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異世界ラ〇トセーバー開発記 〜折れた剣の代わりに光の刃を作ったら、出力過剰で大惨事になった魔道具技師〜  作者: あずきまんま


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第3話

「はあぁぁぁっ!」


気合いの一声とともに、ルシアは青い光の刃を斜め下から一気に振り上げた。


ズバッ……!


硬度を誇るゴーレムの右脚が、まるで温めたバターをナイフで切るかのように滑らかに切り落とされた。

一切の打撃音も抵抗も残さず、光の刃は岩石の装甲を瞬時に溶かし切ったのだ。


「グオッ!?」


バランスを崩したゴーレムが、地響きを立てて片膝を突く。


「すごい……! 本当に一撃で斬れちゃった!」


ルシアは感動に瞳を輝かせた。

物理的な刃物であれば、どれだけ切れ味が良くても衝撃が手元に跳ね返ってくる。だがこのラ◯トセーバー・マークIIは、触れた瞬間に超高熱プラズマが相手を蒸発させるため、手に伝わる反動が一切ないのだ。


「フハハハ! 見ただろうルシア! これぞ科学と魔法の融合体だ!」


後ろで呑気に腕を組んでいたローランが、誇らしげに胸を張る。


「その隙に胴体を真っ二つにしてやれ! トドメだ!」


「任せなさい!」


ルシアはグリップを両手で握り直し、倒れ込んだゴーレムの胸元へと鋭く踏み込んだ。


だが——。


『ピロリ〜ン♪ エラーが発生しました。ただいま充電器を探しています』


唐突に、グリップから再び爽やかすぎるお姉さんのアナウンスが響いた。


「……え?」


『バシュン……』


切ない排気音とともに、コバルトブルーの光の刃が、すっと霧のように消えてなくなった。


ルシアの手元に残されたのは、ただの短い銀色の筒だけだった。


「…………はい?」


ルシアの動きが完全に止まった。

彼女の目の前には、右脚を失って激怒し、丸太のような左腕を振りかざしたゴーレムの巨体がある。


「ちょっとローラン!? 刃が消えたんだけど!?」


「な、なんだと!? 二重空冷ファンと氷結魔導結晶の消費魔力を計算に入れていなかった! 電池切れ……いや、魔力切れだ!」


「はぁぁぁぁぁ!?? なんでこんな一番大事な場面でガス欠を起こすのよ!!」


「威力を高めすぎたのが裏目に出た! ルシア、避けろ!!」


ゴーレムの巨大な岩の拳が、上空からルシアに向かって振り下ろされた。


ドガァァァァン……!


