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20XXの人間失格者  作者: 来栖総一郎
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手帳4-2

再会(さいかい)と拒絶(きょぜつ)

「大介(だいすけ)じゃない。久(ひさ)しぶり!」

入学式(にゅうがくしき)が終(お)わり、不意(ふい)に声(こえ)を掛(か)けてきた女子(じょし)生徒(せいと)が、私(わたし)の前(まえ)にいた。


「ええと、誰(だれ)、かな?」

本当(ほんとう)に分(わ)からなかった。

今(いま)考(かんが)えるとかなり失礼(しつれい)な、ひどい言(い)い草(ぐさ)だった。

久(ひさ)しぶりと声(こえ)を掛(か)けてくれているのに、分(わ)からない事(こと)を正直(しょうじき)に話(はな)してしまう自分(じぶん)に、もうちょっと気(き)の利(き)いた言葉(ことば)は無(な)かったのか、などと考(かんが)えると後悔(こうかい)がある。


「ええ、ひどいなあ。でも仕方(しかた)ないか。あれから成長(せいちょう)して、全(まった)く見(み)た目(め)が変(か)わったからね。」

彼女(かのじょ)は困(こま)ったような顔(かお)をしたり、ケタケタと笑(わら)ったりと、表情(ひょうじょう)豊(ゆた)かだったのを覚(おぼ)えている。


「幼稚園(ようちえん)と小学校(しょうがっこう)が一緒(いっしょ)で、近所(きんじょ)に住(す)んでいた私(わたし)だよ。」

その言葉(ことば)で思(おも)い出(だ)した。

一緒(いっしょ)に桃色(ももいろ)のゴム鞠(まり)を見(み)た彼女(かのじょ)。

急(きゅう)に引(ひ)っ越(こ)して居(い)なくなった彼女(かのじょ)。

私(わたし)を覚(おぼ)えていてくれた。


「そう言(い)えばあのボール、まだ見(み)えるの?私(わたし)は見(み)えなくなっちゃった。」

馴(な)れ馴(な)れしく言葉(ことば)を続(つづ)ける彼女(かのじょ)、そんな彼女(かのじょ)を見(み)てぎょっとした。


蛇(へび)のように黒(くろ)い影(かげ)が、モヤのようなそれが、彼女(かのじょ)にまとわりついていた。


「ごめん、覚(おぼ)えてない、知(し)らない、見(み)えない、声(こえ)を掛(か)けないでくれ。お願(ねが)いだ。」

今(いま)思(おも)うと最低(さいてい)だった。

もっと優(やさ)しい言葉(ことば)の言(い)い方(かた)があっただろうと。


ただ彼女(かのじょ)には何(なに)か、私(わたし)が近寄(ちかよ)ってはならない、そんな雰囲気(ふんいき)を感(かん)じていた。

彼女(かのじょ)にまとわりつく、モヤのような黒(くろ)い蛇(へび)の影(かげ)。


それが私(わたし)が「彼女(かのじょ)を拒絶(きょぜつ)する理由(りゆう)」になってしまった。


「そう。…ざんねん。」

彼女(かのじょ)は大事(だいじ)な何(なに)かを無(な)くしてしまったような、本当(ほんとう)に残念(ざんねん)だという言葉(ことば)と表情(ひょうじょう)をして、それから一切(いっさい)私(わたし)と話(はなし)をしなかった。


彼女(かのじょ)それから彼氏(かれし)を作(つく)り、一年生(いちねんせい)の秋(あき)頃(ごろ)に不純(ふじゅん)異性(いせい)交遊(こうゆう)の校則(いはん)違反で退学(たいがく)になった。


彼女(かのじょ)がそれから、どうやって生活(せいかつ)しているのかは、今(いま)の私(わたし)にはわからない。


ただあの時(とき)もっと優(やさ)しい言葉(ことば)を知(し)っていたら、「彼女(かのじょ)の人生(じんせい)はもっと良(よ)い物(もの)になったのかもしれない」などと、傲慢(ごうまん)な考(かんが)えに至(いた)るのだ。

2017.7.28 金曜日 平成29年

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