エピローグ、そして次回のプロローグ
城の小さな一室で王たる僕はほくそ笑む。
植物の影響の及ばないこの部屋は薄暗く、密会にはうってつけだ。
「へえ、やっぱり見破られたか」
「面目次第もございません」
目の前で膝をついて報告をしている騎士には、いくつかの役割を与えてアッシェン王国に送り出した。その内の一つは、あの魔女を誘導することだった。
どうやらあっさり見破られたらしい。
「まあ、相手が魔女じゃ分が悪いさ。それで、彼女はなんて?」
「それが、その…」
言いよどむのを見ると、魔女のことだからまた適当なことをいったのだろう。
「いいよ。そのまま教えて。一言一句、違わずに」
「…『ないものは探させないでください』と」
久しぶりに外に出たに違いないのだが、もう飽きたのだろう。
飽き性はあいかわらずだ。
「で、もう一つの首尾はどうだった?」
思わず笑い出しそうになるのをこらえながら問いかける。
「はい。しかしながら、陛下。魔女殿を謀り、貶めることはどうにも気が重く…」
なにやらこの兵士は、己の中のちっぽけな理屈にとらわれているらしい。
「考え方を変えるんだ。これは君にとっても悪くない話のはずだ。何よりあの魔女のことは嫌いではないのだろう?」
あの魔女は自分が計られた事に気がついたとしても、よほどのことがなければ、まあそんなものかと受け流すタイプの人間だ。
「しかし、」
「何をまようことがある? 相手が不服か?」
「いえ、まさか」
僕ならご免こうむりたいが。
「君はそれとも何かね、押せば転がるような女を望むのか? それならば、その辺にごろごろいるだろう。君は家柄も悪くないし、その容姿ならもてないこともない。しかし、君の本質はそこにはないことを僕は知っているつもりだよ。だからこそ、このような命令をしたのだから」
恵まれた人間が陥る簡単な罠。
もてはやされることが好きな人間でも、単調すぎればいずれは飽きる。そうすれば、次に望むのは「本当の自分」を見てくれる人間だ。
だれしもが自分自身の理解者をのぞむ。
理想的な理解者。
それは、理想的な人形。
そんな人間は存在しない。
理解されたと錯覚する遍くすべての人々が見ているのは、自分の願望を上乗せした虚像だ。
「そう、君には期待しているんだ」
完全に対象を理解し、理解されることなどありえない。
認めて欲しい。
己を見て欲しい。
自分の気持ちをわかって欲しい。
それは、万人の願い。万人の渇望。
それを当人が理解しているか、いないかは重要じゃない。
「君なら、魔女を堕とせる」
けれどその願望が強ければ強いほど、僕のような人間にとってのつけ込むチャンスだ。
この騎士は若い。これほど操りやすい人間もないだろう。そこに栄誉のエッセンスを付け加えればなおさらだ。手駒を増やしておくのは悪くない。
「は、はい! 名誉にかけてもやり遂げて見せます」
相手は感極まったのか、潤んだ瞳で、僕に忠誠を誓った。
« 登場人物紹介 »
魔女:意地悪な厨二病。かっこいい厨二病になるはずだったのに作者の力量が足りなかったばっかりに意地悪になってしまった哀れな人。
赤ずきん:犬。
灰被り:童話の主人公。
エーリッヒ:ヘタレ王子
アーノルド:怪しいひと
お兄ちゃん:愉快犯
××:この話の裏の主人公




