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決着

前3話を大幅に加筆修正しておりますので、ご覧いただけますと幸いです。

 ほんの数分前。俺はシトリーとツバキに作戦を説明していた。


「天使族の耐性なら攻撃魔法はほぼ通用しないし、精神攻撃もまず効かない。だが、あいつが『魔眼』を使う瞬間にこっちも『魔眼』を合わせれば、『魔眼返し』が出来るはずだ」


「じゃあ、私の『セクシーウィンク』とかが効くかもってことですか?」


「おそらくな。ただし、『セクシーウィンク』のような洗脳系の魔眼は、同性かつ格下でない相手には効き辛いだろう。より相手を選ばずに作用するようなスキルがあればいいんだが」


「うーん、サキュバスのスキルは基本男性用なので……ちょっと調べてみます」


「ところで主殿よ。『魔眼返し』のタイミングは簡単なものではないぞ。あの堕天使が主殿だけを狙ってくる以上、近くでシトリーの奴が『魔眼』を使っても上手くいくとは限らんのではないか?」


「ああ、そこを逆手にとる。ツバキの『変化の術』なら、自分以外の相手でも見た目だけなら変えられるだろう?」


「なるほど! シトリーの奴を主殿の姿に変えればいいんじゃな?」


「そういうことだ。結界を解いた瞬間に俺の姿になったシトリーが姿を現せば、一瞬とはいえ騙せるはずだ」


「うむ。神狐族の本領発揮じゃ!」


 嬉しそうに尻尾をパタパタとさせるツバキ。隣でうんうん呻っていたシトリーも、どうやら準備が出来たようだ。


「よし、決めました! いつでもいけます!」


「ああ。じゃあツバキ、頼む!」


「了解じゃ。ほれ!」


 『変化の術』によってシトリーが俺に姿になる。ついでに俺はほぼ透明の状態にしてもらった。


「わあ、本当にご主人様(マスター)になっちゃいました……これ、なんかいやらしくないですか?」


「俺の姿で妙なことを言うな」


 今一緊張感に欠けるシトリーを嗜めながら、俺は機会を待つことにしたのだった。



   ◆     ◆     ◆


 そして現在。作戦は成功し、シトリーがカウンターで放った『魔眼』は、確かにルキフェナを捉えたようだ。 

 二人はほんの数秒目を合わせた後――ふらりと、シトリーが倒れた。同時に『変化の術』も解けたようだ。


「シトリー! 大丈夫か!?」


 思わず駆け寄るが、どうやら意識はあるようだ。


「ちょっとフラっとしましたけど、私は大丈夫です! それよりも、あの堕天使は!?」


「っ、そうだ! ルキフェナの方は――」


 俺が目を向けると、ルキフェナは目を見開いたまま呆然と立ち尽くしているように見えた。


「あ、あっ……」


 ルキフェナはうわ言のように何かを言いながら、体をぷるぷると震わせていた。そして信じられないものを見るかのような目をこちらに向けたまま、やがてその顔が紅潮に染まり――


「――ああああぁぁぁぁ!?」


 妙な声をあげると共に、その場にへたり込んだ。


「……」


「やったぁ! ご主人様(マスター)、『魔眼返し』、大成功です!」


 俺は大喜びしているシトリーと、うずくまって痙攣しているルキフェナを交互に見ながら言った。


「結局何の『魔眼』を使ったんだ?」


「はい! 性感を3000倍にする魔眼です!」


「……一応聞くが、何故それを選んだ」


母様(かあさま)が昔、捕らえた女勇者にこれを使っていたのを思い出したんです!」


「そうか」


 色々と言いたい事はあったが、今は何も言わないでおいた。


「まあ、理には適っておるよ。他人の意識に無理やり介入するよりも、元々の知覚を操作した方が効きやすいからのう」


 何やらツバキがもっともらしいことを言っているが、彼女なりの気遣いなんだろうか。

 とにかく、堕天使という過去最強の敵との戦いは、こうして決着したのである。



   ◆     ◆     ◆


「本当に、本当にありがとうございました! この御恩をどう返せば良いのやら……」


「では、とりあえず他の冒険者達の救助をお願いします」


 避難していた村人達の協力もあって、傷ついていた多くの冒険者達は一命を取り留めていた。彼らも十分心を痛めていただろうから、これで少しは救いになるといいのだが。


「ギルドには救助隊を要請しました。おそらく今回の件について説明を求められると思いますが」


「ええ、覚悟しております」


 神父や村人達は、既に覚悟を決めた表情をしていた。自分達がしてきたことの罪の重さを十分に理解しているのだろう。俺は少しでも安心させるように言った。


「私からも事実をそのまま報告しますよ。主犯が洗脳に秀でた『魔眼』持ちであることも含めてね」


「……っ! ありがとうございます!」


「その後のことは、村の皆さんとギルドの方で決めてください。では一旦これで」


 神父と村長はもう一度深々と頭を下げていた。俺から彼らに出来ることはここまでだろう。

 挨拶もそこそこに、俺は村の隅の目立たない小屋に足を運んだ。こちらが俺にとっての本命である。


「はぁーっ、はぁーっ! お願いします! これ、解いてっ、下さい!」


「ええい、大人しくせんか! 儂の足に擦り付けるな!」


「何でもしますから! 何もしませんから!」


「えーと、魔眼の解除、解除の方法は……」


 小屋の中には、力を封じる紐で縛られたままのルキフェナと、監視につけていたシトリーとツバキが騒いでいたのである。

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