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3

 広間ではまだ副宰相の捕物が続いていた。


 なぜなら、副宰相が声を上げたからだ。


「ちっくしょー! 私は命令されてやっただけだ! 皇后だ。皇后に命令されたんだ!」


 それを聞いた広間は騒然となった。


「副宰相! 往生際が悪いぞ! 僕の母上を愚弄するとは恥を知れ!」


 ジョシュアが叫ぶ。


 "ちっ、マザコンが"


 ミツキが毒を吐いた。


 そこで、副宰相の口から驚くべき内容が飛び出した。


「貴様ぁー! ジョシュア! そもそもお前が母親に頼んだんだろ!」


「な! 馬鹿を言うな!」


 ジョシュアは真っ青になって反論するが、副宰相は続ける。


「みんな聞け! 今回の件は、皇太子がシャーロットを力ずくで手に入れたくて、皇后に泣きついたんだ!

 皇后は息子が可愛いくて計画を立てた。

 私を投獄すると言うのなら、皇后と皇太子の悪事を全て暴露してやる!

 この二人はいくつも犯罪をおかしてる!

 ジョシュア! お前も道連れだーー!」


「や、やめろーー!」


 ジョシュアは泣きそうになりながら叫んだ。


 すると、副宰相を捕らえている憲兵隊長が口を開いた。


「……殿下。いずれあなたも断罪されなければならないようですね」


「あわわ、あわわ……」


 ジョシュアは真っ青で視線が定まらない様子。


 そんなジョシュアを見て、周囲の貴族達は口々にささやき始めた。


「何てことかしら。殿下はもう終わりね」


「皇太子が犯罪を犯すなど、国の恥だな」


「それにしても皇后様にすがるなど、つくづく情けない方だ」


 そんな声を聞くと、たちまちジョシュアの顔色は変わった。


「……しょう……くしょう、畜生、畜生、畜生……。

……せいだ。……えのせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ……」


 ジョシュアはぶつぶつと何かを呟き始めた。


 そして、徐々に歩きだすと──。


「お前の! お前のせいだぁーーっ!」


 ジョシュアはわたくしに向かって走り出した。


 突然のことで誰もジョシュアを止めようとはしない。


 ジョシュアは、走りながら腰のレイピアに手を掛けた。


「なっ!」


 予想外の事態に、私は驚いた。


 "危ない! ローズ!"


 ミツキが叫ぶも、私は動けない。


 逆上したジョシュアは私の前まで来ると、レイピアを鞘から抜いた。


「死ねぇぇ! ローズぅぅぅ!」


 まずい!


 私は一瞬、スローモーションのように景色が止まった。その時──。


 "あたしの推しに触んな! マザコン野郎!!"


 ミツキの声が聞こえたかと思うと、まるで私の身体は爆発したように熱くなって──。


 "肘当て呼吸投げ"


 私の右手はさっと、ジョシュアが抜刀した右手首を抑えた。


 そして、すぐさま私の身体は回転してジョシュアの側面に立つと、ジョシュアの右肘を下から抱えこんで、ジョシュアを前方に投げた。


 ジョシュアは耐えきれず、レイピアを離して前転し、背中を床に打ちつけた。


「うげぇっ!」


 広間からは歓声が上がる。


「おおー!!」

 

 そして、私の頭の中でミツキが言った。


 "合気道有段者をなめんな!"





「ぐっ……」


 ジョシュアは床に這いつくばっている。


 周囲にはさぞかし無様に映っていることだろう。


 私は、取り上げたレイピアをジョシュアに向かってシュッと突きつけた。


「ひっ!」


 刺されると思ったのだろう、ジョシュアは情けない声を出した。


 私は口を開く。


「──ジョシュア。貴方は今まで何一つ私を喜ばせようとしてくれなかった。

 けれど、今日、初めて、貴方は私を喜ばせてくれたわ」


 私は圧倒的にジョシュアを見下して──。


「貴方が、想像以上に愚かで良かった」


「くっ……」


 ジョシュアは諦めたようにうなだれた。


 "ふふ、やっぱ、ローズはかっこいいわ!"


 ミツキが笑ってそう言った。

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