第22.5話 鎮痛
#第22.5話 鎮痛
部屋の照明は落とされ、薄闇の中。
ナオはベッドに横になったまま、次第にまぶたを閉じかけていた。
うとうとと、意識がほどけていくその時だった。
「……俺たちってさ、どうやって、ここまで帰ってきたっけ。」
唐突に、ルカが呟く。
ナオの目が、ぴくりとわずかに開いた。
その問いに、すぐには返事ができなかった。
「……ルカは?」
「さあな。ナオは?」
「……お前の泣き声、聞いてから落ちた。」
「おい、余計なとこ触れんな。そっとしとけ。」
二人とも、天井を仰いだまま、沈黙する。
やがて、ナオがぽつりと漏らす。
「……残ってんのは、Vか?」
「……マジかよ。」
ルカの顔が、苦虫を噛み潰したように歪む。
「最悪だ。なんでだよ……今回、何でか知らねぇけど、“借り”みたいになってんだよ。
マジでやだ……は? マジ? 最悪すぎんだろ。」
頭を抱えるルカ。
ナオはため息をついて、少し呆れたように言う。
「……なんでそんな嫌ってんだよ。」
「違ぇよ。あっちが俺を毛嫌いしてんの。」
「お互い様じゃねぇか。」
また、しばしの沈黙。
そのまま、どちらともなく目を閉じかけて――
「……で、どうする。“感謝”でも、しに行くか?」
ナオの声が、ひどくめんどくさそうに落ちる。
「……いや。運んだのがVとは限らねぇだろ。
あいつはな……“クソ真面目に任務だけこなして、俺ら置いてくタイプ”なんだよ。」
「……やっぱ毛嫌いしてんの、お前だろ。」
もう何も言えずに、ルカは天井を見上げるだけだった。
沈黙の中、ナオの顔がわずかにしかめられる。
痛み止めの効果が、切れかけていた。
「……なぁ、ルカ。痛み止め、切れた。取ってくれ。」
「ん? ……マジか。……口移しの方がいい?」
「さっさと取れ。殴るぞ。」
「優しくして?」
「さっさと取ってこい、クソダーリン。」
「はいはい。我が儘ハニー様……。」
ルカがのろのろと立ち上がる。
その背を見送りながら、ナオはぽつりと呟いた。
「……ほんと、よく帰ってきたな。」
誰にも聞かせるつもりのない、ひとりごとのように。
けれどその声は、じんわりと、部屋に滲んでいった。




