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ぼーいずどんとだい  作者: ゲロブス
第十一章 兄弟
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もうひとりいる!?

流は映画館の真ん中付近の座席に腰掛けて、虚ろな瞳でスクリーンを眺めながら、何とも言えない居心地の悪さを感じていた。

右隣では由香里が鼻水をすすりながら、涙を滝のように流して食い入るように画面を見つめている。

また、左隣では若い男女がお互いの股間をまさぐりながら、映画そっちのけで熱烈なディープキスをかましていた。

映画はクライマックスに差し掛かっており、仰々しい劇伴をバックに、主人公と思われる白人男性が、戦いで致命傷を負って横たわった親友の上半身を、悲痛な面持ちで抱き抱えていた。

「どうやら俺はここまでみてえだ…。最後に懺悔させてくれ…。実は高校の時に、お前の彼女を一度寝取った。誠に申し訳ない」

「…気にするな」

「あとお前の妹とも寝た」

「気にす…何だって?」

「あ、そうだ…。あれも言わなくちゃな…」

「いや、別に無理して言わなくても…」

「お前のお袋にも手でしてもらった、2回」

「…分かった、もう十分だ」

「あ〜そうそう、思い出した。お前の嫁と前にバーで会って…」

主人公は親友の頭部を拳銃で撃ち抜いた。

そのまま、自身のこめかみに銃口を向けると、躊躇なく引き金を引いた。

感動的なバラードとともにスタッフクレジットが流れ、映画は終わった。





ショッピングモールを出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。

帰り道の途中にある、ドブ川の上にかかった細長い橋を2人で渡っている最中、由香里が唐突に言った。

「へぇ〜!流さんこういう曲が好きなんですね!」

気が付くと、いつの間にか由香里が彼のイヤホンを片方、耳につけていた。

「おい、勝手に…」

「何か悲しい曲ですね~!何て曲ですか?」

「………モグワイの『cody』だよ。君には面白くないだろ?」

突き放したような口調で流がそう言うと、由香里は屈託のない笑顔で笑った。

「そんなことないですよ!寂しいけれど…優しい曲で好きだなぁ、私」

「……………」

「…ちなみに終わったら私が厳選したマノウォーのプレイリストでも聴きますか?」

「いや、それはいい」

ふいに、由香里の携帯が衣服の中で音を発した。画面を確認すると、彼女は呆れ気味に言った。

「兄さんてば、私の帰りが遅いから連絡して来たみたいです!心配性だなぁ」

「…妹思いの大した兄貴だな、少なくとも僕なんかよりは」

彼のセリフに、由香里は大袈裟に目を丸くした。

「えっ!流さん一人っ子じゃないんですか〜!?」

由香里が尋ねると、流は遠い目をして答えた。

「ああ…言ってなかったか、双子の弟がいる。もう長い間会ってないけどな。今頃、どこにいるのやら…」

「…意外とすぐ近くにいるんじゃねーか?」

背後から聞こえた声に、2人がギョッとして振り向くと、パーカーにジャケットを重ね着した男が佇んでいた。

そいつを見るなり、由香里は困惑気味に呟いた。

「な、流さんがもう一人…!?」



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