第12話【爬虫類】
ハブデビ!です!
作品を手に取っていただきありがとうございます!
気軽に読んでいただけると嬉しいです!
────────格安ブティック……ファッションセンター『ユニ・ホワイト』……その店内は静かだ。
白い床に白い壁、等間隔に並ぶハンガーラック。
店内に香る、石鹸のような匂い。
所々に、旬のファッションに身を包むマネキンが、ポーズを取って設置してある。
平日の夕方という時間帯のせいか、客はほとんどいない。
「いらっしゃいませ〜。 どうぞご覧くださいませ〜」
レジカウンターの奥から、若い女性店員の声がする。
カチャカチャとレジスターに何かを打ち込んでいる様子だった。
……そして、辺りを見回せばもう一人。
店内左側、試着室の前あたりに立つ男の姿が目に映る。
──────上は赤いチェック柄、下はハワイアンな短パンと、上下でチグハグな柄の服を着ている。
真夏だと言うのに、サイズの合っていない毛皮付きのコート、サングラス、黒い革手袋。
まるでマネキンのような、細い腕と脚が見える。
「……なんだアイツ。
アレが今の流行りなのか?」
鳶人が小さく呟く。
「さぁ……ファッション上級者って奴かな」
蓮王は軽く返しつつ、その男から目線が離せなかった。
その男が、服を見ている『フリ』をしているように見えた。
男の目──────それはずっと、鳶人の方を追っているように感じた。
見た目も含めて、怪しい。
「……まぁいいか
『映え』ってヤツには興味が無いんでね」
鳶人は気を取り直すように、近くのラックへ手を伸ばす。
そのラックには、『サマーセール開催中!』の札が貼られている。
手に取るのは『赤いレザージャケット』……まるで1980年代のパンクロッカーのような、殺伐としたジャケット。
「とりあえず、これと……ズボンも適当なジーパンでいいか」
「え、何?……オッサン、バンドでも目指してるワケ?
流石にその服のチョイスはないわー」
「いいだろ別に……革ジャンがいいんだ。
昔観た喧嘩の映画に憧れてずっとこれなんだ」
二人は淡々と服を選んでいく。
鳶人の背中に、視線が刺さっているとも知らずに。
───────ザザッ……。
足音。
何者かが背後へ迫っている……鳶人が、ふと振り返る。
店内で服を物色していた、変な男が……距離を詰めていた。
いつの間にか、三メートルもない位置。
サングラスの奥の眼光が、二人を照らしているようだった。
「YO……」
男が、大人びた低い声で呟く。
「武良……鳶人、だよNA?」
──────空気が、凍る。
横にいた蓮王の表情が一瞬で変わり、問いを返す
「……誰だオマエ。
変なカッコウしてる時点で、ただ者じゃないと思ってたが」
男は答えない……代わりに、ゆっくりと両手を広げる。
──────その瞬間。
男の口元が……パックリと開かれる。
『口裂け女』のように頬が裂ける。大きく開口した後、喉奥まで暗い口内を鳶人らに見せつけている。
「急にデカく口を開いた……?」
鳶人に走る嫌な予感……そう感じるのも束の間だった。
突如として、男の口腔内から、異常な速度で『何か』が射出される。
蓮王の『歯の弾丸』のような物でもなく、帯状の何かだった。
──────────……ズルァッ!!!!
紫色のそれは、唾液の膜を帯び、空気を裂きながら一直線に伸びていく。
鳶人は、自分へ伸び、飛んでくる物体を見て……その正体を理解した。
「─────舌……だとッ!?」
だが、それはもう人間の舌ではない。
太く、硬く、筋張り、ムチのようにしなる『筋肉の塊』……カメレオンや、カエル等の爬虫類の舌を思わせる。
……鳶人は反射的に、右腕を前へ構えた。
グギギギ……と、右前腕から生えるように形成される、『外骨格』……。
骨がせり上がり、組み合わさり、亀の甲羅のような『盾』の形状を成す。
研究所の地下で創ったあの形。
『外骨格の盾』──────完成する。
そして、鳶人がその盾を構えたと同時──────バァン!!!……と、舌と外骨格の盾が激突。
店内には、まるで『鉄板に鉄球をぶつけた』ような衝撃音が響き渡る。
「な、なんて威力だ……ッ!!」
初撃は見事に防いだ。
しかし、鳶人の身体はグッグッと押され、少しずつ後退していく。
「まだ止まらないのか……!!」
舌が、盾ごと鳶人を更に押す……。
押し返すというより、押し潰すように、ねじ込んでくる。
鳶人は力いっぱいに地面を押す。しかし、この『圧力』は、だんだんと増していく。
──────ズズズズ……!!
