14(第一章完結)
「こ、これは一体?」
当惑する国王ハンス。
「兄上。すまん。フリーダは極端な人見知りなんだ。勝利を祝福してくれるのは嬉しいが、そろそろお開きにしてもらえないか」
「分かった」
国王ハンス。病弱だが、ここで他人の気持ちが分からないほど暗愚ではない。
「陛下。病み上がりでお疲れでしょう。お休みになられませんか。王妃殿下、王子殿下、王女殿下もご一緒に」
気を利かせた外務大臣パウルが国王一家を促し、目で女性宰相アンネリーゼに合図する。
アンネリーゼは小さく頷き、自分はハインリヒたちを促す。
「摂政殿下、フリーダちゃん、ネル。本当にお疲れでしょう。私が案内するから寝室でお休みください」
ハインリヒはその言葉に甘える。人見知りのフリーダだが、同性で気さくなアンネリーゼにはまだ抵抗がないようだ。
国王一家とハインリヒ・フリーダ一行は別々の道を通って、それぞれ屋上から退出した。
その場に立ち会った者は拍手で二つのグループを送り出した。まだ緊張しているフリーダの左肩にはネルが飛び乗り、そのほおを舐めた。
「ありがとう。ネル」
「キイ」
優しく鳴くネルにハインリヒは思った。
(この可愛らしい神獣リザードのネルの正体が大地神ネルトゥスだなんて、未だに信じられんよ)
「キイ」
ネルはまた小さく鳴いた。ハインリヒの気持ちが伝わったのかもしれない。
◇◇◇
フリーダがハインリヒにひっついて離れないので結局同じ寝室で休むことにした。もちろんネルも一緒だ。
夜も更けた頃、女性宰相アンネリーゼはハインリヒが休んでいる寝室の前に立った。
礼儀として中から物音がしないことを確認してからドアをノックした。
「宰相のアンネリーゼです」
「おう、かまわんぞ。入ってくれ」
ハインリヒの応答が思いのほか早かったことに少し驚きながらアンネリーゼはゆっくりとドアを開けた。
そこに広がっていた光景は……
寝台の上でハインリヒにひっついたまま、すやすや眠るフリーダ。ネルは寝台のすぐそばの床の上でやはり安心したように眠っている。
「ぷっ」
アンネリーゼは思わずふきだした。
「言っとくけどな。手は出しちゃいないぞ。この状態だから寝るに寝られないけどな」
(はあ)
アンネリーゼは小さくため息を吐いた後で言った。
「そうでしょうねえ。摂政殿下は」
「何だよそれ」
「だからこそ摂政殿下は国民に親しまれるのですよ。それにしても寝られないのは困りましたね。ごめんね。フリーダちゃん。ちょっと起きてくれる?」
「ふぁ?」
寝ぼけ眼ながらも起きるフリーダ。
「フリーダちゃん。初めて戦に参加したから不安で摂政殿下がそばにいないと落ちつかないのは分かる。でもこれじゃあ殿下が寝られないって。私じゃ物足りないかもしれないけど、殿下の代わりに添い寝してあげる。今日のところはそれで許して」
「殿下はどっかに行っちゃうのですか?」
「大丈夫。殿下。そこの空いている隣の寝台で寝てください。それなら寝られるでしょう」
「すまん。アンネリーゼ。恩に着る」
アンネリーゼは添い寝しながら思った。
(十七? いや十八くらいかなあ。ずっと渓谷で家族とネルとだけ一緒に育ったせいか、ここの王城の侍女たちと比べても幼い感じがする。でもこの幼い感じがする少女にこの国は守られているのだなあ)
(我が国が大地神ネルトゥスの加護を受け、『大地改変生成の魔法石』の力も手に入れたことは早晩他の国にも広まるだろう。さてどう出るか? 外交で和平を保つ路線で来るか。強引にこの力を奪いに来るか。ブロイ帝国もこのまま黙っているとは思えないし……
)
そんなことを思いながらアンネリーゼもいつしか寝入ってしまっていた。疲労していたのは彼女も同じなのだから。
おっさん殿下とひきこもりの魔女 第一章 完
読んでいただきありがとうございます。
これにて第一章完結です。
第二章は現在執筆中です。
出来るだけ早くお届けしたいです。




