誕生
清嵐様が帝に即位して三ヶ月が経とうとしていた。
俊然殿下は清嵐様の政敵を一掃して、行方をくらましたままだ。あのあと、清嵐様は俊然殿下が掴んでいた王明たちの数々の悪行の証拠を使い、今回の反乱に加担した者を処分した。王明をはじめ親族が次々と処刑され、味方のいなくなった皇后は皇籍を剥奪され平民となった。
「贅沢三昧だった彼女にとって、平民となり市井で暮らすことは死ぬよりも辛いだろう」と清嵐様は言った。
私は大きくなったお腹を気にして「よいしょ」と立ち上がった。
古くなって不要になったカーテンで赤ちゃんのオムツを作っているのだ。裁縫道具を戸棚から出すと、一枚の文が落ちた。
この文は、俊然殿下がいなくなる前に私の部屋にこっそり置いていったものだった。
清嵐様と私に、この国を穏やかに治めてほしいと書かれていた。
文を手に取り、私は呟いた。
「...こんなやり方、清嵐様は悲んでますよ...」
そのとき、侍女が慌てた様子で言った。
「皇后陛下!大変です!」
どうやら私が古布で作った髪留めや鞄が、先日宮中で開かれた茶会に参加した貴人の間で噂になり、どこで手に入るのか問い合わせが殺到しているとのことだった。
「これは...要らなくなった布を使って作ったんだけど...」
私がそう言うと、後ろから宮仕えのお針子たちがやってきた。
「作り方教えてください〜!」
こうして皇后御用達となったリサイクル雑貨は飛ぶように売れ、今は火麟国の女子に大人気となった。
前の皇后によって破綻していた宮中の財政状況もだんだん良くなり、私は廉様から「もっと皇后としての面子を〜...」とよく言われている。
でも、廉様は私の身体をすごく心配していて「御子のために」とよく差し入れをくれるのだ。
もちろん、清嵐様はーー、
「雨!身体はどうだ?怠くはないか?今日は体調が良さそうだと侍医から聞いた、散歩するか?」
いつものように政務の合間にこうして私のところに来てくれるのだ。
「ふふ...元気です。お散歩、いいですね」
私たちは宮中の庭園を二人で歩く。
「...俊然様は、お元気でしょうか」
私が空を見上げながら言うと、清嵐様が私を見つめて言った。
「...きっとうまくやっているだろう。あいつは昔から要領が良かったからな」
そう言って笑う清嵐様の胸に抱きついた。
「つらい気持ちをそのままにしないでください...私だけしか聞いていません」
「...俺は、どうすればよかったんだろうな。結局、父である帝を廃位させることもできず、嫌な役回りは俊然にさせてしまった。こうして帝になれたのはすべて、あいつが導いてくれたからなのにな」
寂しそうに言う清嵐様を見て、私は思わず涙が溢れた。彼が私の涙を拭う。
「...きっと俺たちが治めるこの国を、どこかで見ているよ」
「そうですね」
そう言って私たちは手を繋いで歩いた。
----------
春になる頃、火麟国では待望の皇子が誕生し、国中から歓喜の声があがった。
清嵐はその治世で一度も飢饉が起きることなく、民の暮らしを豊かなものにして、のちに賢帝として愛された。彼は生涯を通じて倹約的な生活を送り、常に民の暮らしに思いを寄せたことで知られる。
そして彼を支えた妃は、たびたびその逞しい倹約術が世に広まり、その生い立ちから「清貧妃」と呼ばれた。




