表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS魔王の『モン娘』ハーレム綺譚  作者: 九條葉月
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/79

15.魔王と勇者


 15.魔王と勇者。



 世界樹の悪乗りで魔王になった。

 うん、我ながら理解しにくい状況だ。


 まぁしかしエリザにも言われたし、無理して何かをしようとは思わない。魔王の使命は『亜人の保護』らしいが、世界中の亜人を守れるような器は持っていないしな。俺の嫁たちと、家族同然であるジーン族を守れればそれでいいと思う。


 器以上のことを頑張っても結局は失敗すると前世で学んだことだし。荒野のど真ん中で細々とやっていればトラブルも舞い込まないだろう。


 と、油断していたのが悪かったのか。

 式典(?)が終わった直後。姫がお客さんを連れてきた。リュアが耳打ちしてくれた情報が確かなら“勇者”らしい。


 魔王にとってはラスボスだな。それといきなりエンカウントとか、どうしてこうなった?


 まぁしかし逃げるのも面白くないし、わざわざ姫が紹介するのだから敵対するとも限らない。というわけで俺は居館の中で勇者とやらに会うことになった。





 姫が連れてきた“勇者”は銀髪赤目だった。


 俺の目の前に来たときは青い瞳だったのだが、『この瞳の色は騒がれるのでね、親しい人の前以外では色を変えているんだ』と赤い瞳に戻していた。


 なんでも赤い瞳というのは初代勇者と同じ色であり、“死神の瞳(バロール)”を持つことを意味しているらしい。


 そんな赤い瞳はこの世界ではほとんど生まれてこないそうなのだ。銀髪の上に赤い瞳だと、冗談じゃなく祭り上げられかねないのだとか。


 というわけで、勇者だという女性は銀髪赤目。


 転生したあとの俺と一緒だな。忘れがちだが俺も銀髪赤目。


「キャラ被りだね」


 後ろでボソッとリュアが囁いていた。いやいや違うから。勇者と魔王はだいぶ違うというか正反対だから。……だよな?


 俺との相違点を探すためにも“勇者”だという女性を観察する。


 うん、超美人。


 嫁たちと暮らしているから美人は見慣れてきたと思っていたのだが、いやいや、そんな俺でも見惚れてしまうほど綺麗な人だった。美人は三日で慣れるというがそんなことはないな。美人は何度見ても、何人と会っても眼福――


 ――リュアと姫。浮気じゃないから殺気を飛ばすのは止めてくれ。というか嫁を増やすのには賛成なくせに浮気は許さないのか? 基準が分からん……。責任を持てってことか?


 あとエリザは足踏まないで。お前は心読めないはずだよな?


 鼻の下が伸びていた? いやいや伸びてないって。初対面の人に会うんだから顔は引き締めていたはず。

 ……ずっと見ているから表情の変化くらい分かると? 何それ照れる。


 ま、まぁ、言い訳させてもらうなら見惚れたうちの何割かはその隙のない立ち振る舞いも含まれている。一見すると柔らかで優しげな雰囲気なのだが、いざ一歩踏み込もうとするとその優しさに絡め取られそうというか……。


 この女、絶対に強い。是非ともお手合わせしたいものだ。


 銀髪の女性も俺のことを見てから好戦的な色をその瞳に浮かべたので、同じようなことを考えたのかもしれない。


 やっぱり強者とは惹かれあい、戦いたくなるものなのだ。うん、これはもはや自然の摂理。


「やはりラークの常識は狂っているね」


 非常識の塊であるリュアに言われたくはないわ。


 おっと、まずは挨拶しないとな。とは言っても俺はまだこの世界の挨拶なんて知らないし、無理に前世の礼儀作法を使うよりは正直に知らないと伝えておいた方がいいだろう。


「……あー、なんだ? 俺はこの世界の常識に疎いんでな。正式な礼儀もよく知らないんで先に謝っておく。無礼があったらゴメンなさい」


 頭を下げた俺を見て銀髪の女性が小さく吹き出した。


「いやいや、“魔王”なのだから不遜な態度でも構わないよ私は。それに堅苦しい挨拶は苦手なのでね。そちらも普段通りにやってくれると嬉しいな」


「そうか。じゃあ遠慮なく。俺の名前は浦戸――いや、ウラド・ラークだ。一応魔王であるらしい」


「はじめまして。私はカイン・アベイル。ヒングルド王国の勇者をやっている」


「…………」


 ヒングルド王国、ねぇ。

 なにやら最近聞くことの多い国名だが、記憶違いじゃなければエリザが貶められて追放された国であるはず。


 それとなく横目でエリザの様子を伺うが、彼女は平然としている。


 カインがエリザに軽く手を振って、エリザは柔らかな微笑みを返した。その様子からして知り合いみたいだ。


 次期王女予定だった人と勇者だものな。面識がない方が不自然か。


 そんなことを考えているとカインが視線を俺へと戻した。


「さて、魔王殿。……と、いう呼び方は勇者的にちょっとマズいので、ラーク君と呼んでも大丈夫かな? その代わりと言っては何だが、私のことはカインと呼んで欲しい」


 いきなり君付けとかさすが勇者である。俺の感覚では男女がファーストネームを呼び合うのはかなり親しい間柄のような気がするんだが。……うん、足をぐりぐりと踏みつけてくるエリザの反応からしてこの世界でも同じようだ。


