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駅へ~当日の足取り

 北条は奥井に頼んだ。

「では、先週の金曜日から今日の午前中までのカメラの映像データをお願いします」

「わかりました。このお客様が防犯カメラに映っていたか。と言う事ですね。少々お待ちください」

 

 奥井は部屋の奥へ行き保存してある過去映像テープを持ってきた。


 北条は再度まとめた。

「松本さんは会社の2営業日前、つまり先週の金曜日に会社に来なくなり、2日休みを挟んで月曜日も無断欠勤したため三上さんが家を訪れましたが不在の為、今日捜索願いが出されました。そのため金曜日からの行動や現在の居場所、また失踪の理由と人間関係を洗い出す必要があります」


 

 奥井が機械を操作すると4つに分かれたモニターに店内全体と客の姿が映し出された。

上方から、近距離から等のアングルがある。

ガチャピーピーと激しいパチンコの音が鳴り響く。


 

 これらを同時にチェックしなければならない。

金曜日の夜分からだった。

小倉が言う。

「金曜日から来なくなったんですよね松本さん」

「はい」

 


 モニターから松本の姿を探すのはしんどい作業である。

わずかな手がかりも見落とすわけにいかない。



 天井等4ヶ所に仕掛けられたカメラ映像を手分けしてチェックした。

長い、長い作業である。

座っている客もだが歩いている客も見なければならない。


「松本はどこか、また関連する人物などは」


 しかしさすがに全てを見ていたら間に合わない。

適度に早送りをする事になった。 


 松本はどこか、まだ見当たらないのかと言う焦燥感がつのった。

汗がにじみ出た。


 わずかな見落としも許されない。

長く、辛く、緊張の作業。

みな苛立ちを隠しもくもくと見続けた。


 そして重労働の末ようやく金曜日分を見終わった。

2時間半は経っただろう。

これだけで一同は相当な疲労感だった。


 続いて土日分を見る事になった。疲れを大分引きずっている。


 今度はさすがに朝開店時からであるため難航を極めた。

休みの日であるため普段の日でさえ働かない層が並んで待っている店である。


 休みとなればその数はさらに増える。

柄の悪い若者から中年まで並んでいる。

その姿だけでも嫌悪感を感じた。


 モニターのある店内の部屋は少し暑かった。

さすがに北条達は段々目も頭も、何より精神がきつくなってきた。


 なにせすべての客がパチンコを打っているだけの映像をずっと凝視してなければならないのだ。

そして席が空いて入れ替わったらそれも見る。特に玉が入ったなどは関心がないが。


 見かねてもう1人店員がフォローした。

「ずーっと座りっぱなしっで打ってる」

「そりゃまあ」


 しかしここで目を離すわけにいかなかった。


 覗きこみ店員はいった

「普段からこのお客様は来ますね」

「何曜日が多いですか?」

「やはり土日ですな。朝から列で並んでいるほどではないですね。趣味とはいってもすごく大金をかけるほどではないみたいです」


 三上は言った。

「そうですね。競馬なんかだと前日大騒ぎして競馬新聞をよく見るじゃないですか。でもそんなに熱く語ったりはしませんでした」


 小倉は言った。

「と言う事は朝早く来るわけでもなくかつ大金をかけて長時間居座るわけでもなさそうです」

その日曜日分を見ようとしたが小倉は言った。


「えっ、これ2日分見ると言う事は合計17時間ぐらいかかりますよね。今日1日では終わらない。事件の解決期日はいつなんですか?」


 三上はすまなそうに言った。

「今週1週間です。それ以上は厳しいと」

「うーむ。それを考えるとこの時間ロスは大きいですね」

 

 北条は考え込んだ。

「ではわたしが見ましょう。月曜日分まで一気に」

といって北条は画面を見始めると、早送りをまじえてチェックした。

その早送りが多いため小倉は驚いて聞いた。

「えっ!こんなに早送りをして大丈夫ですか?」

「このお客はもうすぐ球がなくなりますからかわりに松本さんが入ってくることが考えられます」


「ここがどうも」

北条は気づいた。

「あっ! 松本さん?」

三上も確認した。


 徹底的に早送りした結果月曜日分についに松本の姿を発見する事が出来た。

「これは確かにそうだ! 月曜日ここに来てたんだ!」


「でもなんで会社に許可も得ず午前中からパチンコなんか?」

小倉が疑問を投げかけると友里花は先ほどと同じように心理医学的見地から言った。


「やっぱり心の病気? やはりギャンブル依存ですか。」

「とするとその後いなくなったのも、病気による現実逃避から?」

と小倉は言った。


 北条は言った。

「月曜日までは地元の町にいた事が確定です」



 小倉は疑問を投げかけた。

「あっ、では野球の14時と言うのはいつなんでしょうか」

「土曜日か火曜日と言う事になりますが?」

「あれ?たしかあの新聞月曜日の新聞でしたよ? と言う事は月曜日に行ったことになりますが・・」


 三上は言った。

「えっでもパチンコ店には月曜の14時過ぎに来たのは出てますよ」

 



