表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/12

第12話【爬虫類】

ハブデビ!です!

作品を手に取っていただきありがとうございます!

気軽に読んでいただけると嬉しいです!

 ────────格安ブティック……ファッションセンター『ユニ・ホワイト』……その店内は静かだ。

 白い床に白い壁、等間隔に並ぶハンガーラック。

 店内に香る、石鹸のような匂い。

 所々に、旬のファッションに身を包むマネキンが、ポーズを取って設置してある。

 平日の夕方という時間帯のせいか、客はほとんどいない。


「いらっしゃいませ〜。 どうぞご覧くださいませ〜」


 レジカウンターの奥から、若い女性店員の声がする。

 カチャカチャとレジスターに何かを打ち込んでいる様子だった。


 ……そして、辺りを見回せばもう一人。

 店内左側、試着室の前あたりに立つ男の姿が目に映る。


 ──────上は赤いチェック柄、下はハワイアンな短パンと、上下でチグハグな柄の服を着ている。

 真夏だと言うのに、サイズの合っていない毛皮(ファー)付きのコート、サングラス、黒い革手袋。

 まるでマネキンのような、細い腕と脚が見える。


「……なんだアイツ。

 アレが今の流行りなのか?」


 鳶人が小さく呟く。


「さぁ……ファッション上級者って奴かな」


 蓮王は軽く返しつつ、その男から目線が離せなかった。

 その男が、服を見ている『フリ』をしているように見えた。

 男の目──────それはずっと、鳶人の方を追っているように感じた。

 見た目も含めて、怪しい。


「……まぁいいか

『映え』ってヤツには興味が無いんでね」


 鳶人は気を取り直すように、近くのラックへ手を伸ばす。

 そのラックには、『サマーセール開催中!』の札が貼られている。

 手に取るのは『赤いレザージャケット』……まるで1980年代のパンクロッカーのような、殺伐としたジャケット。


「とりあえず、これと……ズボンも適当なジーパンでいいか」


「え、何?……オッサン、バンドでも目指してるワケ?

 流石にその服のチョイスはないわー」


「いいだろ別に……革ジャンがいいんだ。

 昔観た喧嘩の映画に憧れてずっとこれなんだ」


 二人は淡々と服を選んでいく。

 鳶人の背中に、視線が刺さっているとも知らずに。


 ───────ザザッ……。


 足音。

 何者かが背後へ迫っている……鳶人が、ふと振り返る。

 店内で服を物色していた、変な男が……距離を詰めていた。

 いつの間にか、三メートルもない位置。

 サングラスの奥の眼光が、二人を照らしているようだった。


「YO……」


 男が、大人びた低い声で呟く。


武良(ぶら)……鳶人(とびと)、だよNA?」


 ──────空気が、凍る。

 横にいた蓮王の表情が一瞬で変わり、問いを返す


「……誰だオマエ。

 変なカッコウしてる時点で、ただ者じゃないと思ってたが」


 男は答えない……代わりに、ゆっくりと両手を広げる。

 ──────その瞬間。


 男の口元が……パックリと開かれる。

『口裂け女』のように頬が裂ける。大きく開口した後、喉奥まで暗い口内を鳶人らに見せつけている。


「急にデカく口を開いた……?」


 鳶人に走る嫌な予感……そう感じるのも束の間だった。

 突如として、男の口腔内から、異常な速度で『何か』が射出される。

 蓮王の『歯の弾丸』のような物でもなく、帯状の何かだった。


 ──────────……ズルァッ!!!!


 紫色のそれは、唾液の膜を帯び、空気を裂きながら一直線に伸びていく。

 鳶人は、自分へ伸び、飛んでくる物体を見て……その正体を理解した。



「─────舌……だとッ!?」



 だが、それはもう人間の舌ではない。

 太く、硬く、筋張り、ムチのようにしなる『筋肉の塊』……カメレオンや、カエル等の爬虫類の舌を思わせる。

 ……鳶人は反射的に、右腕を前へ構えた。


 グギギギ……と、右前腕から生えるように形成される、『外骨格』……。

 骨がせり上がり、組み合わさり、亀の甲羅のような『盾』の形状を成す。

 研究所の地下で創ったあの形。

『外骨格の盾』──────完成する。


 そして、鳶人がその盾を構えたと同時──────バァン!!!……と、舌と外骨格の盾が激突。

 店内には、まるで『鉄板に鉄球をぶつけた』ような衝撃音が響き渡る。


「な、なんて威力(パワー)だ……ッ!!」


 初撃は見事に防いだ。

 しかし、鳶人の身体はグッグッと押され、少しずつ後退していく。


「まだ止まらないのか……!!」


 舌が、盾ごと鳶人を更に押す……。

 押し返すというより、押し潰すように、ねじ込んでくる。

 鳶人は力いっぱいに地面を押す。しかし、この『圧力』は、だんだんと増していく。


 ──────ズズズズ……!!