 というかエリザは一応幽霊で、普段はぷかぷか浮いているくせに、こういうときだけ足で踏みつけてくるのはどうなのだろう。


 俺としてもいきなり名前を呼び捨てるのは気が引ける。


 しかし、相手が名前で呼んで欲しいと要求しているのに名字で呼ぶのは『あなたと仲良くなるつもりはありませんよ』と宣言するようなものだよな。


「……じゃあ、カインさんで」


「呼び捨てでも構わないよ?」


「あー、後々、嫁の反応が恐い」


「……なるほど」


 俺の足を踏みつけるエリザを見て、くくくっと笑みをこぼしたカインである。『心配しすぎだったかな』という呟きは聞こえなかったふりをするべきか。


「あぁ、そうだ。ラーク君。キミのお嫁さんを少し借りてもいいかな?」


「ちゃんと返してくれるならな」


 俺とカインのやり取りを聞いて『犬猫じゃありませんわよ!?』と叫ぶエリザだった。





 貸し出されたエリザは、友人であるレニと込み入った話があるようだ。


 まぁ、レニに関してはあのとき警告しておいたので『国に帰りましょう』なんて馬鹿げたことは口走らないだろう。もしそうなら今度こそ首と身体をサヨウナラさせなきゃな。


 じーっと監視していたらレニが萎縮してしまい、エリザに怒られた。


 別に見つめていただけで殺気も飛ばしていないんだが、言い訳するとさらに怒られそうだったので大人しく居館の外へ出る。と、カインもついてきた。


「話をしなくていいのか? お前さんもエリザと旧知の仲なんだろう?」


「私は友人と呼べるほどには親しくなかったからね。神子ちゃんが恨みに支配されず、あの国にいた頃より幸せに暮らせていると知れただけで満足なのさ」


 エリザの元々がどうかは知らないが、今は楽しそうに笑っているからな。


 そして目の前にも楽しそうに笑っている(カイン)が一人。


「しかし、見た感じだと神子ちゃんの方がべた惚れだというのに、実際はラーク君もデレデレじゃないか。神子ちゃんを心配するあの姿、中々に愉快だったよ」


 レニをじぃーっと見つめていたことを言っているのだろう。下手に言い訳すると墓穴を掘りそうなので適当に相づちを打っておく。あーはいはいべた惚れですよー。


「――うむ、まったく。もう少しわらわにもデレデレしてくれてもいいと思うのじゃがのぉ?」


 すたすたと歩いてきて、そんな文句を言ってきたのは姫。


「失礼な。デレデレじゃないか。そうじゃなきゃ毎日惰眠をむさぼらせないし、毎日の鍛錬にも付き合わないっての」


「毎日鍛錬に付き合っているのはわらわじゃろう?」


「いやいや俺だから。俺が広い心で付き合っているだけだから」


「毎日嫁のワガママに付き合っているわらわに対して面白い冗談じゃの」


「はははっ」


「はははっ」


「…………」


「…………」


 思わず槍を取り出したり爪を伸ばしたりする俺と姫である。ちなみにこの槍は、無いと不便なのでドワンに頼んで用意してもらったもの。ドワンは納得していないが十分名槍と呼べる出来だと思う。


 そんな俺たちの間にカインが割って入った。


「お、落ち着いて二人とも。あと姫、ラーク君が強いのは察するけれど、それでも魔王にケンカを売るのは酷いと思うよ?」


 カインの口ぶりからすると、魔王という存在は姫に勝てないみたいだ。姫は普段だらしなくて忘れがちだが神話から生きる龍。カインの反応も当然だな。


 だというのに姫は鼻を鳴らした。『分かってないなぁこいつ』と言わんばかりに。


「はっ、いくらラークが誤魔化している(・・・・・・・)とはいえ、一目で実力を見抜けぬとは……。おぬしの目も衰えたものじゃな。“勇者”なんぞやっているからそうなるんじゃ」


「……どういうことかな?」


「百聞は一見にしかず。実際に戦ってみるといい。――此奴、わらわよりも強いぞ?」


「…………」


 いやシリアスな空気を醸し出しているところ悪いが、俺、さすがに(本気になった)姫には勝てないと思うぞ? 鱗は斬れるだろうが、だからってイコールで倒せることにはならないからな。


 普通に考えれば姫が“嫁バカ”を発揮しているだけのこと。なのに、どうやらカインはその妄言を信じてしまったみたいだ。


「では、ラーク君。一つお手合わせ願えないかな?」


「……期待してもらって悪いが、俺、そこまで強くないぞ?」


「私の見立てでも姫ほどでは無いと思う。けれど、姫がここまで言うのだから『何か』があるんだろう。私はそれを確かめたい」


「ん~……」


「それと、キミという人物を見極めたい。剣と剣を交えればその人の本性が分かるからね」


「…………」


 まぁ、太刀筋を見ればその人間が今までどんな修練を積んできたか分かるし、戦い方を見れば性格がねじ曲がっているとか騙されやすいとか色々と読み取れるからな。


 俺としてもたまには別の人間と試合をしたいし、お手合わせを受け入れることにした。





 補足:名前と名字について。


 前世日本人のラークの常識では『名字・名前』の順番ですが、この世界では『名前・名字』という順番です。


 つまりカインは『ラーク家のウラドさん』だと思っているわけであり、ラークという名字を呼んでいるつもりなのです。



次回、3月1日更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