 友里花は言う。

「火曜日に野球場に行ったんなら今日行けば見つかるかも?」

「いえそれではだめです。どこの野球場に行ったか確証がありませんし、まず駅へ行って調べる必要があります」


「もしかして新聞に書いてあったメモは別の事の要件では?」


 様々な考えが錯綜した。北条はまとめた。

「松本さんは金曜日の夜からいなくなった。土日はまだ地元にいて、月曜日は午後までパチンコを打っていた。ところが月曜日の新聞に14時に会うというメモがあり野球場に行った事が考えられる。同一1日に2つのアリバイ」


「じゃあ月曜日ここに来たのは確定?」

「その圭子と言う女性と会うのであればここに来るのは矛盾してます。まあここにいたら連れ戻すんですね?」


 北条が三上に聞くと戸惑った。

「えっ? でも会社に来ないでなぜパチンコ屋に行くんですか?」


 小倉は説明する。

「何かやけっぱちになったのかそれともノイローゼか何かか」

珍しく三上は突っ込んだ。

「普通辞めてから行くでしょう。会社に行くのがやになったとしても。無断欠勤とギャンブルですか」

それに小倉が返した。

「普通の感覚じゃないですよ。でも現在精神的に普通の感覚を失っているのかも」

店員は言う。

「土日はいなかったですね。客の入れ替わりはあまり速くないので見つけやすかったかも」


 しかし月曜日分の松本の映像に不審な部分があった。

「えっ?」

北条が指摘した。ぐいと身を乗り出す。

「どちらへ行こうとしてるんでしょうか。ほら立って移動してますがトイレですか?」


 しかし社員は否定した。

「トイレはこっちの方ではありません。換金所がこちらにありますから」

「もしかして他の人に会いに行ったのでは」

北条のこの答えはかなり周囲を驚かせた



 小倉はさすがに聞き返した。

「えっ店の中でですか? 知り合いが別の場所にいる?」

友里花も指摘した。

「換金は最後にするものなのに途中からいってるようです。」

「モニターの位置をうつしましよう。」


 その映像には確かに換金所で換金している映像が映った。

「ほら、やっぱり。換金しに行ってたんですよ」

「そうですか。」

しかし北条は奥井の言う事に反論した。


「この換金している青年は社員ですか?」

「ええ、そうですが・・」

さすがにこの問いも奥井を戸惑わせた。独特の迫力がある。さらに北条は続けた。

「怪しい人から彼に電話かかってきたりしませんでしたか?」



 意外な質問に一同は騒然となった。

奥井は戸惑った。

「え?怪しい人ですか?ええと怪しいと言うか20歳前後の女性から電話があったと思います。ガールフレンドではないですか?」


 北条は歩きながら話した。

「足取りに関していえば土日月いついなくなったのか。電車か車か徒歩か。目的は何かにげたのか。誰かに会うのか。では次は駅に行って調べましょう」

「駅のモニターを調べるんですね」


 次に直近の四山駅へ行った。

駅に着くと入り口てなる階段を上がり構内大通路を横切り反対側に階段で降りていくと地下への道が開け、上がり電車のホームに出た。

今の時間では人はまばらだった。


近くにいた駅員に事情を言った。

「わかりました。駅員室に来てください」


 駅長室では数人の駅員に松本の写真を見せて回った。

「最近、この人を見ませんでしたか?」

「あっ、この人確かに朝駅の改札を通る事が多いですな」


 小倉はさらに詳細な情報を引き出したかった。

「土日月はどこかで」

「うーんわかりません。もし、いつ電車に乗ったかをお調べになりたいのでしたらやはりカメラを使う事になるかと。1人ですべてのカメラを調べるのは至難の業です、手分けしたい所ですが、皆手は空いていません。1人ずつ交代がいいかと」



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