間一髪で横に転がって回避したルシアだったが、爆風に吹き飛ばされ、石畳の床をゴロゴロと転がった。


「くっ……痛たた……!」


ルシアは立ち上がり、手に持った消えたグリップを握りしめてローランを睨みつけた。


「あんたの『天才的な技術力』はどうなったのよバカローラン!!」


「す、すまん! だが諦めるのはまだ早い! 俺には……俺にはまだ『試作3号機』がある!」


ローランはバックパックの奥深くから、ゴツゴツとした不骨なデザインのブラック&ゴールドの大型グリップを取り出した。


「試作3号機【ラ◯トセーバー・オーバーロード】! これは魔力切れの心配がない、外部魔力直結型の超強力モデルだ!」


「外部直結ってどういう意味よ!?」


「使い手の魔力を直接エネルギーに変換する! つまりルシア、お前の魔力を好きなだけ吸い上げて限界突破の光刃を形成するんだ!」


ローランは走ってルシアに近付くと、強引に3号機のグリップを彼女の手へ押し付けた。


「受け取れルシア! これでお前の魔力を全開で叩き込め!」


「もう! 何がなんだか分からないけど、やるしかないじゃない!!」


追い詰めてくるゴーレムを前に、ルシアは覚悟を決めた。

グリップを強く握り締め、体内の魔力を一気に解放する。


「出なさいっ!【ラ◯トセーバー】!!」


ルシアの膨大な魔力がグリップに流れ込んだ、次の瞬間——。


『ヴヴヴヴヴヴォォォォォォン……!!』


これまでにない地鳴りのような重低音が、ダンジョン全体を激しく揺らした。


グリップの先端から解き放たれたのは、青でも緑でもない、眩いばかりの紅蓮の光柱だった。

しかもその長さは、通常の剣の長さを遥かに超え、天井に届きそうなほど巨大な五メートル超の超巨大光刃へと膨れ上がっていた。


「……大きすぎない!?」


ルシアは自分より遥かに巨大な光の柱を掲げ、引きつった声を上げた。


「ハッハッハ! 素晴らしい! ルシアの魔力量が高すぎて、出力調整ダイヤルを振り切ってしまったか!」


「笑ってる場合じゃないわよ! 重くはないけど熱気がヤバい! 天井が溶けてる!!」


紅蓮の光柱が触れた天井の岩石が、一瞬でドロドロのマグマとなってぽたぽたと滴り落ち始めた。


「グオオオオン!?」


巨大な光柱を目にしたゴーレムも、本能的な恐怖を感じたのか一歩後退りする。


「ルシア、一気に決めろ! ダンジョンが崩壊する前にそのゴーレムを蒸発させるんだ!」


「言われなくても叩き切ってやるわぁぁぁぁっ!!」


ルシアは巨体ほどの長さがある紅蓮の光刃をぶん回し、ゴーレムに向かって一気に振り下ろした。


ズバアァァァァァァン……!!


音すら置き去りにする圧巻の斬撃。

五メートルの熱光線は、アーマード・ゴーレムの巨体を縦真っ二つに切り裂くだけにとどまらず、そのまま後方のダンジョンの壁、そして頑丈な岩盤層までもを深々と溶断していった。


ゴーレムは一瞬で真っ赤な灰となり、崩れ去った。


「やった……! 勝ったわ……!」


ルシアが安堵の息を漏らした、まさにその瞬間。


『危険。魔力過剰供給。自爆シーケンスへ移行します』


無機質な警告音が、グリップから鳴り響いた。


「……え?」


ルシアが手元を見ると、ブラック&ゴールドのグリップが真っ赤に発光し、狂ったような速度で点滅を始めていた。


「ローラン? 自爆シーケンスって言ったわよね?」


「しまっ……! ルシアの魔力が過剰すぎて、安全限界を超えた! 爆発するぞ、捨てろ!!」


「なんで毎回自爆機能が付いてるのよこの欠陥魔道具ぇぇぇぇ!!」


ルシアは悲鳴を上げながら、真っ赤に輝くグリップを部屋の奥へ向かって思いっきり投げつけた。


ドッカンーーー!!


凄まじい大爆発が巻き起こり、炎と衝撃波が部屋全体を包み込んだ。


---


### 4. 結末


数時間後。


夕暮れ時の街の片隅に立つ、魔道具工房『アルケミア』。


店内には、全身黒焦げになり、頭から煙を上げた二人の姿があった。


ローランは頭に包帯を巻き、作業台の上に置かれた『黒こげの金属くず(元ラ◯トセーバー3号機)』を悲しそうに見つめていた。


「……うう、完璧な設計だったはずなのに。プラズマの収束率と魔力バイパスの限界値を甘く見すぎていた……。次は出力を自動抑制する制御回路を組み込まねば……」


「……ローラン?」


冷ややかな声が、後ろから響いた。


ローランがおそるおそる振り返ると、そこには頭にタオルを巻き、顔にすすをつけたルシアが立っていた。

その手には、一枚の長い請求書が握られている。


「ル、ルシアさん……? あの、無事にダンジョンから生還できて良かったですね……?」


「生還できたのは良かったわね。……でもね、ローラン?」


ルシアは般若のような笑顔を浮かべ、請求書をローランの目の前に突きつけた。


「これ、見てくれる?」


「こ、これは……?」


「ダンジョンの壁と天井を崩落させた分の『施設破壊賠償金』。それから、爆発に巻き込まれて使い物にならなくなった私の服と防具の『弁償代』。あ、ついでに私の愛剣『銀狼丸』の弁償代も入ってるわよ」


「ひっ……! 桁が……桁が工房の半年分の家賃より多い……!?」


「当然でしょ!! あんたの怪しい光の剣のせいで、依頼の報酬どころか天文学的な借金が残ったのよ!!」


ルシアの怒りが頂点に達した。


「いででででで!! 痛い痛い痛い! ルシア、耳! 耳がちぎれる!!」


ルシアは無表情のまま、ローランの両耳を掴み、ギッチギチと力任せに引っ張り上げた。


「当分、変な光の剣の開発は禁止! 明日からは街のドブ掃除と採掘作業の依頼を朝から晩まで詰めたから、全額返済するまでタダ働きしてもらうわよ!!」


「待ってくれルシア! 次の【試作4号機】は本当にすごいんだ! 刃を二本にしてダブルにするアイデアが——」


「黙りなさーーーーい!!」


「ギャァァァァァァッ!?」


夕暮れの街に、哀れな魔道具技師の悲鳴がどこまでも響き渡っていったのだった。


(完)

お読みいただきありがとうございました!


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