靴底が、白い床を削りながら後退する。
鳶人の腕に、盾越しでも伝わる異常な負荷……外骨格内の神経を通り、伝わってくる。
(尋常じゃないほどの───筋肉……ただ伸びてるだけじゃねぇ……!!!)
舌の筋肉は圧縮、収縮を繰り返し、ウネウネと動く。
そして瞬間──────溜めに溜めた、爆発的な『伸び』が開放される。
バネのように伸びるその舌の力……それは鳶人の身体を、床から浮かせてしまう。
──────ンドゴォォォ!!!!
構える盾ごと、鳶人の身体が後方へ吹き飛ばされた。
背中から、レジカウンターへ激突。プラスチックと金属が砕け散り、レジスター内の紙幣が、桜のように宙を舞う。
「ガハッ……!!」
肺の空気が一気に吐き出され、視界が一瞬白くホワイト・アウトする。
ガラガラ……──────細かな瓦礫が降り注ぐ。
「キャアアアア───────!!!!!」
女性店員の悲鳴。
鳶人は吹き飛ばされる際、間一髪で女性店員を押し出し、衝突を免れている。
床に仰向けで崩れ落ちる鳶人。
そのすぐ横では商品棚が倒れ、色とりどりの衣類が散乱する。
「武良のオッサン──────!!!」
蓮王は叫ぶ。しかし、鳶人はその声が遠く聞こえている。
キーン……と、耳鳴りがするのだ。
目の前の敵、男は止まらない。
常人以上の可動域で開かれている口、その喉の奥で舌が蠢いている。
ズル……ズルルル……ウネウネ……と、まるで別の生き物を、口の中で飼っているようだった。
舌が床を這い、脈打ちながら再び持ち上がる。
「HAッHA〜!!!」
男は、やけに高らかと笑った。
「どうだいどうだい!!
俺の舌……『爬虫類舌』ゥ!!
……最大『27.34 m』まで伸びる、舌の筋肉を完全制御する力ァ!!!」
舌が、鞭のようにしなる。
ビタンビタンと、掃除機のコードのように、地面を叩きながら口の中に戻されていく。
口に戻ってもなお、その舌は紫色の不気味な色彩をしている。
きっと蓮王や圭理と同じ『試作品』だろう。
鳶人と蓮王が、この男をBORN ARMSだと気が付かなかったのは、能力が舌である以上、口を開かない限り判別が出来ないからだ。
「一度防げたくらいで安心するなよ……『最高傑作』────」
男の視線は鳶人を捉え、鋭い眼光を浴びせている。
鳶人は、吐血しながらも歯を剥き、睨み返す。
「───────ッざけんな……」
震える腕で、床に手を突く。
外骨格の盾にヒビは無い。しかし、神経を通じて、衝撃による鈍い痛みが走っている。
鳶人の脳内……『攻撃』の命令を出している。
左手の中指を立てると、その一点を集中し力を込める。
───────グギ……グギギギ……
再び、骨がせり上がる。例のごとく、歪み、尖り、刃を形成……。
「だがまァ……蛙か……。
『蟹の殻』よりかは、素直に斬らせてくれそうだ」
男の舌は、再び鳶人へと照準を合わせる……また弾丸のような、舌の攻撃を仕掛けるつもりだ。
しかし、その舌は先程よりも口内で『圧縮』されている。
恐らく──────次の一撃は、防御では済まない。
読んでいただきありがとうございましたー!
絶賛連載中なので、次も読んでくれると嬉しいです!!
また、他作品も読んでいただけると嬉しいです!




