21話
「ありがとうラヴィ、君のおかげだ」
残りの薬草も採り終え、一本道へと戻った時ルスは言った。
「おかげってほどでもないわよ。ルスが凄かったの」
先の戦闘を振り返るラヴィ。
(確かに私は全力でバフもデバフもかけた。でも力に差があるだけじゃ剣を弾き飛ばすのが精々。如何に相手の力がうまい具合にかかっていたとしても、武器職人が作った剣が『折れる』というのは中々無いわ。最初から狙っていたのだとしたら、彼の最も恐ろしいのは…剣が折れるような弱点を理解する洞察力?それを的確に一度で突ける、初心者とは思えない剣術の精度?それとも勝つ計画を立てられる先見の明…?)
悶々と考える彼女。
「いいや、僕へのバフと彼らへのデバフが勝敗の分け目だったよ」
「ホント、ルスは…」
(ルスは何でも気づいてくれるし、なんでも伝えてくれる。短い時間でもわかった貴方の良いところよね)
ラヴィは心の中で続けた。
「当たり前だよ。ラヴィの魔法は凄いからね!」
「そ、そんなに褒めないでって!」
ラヴィは未だに褒められる事に慣れていなかった。
(かわいい…)
ルスはそんなラヴィの反応を密かに楽しんでいた。
「さて、戻ろうか」
「うん」
森の中央を目指して一本道を歩く。
「そろそろ着くんじゃないかしら…あ」
ラヴィが何かに反応し、草むらに駆け寄る。
「おおー」
ルスものぞき込むとそこにはラヴィの魔法陣が描かれていた。
ラヴィが反応させたのか僅かに光っている。
「便利だね」
「時間があったら教えるわね」
ラヴィはにこやかに言って、草むらを進んで行った。
「お待ちしておりましたわ!」
少し歩くと、どこからともなく王女が現れる。
ファイは手に持っていた何かを上着の下にしまった。
「お待たせしました。では、行きましょう」
「ええ!」
ルンルンで帰るファイ。
「あ!ルスさんは殿として後ろを見ていて下さる?」
急に思い出したようにファイはルスに言った。
「え、ええ。いいですけど」
「ラヴィさんはこちらへ!」
「は、はい」
「ラヴィさんとは一度色々お話ししたいと思ってましたの!ここからは男子禁制!乙女の秘密、ですわっ!」
ウインクをしながら告げ、ごにょごにょと前で話し始めてしまった。
(仕方ない…)
ルスは律儀だった。
秘密というからには聞かない方が良いかと思い、距離を取って別の事を考える。
(いやすごく気になるけども!)
二人は話が尽きないといった感じでずっと喋っている。
時折こちらを見ながら何か言っているようだ。
(いやすごく気になるけども!?)
ルスは聞き耳をたてるのを必死にこらえていた。
(…それにしても、ラヴィもあんな顔をするんだな)
時間が経つにつれてラヴィの表情が豊かになっていると感じる。
だが自分と話している時以上に、ファイと話すラヴィは表情豊かだった。
ファイを無事、城の付近まで送り届ける。
王国の中心部に位置する城は立派な造りをしていた。
「お二人には本当に感謝ですわ!護衛の報酬はまた直ぐにお渡しに行きますわね!」
「え、護衛の報酬?」
「もちろんですわ。わたくしは王女ですもの。護衛、大義でしたわ!」
人通りの少ない場所で話していると、遠くから声がした。
「…お嬢様!?」
メイド姿の若い女性が駆け寄ってくる。
「何処へ行かれていたのですか!?もう…本当に心配しておりました!国王様も心労から更に不調そうで…!」
「心配をかけましたが、勿論わたくしはこの通り無事ですわ!この方たちに協力していただきましたし」
「この者たちは?」
「私たちは…」
「王女様!?なんと!お帰りになられたのですか!?」
4、50代の男がやってくる。
着ているものからかなりの金持ちなのだろう、とルスは推測した。
「ええ。今戻りましたわ。パガンさん」
「おお、ご無事で何よりです!ワタクシどもの捜索もついに報われたか」
(捜索…?)
「まあ無事に帰って来れたので安心してくださいまし。では、助けて頂いたこの者たちに褒美を…いえ、それはまた後で指示を出しましょう」
「その者たちに褒美…?」
パガンは小さくこぼす。
「で、では私たちはこれで…」
ルスとラヴィは逃げるようにその場を去る。
人が集まるにつれて、離れるタイミングを逃しそうだった。
偉い人の苦労を少し感じ取る。
「…」
去っていく二人をパガンはチラリと見た。
ギルドに戻ったラヴィとルスは受付嬢に採取したものを渡し、内容を確認してもらう。
「お二人が採ってきて下さったもの、どれも状態が良かったです!ありがとうございます!こちら報酬です!」
戻ってきたクラメはそう告げるとともに報酬を渡した。
「お疲れさまでした!」
「はい。じゃあ帰ろうか」
ギルドの出口へ向かおうとするルスとラヴィ。
しかし、二人は女性の声に呼び止められた。
「ねえ、君たちが噂の二人組パーティ?アタシらも入れてくれない?」
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