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最終話「たったひとつの物語」

 小説を書き始めたあの日から、50年の月日は流れた。

 色々な小説を書いて、人気が出た事もあれば、まったく誰からも読まれない事もあった。

 その全てが俺の中では満たされていた。小説を書くことが楽しかったから。


「新作を書きたい所だが……」


 俺は布団から出ようとするが、中々出られない。

 歳をとり、体の自由があまりきかないからだ。

 頭の中でネタを考えても、少ししたら何を思いついたのか思い出せないほどに俺は衰えてしまった。

 若い頃に小説を書く事にハマって、毎日徹夜したりと無茶をした反動だろう。

 段々と視界が狭くなっていく、あぁ出来ればもう少しだけで良い。小説を書いていたかったな。



 ☆ ☆ ☆



 気づけば何もない、見渡す限り真っ白な空間に立って居た。

 ここはどこだろうか? いや、俺はここを知っている!

 今全てを思い出した。俺はここで女神様に会い、そして共に小説を書いた。


「ごめーん、待った?」


 あの時と同じように、急に俺の目の前に女性が立って居る。

 当時と何一つ変わっていない。女神様が。

 

「いえ、今来た所ですよ」


 俺は出来る限り優しく答えた。

 そんな俺の返事が予想外だったのか、女神様は目を丸くしている。

 

「どうしました?」


「うーん。何というかもうちょっとこう、何か無い? 怒るとか驚くとか、ほら私色々やっちゃったでしょ?」


 当時の事を彼女なりに気にしているのだろうか?

 確かに色々と酷い目にあったりもしたが、俺は感謝をすれども怒ったりするつもりはない。

 もし女神様が居なければ、俺は小説を書く事なんて無かったのだから。


「女神様。俺はあなたに感謝と謝罪をさせてくだい」


「アンタ感謝と謝罪って」


 驚いた声を出し、周りをキョロキョロしながら、女神様は自分を指さして「私に?」と聞いて来る。

 はい、あなたです。


「もしあなたに出会わなければ、俺は小説を書くことが無かった。俺に小説を書くきっかけを与えてくれたことへの感謝を」


 そう言って頭を下げると俺の感謝に対し、気恥ずかしいのか女神様は視線をそらしながら少し赤らんでいる頬をかきはじめた。


「そして、あなたの作品を散々バカにした事への謝罪を」


 テンプレがどうとか関係無かった。

 必死に頑張って考え抜いた作品。それはどこを探しても見つからない、その人にしか作れないたったひとつの物語だから。

 俺はそんな大事な物をバカにするような発言をしていた。それを思い出した今、当時の自分を殴りたいほどに後悔していた。

 かつての自分の発言に対する後悔と謝罪を述べていく俺に対し、「待った」という感じで手の平を俺の前に付きだし女神様は首を横に振り笑いかけてくれた。


「そんな昔の事、もうどうでも良いわ。それよりもあなたにお願いしたい事があるわ」


「はい。俺に出来る事であれば」


「小説を書きたくなったから、また手伝ってくれる?」


「もちろんですよ!」

 

 俺の返事に、満足そうにうんうんと頷く女神様。

 

「あと、その『女神様』っていうのはやめてくれる? 調子が狂うわ」


 俺としては敬意をこめて女神様と呼びたいが、本人からの希望なら仕方がないですね。

 

「貴方は変わったわね」


「そういう女神さんは全く変わってないですね」


 そう言ってお互い笑った後に、どんな作品を書くか話し合った。

 どんな物語が出来るのか楽しみだ。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

途中で道貞が何度も調子にのった発言、本当にすみませんでした(土下座)

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