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第28.5話 インターミッション

#第28.5話 インターミッション



煌びやかな卓を離れ、人の少ないフロア脇を歩く。

ルカはネクタイを緩め、ふうっと長く息を吐いた。

ナオは横目にそれを見ながら、ぽつりとこぼす。


「……よく、あそこで負けたな。」

「ん?」


涼しい顔のまま、ルカは目を細める。


「たまたまだよ。いやー、負けてよかった。」

「ディーラー、ほっとしてたぞ。」


その一言に、ルカが吹き出した。


「あの額だしな。下手すりゃあっちの首が飛ぶ。」


ネクタイを引っ張る手を放り投げるようにして、

ルカは天井を仰いだ。


「勝ってたらどうするつもりだったんだよ。」

「……んー、そりゃ“浮かれてバカ騒ぎする勝ち馬”演じてさ。

負けるまで回すしかねぇよな。」


肩をすくめて、ポケットに手を突っ込む。

どこか、"もう演技は降りた"と言いたげな顔をしていた。


ナオはしばらく黙ったあと、小さく笑った。


「……そういうとこ、変わんねぇな。」

「おー、褒め言葉だと思っとくわ。」


ふたり、静かに歩く。

緊張が抜けて、言葉の間に素の体温が滲む。


――そして、ふいに。


「で?」


ルカがナオを横目に見ながら、少し肩を寄せる。


「……何だよ。」

「“キスはなし”って言ったろ?

じゃあさ、勝ってたら……する気だったのかよ。」


ナオが、ぼんやりした目で睨む。


「……したこと、あるかよ。」

「え?ない?俺の記憶だと三回く――」


「全部、嘘の記憶作んな。」


その言葉に、ルカは「ちぇー」と唇を尖らせて、つまらなそうに鼻を鳴らした。

でも、ふたりとも少し緩んだ表情をしていた。


静かなフロア脇。

カジノの喧騒が遠くにぼやけていく中で、

その背中には、舞台を降りた役者のような、静かな余韻が滲んでいた。

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