第十二話 敗北
「なんだ?さっき落ちてきたはずの矢が、また落ちてきたぞ!」
「だからなんども言ってるだろ?
俺は矢を2本放ったと」
「卑怯だぞ!」
「魔王軍幹部が何を言うんだ。それっ!」
「ぐえーーーーーー!」
もう完全に倒したみたいだ。
「これで、俺の勝ちでいいか?」
「くそっ、ここで負けるなんて、本当はこんなことになるはずでは…私は、魔王軍幹部のはずなのに…」
「そもそもお前、幹部じゃないだろ?」
「は?わたしは正式な魔王軍幹部として選ばれているんだぞ。」
「それにしてはいくらなんでも弱すぎないか?幹部なら、こんなところであっけなくやられたりするか?
いくら剣が弱いとは言え、本人がある程度の強さがあったら、あそこまで酷い結果にはならないはずだぞ?」
「それは、弱い武器しか与えられなかったからだ。
私の強さと武器の強さが釣り合っていないのだ!」
「普通幹部レベルとなると、軍からきちんとした武器が支給されるはずだぞ?
なのにあんなにも弱い盾と剣しか持っていないなんて」
「ぐっ、それは」
「それに、魔王軍幹部ときたら、強い手下がいるはずだ。
あんな一撃でやられるようや手下はつれていないだろ?」
「だが、私は…」
「悪あがきはよせ。
もうお前は負けたんだ。規則には則ったからな。
約束通り、この場所からは出させてもらおう」
「なら、ならそこに書かれてあることを見させてはくれないか?
べつに、奪うつもりはない。
だが、見ても困らないだろ?」
「お前、負けておいてそれか?
最初から戦わず、そうやっておけば中身を読むことができたのに、戦いを挑んだのは俺かもしれないが、戦うことを決めたのはお前でもあるんだぞ?」
「頼む。どうしても中身が、、」
「じゃあ、お前の真実を全て話してくれるなら、許してやろう。お前は結局なんだ?」
「仕方ない。話すか。
実は私は、魔王軍幹部ではなく、曹の位なのだ。」
曹というのは、一番下ではないが、幹部よりは低い位である。
「だが、私は幹部に憧れを抱いていた。私でも幹部になれるのではないかと。
しかし、現実は甘くなかった。
幹部の人たちは、皆戦闘技術に優れており、わたしはどの幹部にも、右腕どころか右足にも及ばない。
それどころか、同じ曹同士でもあまり強いとは言えなかった。
わたしは自分が弱いとどうしても認めたくはなかった。
だからわざと武器や手下どもを軍から弱くしてもらい、自分はそれだからしょうがないと思っていた」
典型的なクズだ。
しょうがない。こういう時は、適当にぽいことを言えば、どうにかなるもんだ。
「俺も過去では自分の環境が整っていないせいで、自分がうまくいかないんだと嘆いてる人はたくさん見てきた。
俺はしょうがないことだと思っていた。
だが、まだ俺が子供の時、ある人に出会ってからはその考えが全て変わった。
その人は、恵まれない家庭環境や人間関係から、とても環境がいいとは言えなかった。
だが、見えるところでも、おそらく見えないところでも努力をしていたのか、武力においても学力においても、社交性においても、彼女以上に秀でるものはいなかった。
具体的に言うと、あまり伝わらないかもしれないが、とにかく、誰よりも優れていたのは確かだ。
そして彼女は、『私は最高の環境で育った。私は誰よりも幸せものさ』と言い、俺に別れを告げた。
俺はそれから、自分の能力については、多少環境が左右するかもしれないが、結局は自分の努力次第でなんとかなると思った。
だからお前も、余計なことはしずに、努力だけを続けろ。
わざと環境を悪くしたって、それで自分の能力が上がるわけではないのだから」
「わかった。わたしは、これからは2度と環境や装備などを理由に嘆かない。
実力で覆す。」
「それでいいんだ。」
まあ、この話は全部嘘なんだけどな。
そもそも俺、小中高男子校だしな。
「では、ここから出る方法を教えてくれないか?」
「そこの扉から普通に出れるぞ?
天井はただのダミーだ」
「え?!普通に扉から出てるって本当か?」
「疑うならやってみろ。」
俺は扉の前に立ち、全体中で扉を押し込んだ。 すると、、
「ギガガーギー」
外から光が差し込んできた。
ようやくこの世界の日の光を見ることができたのだ。
「それでは、わたしはこれで、」
「いや待て、その内容を見せてくれるんじゃなかったのか?」
「ああ、そうだった。お前いい加減しつこいなぁ。たかがメモ書きだぞ?」
「それの本当の凄さがわかっていないみたいだな。」
「お前が勝手に驚いているだけだろ?」
「そんなわけあるか!それは誰が見ても驚くんだぞ!」
「本当か?」
「信じてないようだな。それなら確かめに行くのが一番早い。
いまから、村に行くぞ!」
「村?!」
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