へ引っ越すために、メガネ先輩の会社を辞めて、1人暮らしの彼女の家へ転がり込み、彼女の家の近くの旗振りの会社へ入り仕事を始めた。
即応予備自衛官と旗振り。
それが私の仕事になった。
それからの生活で、私は彼女が出す料理で、どんどん太って行った。
2017.7.29 土曜日 平成29年




