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20XXの人間失格者  作者: 来栖総一郎
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手帳2-14

チートの代償(だいしょう)

引(ひ)っ越(こ)す前(まえ)の話(はなし)だ。


私(わたし)は学習(がくしゅう)塾(じゅく)へ通(かよ)っていた。

クラスメイトたちが学習(がくしゅう)塾(じゅく)へ通(かよ)い、テストで良(よ)い点数(てんすう)を取(と)っている事(こと)が、今(いま)で言(い)うチートを私(わたし)もしてみたくなって、両親(りょうしん)にお願(ねが)いして通(かよ)うことになったのだ。


同(おなじ)じく空手(からて)の稽古(けいこ)も募集(ぼしゅう)していたので、空手(からて)を覚(おぼ)えたら、少(すく)なくとも「暴力(ぼうりょく)に対抗(たいこう)出来(でき)る力(ちから)が得(え)られる」、と思(おも)って両親(りょうしん)に「もう暴力(ぼうりょく)を弟(おとうと)たちに使(つか)わないから」と、土下座(どげざ)して頼(たの)んだ。


少(すく)なくとも、塾(じゅく)と空手(からて)の稽古(けいこ)へ通(かよ)うのは、私(わたし)の意志(いし)で通(とお)っていた。


成績(せいせき)はメキメキと上(あ)がり、空手(からて)に通(かよ)っている事(こと)がクラスメイトに伝(つた)わり、私(わたし)は陰口(かげぐち)やイジメも無(な)くなり、とても気分(きぶん)が良(よ)かったのを覚(おぼ)えている。


ある日(ひ)の事(こと)。


「あなたのお母(かあ)さんと、もうお金(かね)の話(はなし)をしたくない。もう来(こ)ないで頂戴(ちょうだい)。」

学習(がくしゅう)塾(じゅく)の女性(じょせい)講師(こうし)に胸(むね)を押(お)されてドアを閉(し)め切(き)られた。


私(わたし)はお金(かね)の入(はい)った月謝(げっしゃ)袋(ぶくろ)を手(て)に、泣(な)いて自宅(じたく)に帰(かえ)ると父(ちち)が居(い)た。


事(こと)の顛末(てんまつ)を父(ちち)に話(はな)すと、とんでもない言葉(ことば)が出(で)た。


「そのカネで焼肉(やきにく)でも食(く)おう。寄越(よこ)せ。」

私(わたし)は驚(おどろ)きのショックで固(かた)まってしまった。

その隙(すき)に父(ちち)は私(わたし)から月謝(げっしゃ)袋(ぶくろ)を取(と)り上(あ)げて、中身(なかみ)のお金(おかね)を抜(ぬ)き、お金(かね)を尻(しり)のポケットに突(つ)っ込(こ)んだ。


焼肉(やきにく)など行(い)かなかった。

連(つ)れて行(い)って貰(もら)えなかった。

学習(がくしゅう)塾(じゅく)へ再(ふたた)び行(い)く事(こと)はなかった。

父(ちち)は嘘(うそ)つきだ。


3月(がつ)、引(ひ)っ越(こ)してから最初(さいしょ)の、習(なら)い事(ごと)の空手(からて)の練習(れんしゅう)に父(ちち)を急(せ)かせて、住(す)んでいた街(まち)へ車(くるま)で行(い)った。


「送(おくり)り迎(むか)えがめんどくさいから、もうこれが最後(さいご)な。」

父(ちち)が信(しん)じられない事(こと)を言(い)った。


そして私(わたし)は全(すべ)てのコミュニティを、また大人(おとな)の都合(つごう)で失(うしな)ったのだ。

2017.7.24 月曜日 平成29年 手帳2終了。

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