 靴底が、白い床を削りながら後退する。

 鳶人の腕に、盾越しでも伝わる異常な負荷……外骨格内の神経を通り、伝わってくる。


(尋常じゃないほどの───筋肉……ただ伸びてるだけじゃねぇ……!!!)


 舌の筋肉は圧縮、収縮を繰り返し、ウネウネと動く。

 そして瞬間──────溜めに溜めた、爆発的な『伸び』が開放される。

 バネのように伸びるその舌の力……それは鳶人の身体を、床から浮かせてしまう。



 ──────ンドゴォォォ!!!!



 構える盾ごと、鳶人の身体が後方へ吹き飛ばされた。

 背中から、レジカウンターへ激突。プラスチックと金属が砕け散り、レジスター内の紙幣が、桜のように宙を舞う。


「ガハッ……!!」


 肺の空気が一気に吐き出され、視界が一瞬白くホワイト・アウトする。

 ガラガラ……──────細かな瓦礫が降り注ぐ。


「キャアアアア───────!!!!!」


 女性店員の悲鳴。

 鳶人は吹き飛ばされる際、間一髪で女性店員を押し出し、衝突を免れている。


 床に仰向けで崩れ落ちる鳶人。

 そのすぐ横では商品棚が倒れ、色とりどりの衣類が散乱する。


「武良のオッサン──────!!!」


 蓮王は叫ぶ。しかし、鳶人はその声が遠く聞こえている。

 キーン……と、耳鳴りがするのだ。


 目の前の敵、男は止まらない。

 常人以上の可動域で開かれている口、その喉の奥で舌が蠢いている。

 ズル……ズルルル……ウネウネ……と、まるで別の生き物を、口の中で飼っているようだった。

 舌が床を這い、脈打ちながら再び持ち上がる。


「HAッHA〜!!!」


 男は、やけに高らかと笑った。


「どうだいどうだい!!

 俺の舌……『爬虫類舌(トード・タング)』ゥ!!

 ……最大『27.34 m』まで伸びる、舌の筋肉を完全制御する力ァ!!!」


 舌が、鞭のようにしなる。

 ビタンビタンと、掃除機のコードのように、地面を叩きながら口の中に戻されていく。

 口に戻ってもなお、その舌は紫色の不気味な色彩をしている。

 きっと蓮王や圭理と同じ『試作品』だろう。


 鳶人と蓮王が、この男をBORN ARMS(ボーン・アームズ)だと気が付かなかったのは、能力が舌である以上、口を開かない限り判別が出来ないからだ。


「一度防げたくらいで安心するなよ……『最高傑作』────」


 男の視線は鳶人を捉え、鋭い眼光を浴びせている。

 鳶人は、吐血しながらも歯を剥き、睨み返す。


「───────ッざけんな……」


 震える腕で、床に手を突く。

 外骨格の盾にヒビは無い。しかし、神経を通じて、衝撃による鈍い痛みが走っている。


 鳶人の脳内……『攻撃』の命令を出している。

 左手の中指を立てると、その一点を集中し力を込める。


 ───────グギ……グギギギ……


 再び、骨がせり上がる。例のごとく、歪み、尖り、刃を形成……。


「だがまァ……(トード)か……。

『蟹の殻』よりかは、素直に斬らせてくれそうだ」


 男の舌は、再び鳶人へと照準を合わせる……また弾丸のような、舌の攻撃を仕掛けるつもりだ。

 しかし、その舌は先程よりも口内で『圧縮』されている。


 恐らく──────次の一撃は、防御では済まない。

読んでいただきありがとうございましたー!

絶賛連載中なので、次も読んでくれると嬉しいです!!


また、他作品も読んでいただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